マツダの次世代エンジン「マツダ3に搭載スカイアクティブ-X」の詳細解説

スカイアクティブ-Xを支える技術と性能

スカイアクティブ-Xエンジンは、希薄燃焼時には空燃比30とし、エンジン本体の圧縮比は15(国内仕様、欧州仕様16.3)だ。しかし、HCCIエンジンと同様に、希薄燃焼を行なっているのは低~中負荷域で、加速時には希薄燃焼から理想空燃比(空燃比14.7)、出力空燃比(13)への燃焼に切り替える必要がある。この希薄燃焼からの素早い、滑らかな切り替えもこのエンジンのポイントとなる。

希薄燃焼から理想空燃比への運転切り替えイメージ
希薄燃焼から理想空燃比への運転切り替えイメージ
開発段階時のスカイアクティブ-Xエンジン。手前側の上部にベルト駆動のスーパーチャージャー、一体化された長方形のボックスはエア通路。こちら側が車両前方になり、衝突安全性能確保のために剛性の高いボックス形状に
開発段階時のスカイアクティブ-Xエンジン。手前側の上部にベルト駆動のスーパーチャージャー、一体化された長方形のボックスはエア通路。こちら側が車両前方になり、衝突安全性能確保のために剛性の高いボックス形状に

そのため、装備されているのが、スーパーチャージャー/インタークーラーとマイルドハイブリッドだ。マツダは、スーパーチャージャーを「高応答エア・サプライ」と呼称していて、何のことだかわかりにくいが、ベルト駆動のイートン社製のスーパーチャージャーだ。

エア通路ボックスを下から見た状態。黒い樹脂部分が水冷インタークーラー
エア通路ボックスを下から見た状態。黒い樹脂部分が水冷インタークーラー

希薄燃焼から理想空燃比での燃焼の切替時には、より大きな出力が求められるため、それに比例した吸気量が必要となる。自然吸気だけではこの急激な大量の吸気量が確保できないため、スーパーチャージャーで加圧したエアを遅れなく燃焼室に送り込むというシステムなのだ。

そして、希薄燃焼の安定性や、理想空燃比への切り替えなどをモニターするため、筒内圧センサーも備え、燃料噴射のフィードバック制御を行なっている。

しかし、希薄燃焼の状態から大きくアクセルを踏み込み、理想空燃比に切り替わるタイミングが瞬時に、完璧に行なわれるかどうか。やはりタイムラグ、発生するトルクの大きな変動が発生するはずだ。それをカバーするのがマイルドハイブリッドのスターター/ジェネレーターのモーター駆動アシストということになる。

24Vシステムのスターター/ジェネレーターは発電、モーター駆動アシストを担当する
24Vシステムのスターター/ジェネレーターは発電、モーター駆動アシストを担当する

このマイルドハイブリッドは、マツダのアイドリングストップ+エネルギー回収システムの「i-ELOOP」の発展型なのだ。i-ELOOPは可変電圧式オルタネーターを採用しており、25Vまで発生できる。このスターター/ジェネレーター・ユニットと、i-ELOOPで使用しているキャパシターの代わりに、より容量の大きなリチウムイオン・バッテリーを採用したのが、この24Vのマイルドハイブリッド・システムだ。

マイルドハイブリッドとしてはヨーロッパ流の48Vがよりモーター駆動力が大きく有効だが、コスト・パフォーマンスを考えて、従来からあるi-ELOOPのモーター・ユニットを流用したというこだろう。

スカイアクティブ-Xエンジンの2.0L 4気筒出力は190ps/230Nmと発表されている。スカイアクティブ-Gの2.0Lエンジンはヨーロッパ仕様で155ps/200Nm、日本のレギュラー仕様で148ps/192Nmとなっているが、それより高出力、大トルクになっているのはスーパーチャージャーの効果がある。

スカイアクティブ-Xの圧縮比は15と高いため、加速時など高負荷運転では吸排気の可変バルブタイミング機構を使用してミラーサイクル・システムを稼働させ、実質圧縮比を落としてノッキングを回避するようになっている。

水冷EGRクーラーの上部にミラーサイクル用の吸排気可変バルブタイミング機構が見える
水冷EGRクーラーの上部にミラーサイクル用の吸排気可変バルブタイミング機構が見える

このように、スカイアクティブ-Xは、高圧コモンレール燃料噴射、スーパーチャージャー、マイルドハイブリッド/リチウムイオン・バッテリー、ミラーサイクル・システム、筒内圧センサーなど、通常のエンジンに比べ多くのデバイスを装備しているので、コスト的にはベース・エンジンの1.5倍程度になると考えられるが、ディーゼル・ターボエンジンよりはコストが低いという。

またスカイアクティブ-Xは、低中回転域での低負荷ゾーンで、高燃費ゾーンが広いという性能上の特長を持っていることも注目すべきだろう。これはRDE(real drive emission実走行)燃費で有利に働き、またそれを燃費性能向上に使うだけでなく、車両のファイナル減速ギヤ比を低く設定できることを活かし、加速性能の向上をも実現し、燃費と走りの両立を目指したエンジンとなっているのだ。

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