マツダ CX-3年次改良モデル試乗記 ユーザーの声を重要視した進化の度合いは?

マニアック評価vol407
マツダCX-3は発売してからようやく1年が経とうとしているが、早速年次改良が行なわれ、さらなる進化をしたようだ。ポイントはダンパーのチューニングにより、乗り心地の進化とエンジンチューンにより、より扱いやすさに磨きをかけた、ということで早速試乗してきた。<レポート:髙橋 明/Akira Takahashi>

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発売から間もなく1年。さっそく年次改良が行なわれ、さらなる進化を遂げたというマツダCX-3に試乗した

乗り心地の進化ではダンパーの微低速域でのレスポンスを改良し、専門的には低周波領域での路面からの刺激やうねりなどに対する車体の収束性をよくしている。おもに10Hz以下の振動で、太ももの裏や内臓で感じる、あるいは、頭部で感じれば乗り物酔いにつながるような領域の改善だ。

そのために、特にリヤダンパーを変更し、ピストンスピードの遅い領域での減衰力を低くする一方、そこからの減衰力の立ち上がりをよくすることで、外部入力を丸く感じさせている。リヤダンパーの変更によりフロントも調整が必要で、そのバランスを取るチューンが行なわれている。

一方、エンジンチューンでは、低回転、低負荷時のレスポンスの向上を図り、日常使いでの気持ちよさ、意のままの走りの理想を命題としてチューンされている。簡単に言えばアクセルレスポンスとエンジンのレスポンス、加速におけるリニア感を上げた、ということだ。

具体的には、低回転、低負荷時のレスポンスとトルクを増大させるために、燃料を従来より多く噴射し燃焼を促進することでタービンが低負荷時でも回転し、空気容量を増大させている。その結果低速域のレスポンスやトルク感の向上が得られている。そしてトルクが十分に立ち上がる回転域では、従来よりも燃料噴射を抑え燃費を悪くすることなく気になるポイントを解決しているのだ。

これは制御に対するエンジニアの考え方の変更で、NOxやCO2 、PMといった環境要件をどこでクリアしていくのか?というポイントを緻密に詰めるというより、俯瞰で制御を見直すといった考え方の変更になるのだろう。

◆インプレッション
試乗は横浜にあるマツダR&Dを拠点に従来モデルとの比較試乗という手法がとられた。試乗ルートは横浜みなとみらいエリアと首都高速を使った。実を言うと従来車との比較ができたからその違いが感じることができたというのが正直な感想だ。それほど、わずかな違いであり、逆に言えばマツダの拘りの部分と捉えることができる。したがって、そのわずかな違いを比較しなければ判断が難しい試乗だった。

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おそらくCX-3オーナーでなければわからないレベルだと思う。特に乗り心地の進化というポイントでは、狙いはステア操作に即座に反応し、フロント荷重、リヤの沈み込みなどが瞬時に反応するようにチューンしている。これは、ある意味ロードスターRS(ビルシュタインダンパー)の持つフィールをCX-3でも、という狙いだと感じる。もちろんスポーツカーとクロスオーバーなので、程度の差はあるが、ドライバーの操作に的確に反応するというポイントでは狙いは同じだ。

その結果、確かにステアした瞬間からクルマはコーナリング態勢へと変化し、従来車よりもナチュラルに感じる。したがって人によってはスポーティに感じるだろう。一方で乗り心地の進化も狙っているが、これは明らかに良くなったと断言するほどの違いを明確には取れなかった。

逆にブレーキを踏んだ時のピッチングが気になった。つまり、前のめりになる姿勢変化だ。リヤダンパーが少しの入力にもレスポンスするようになったため、ノーズダイブが顕著になったと思う。この辺りはスプリングも同時にチューニングしないと、ちょうどいい、という落としどころにセットアップするのは難しそうだと感じた。

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一方、エンジンでは1500pm以下でのツキが良くなったと思う。ATモデルでの試乗だったが、この辺りは常用回転数で、市街地での巡航時は1500rpm以下での走行がメインだ。その部分でレスポンスが良くなったと感じる。欲を言えば30km/h~50km/h程度で走行中にアクセルの全閉から少し踏み直しをした時のレスポンスも向上すると、よりストレスなく気持ちよく走れるだろう。次の年改には期待したい。

市街地での巡航時は1500rpm以下での走行がメイン。その部分でエンジンレスポンスが良くなったと感じた

また、エンジンサウンドを静かにするナチュラルサウンドスムーサーが標準装備に変わった。技術の発表時にはオプション設定とされていたが、今回の見直しにより全車装着になったのはうれしい。

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さらにガラスの板厚が厚くなったことで、車内の静粛性も向上し都会のクロスオーバーとしての価値がより高まる装備変更だ。そしてユーザーから希望の多かったブラックレザー仕様もXDツーリングのLパッケージに設定された。これまでトップグレードにはホワイトレザーだけの設定だったが、嬉しいバリエーション追加と言えるだろう。

 

このところのマツダは商品を進化、改善、改良することに意欲的で、マイナーチェンジやフルモデルチェンジのタイミングを待たず、次々と改善策を進めている。特にユーザーからの声を重要視し「こうして欲しい」という要求、要望にはできるだけ早く対応するようにしているという。今回のCX-3の一部改良も、こうしたユーザーからの声に応える形で行なわれたわけで、購入がいつのタイミングでもその時のベストが購入できるという姿勢を作っているというわけだ。

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