【マツダ】新型アクセラ評価 デザインから見る真のグローバルモデルの実力 

雑誌に載らない話vol81

 

アクセラがいよいよデビューする。エンジンラインアップは1.5LのNAと2.0LNA、2.2Lのディーゼルターボとハイブリッドと4つのパワーユニットから選択できる。ただし、すべてのモデルが同時デビューできず、2013年11月21日に発売予定されているのがガソリン車とハイブリッド車で、ディーゼルモデルは2014年4月あたりの発売になりそうだ。そのため、今回の試乗もディーゼルと2.0LのNAがプロトタイプという状態で、市販モデルとしては1.5LのNAとハイブリッドモデルであった。

最初に試乗したのが1.5Lの標準車。ボディタイプはセダンと5ドアハッチバックがある。走り出した瞬間に、とにかく、しっとりとした乗り味と期待値どおりに動くハンドリング、リニア感あふれる加速フィールと減速感という、これまでのマツダ車の中でも傑作といえる出来栄えを感じた。このフィールは他の2.0Lや2.2Lディーゼルターボ、ハイブリッドともに共通の印象で、ありがちな、グレードダウンすると乗り心地も操作フィールもダウンしてしまうという、これまでとは異なり真面目なクルマ造りの姿勢があった。これが最大の驚きで、走った時の味がようやく欧州車のように出汁のある味、コクのある味わいを感じるモデルになっていたことなのだ。

となると、各車のインプレッションも気になるところだが、その前に、このマツダの変化とは何か?についてレポートする必要があると思う。

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マツダはアクセラというグローバルモデルを冷静に、客観的に、そして俯瞰で捉えた結果、海外で「MAZDA 3」として販売するには、このレベルの出来栄えでどうか?というチャレンジをしてデビューさせようとしている点だ。そのことは、レベルの高い仕上がりとグレード展開から感じ取れたのだ。

◆グレードで大きく異ならない品質

グレードの順位で言えば、トップグレードが2.2Lのディーゼルがアクセラのトップに位置し、次いでハイブリッド、2.0LNA、1.5LNAモデルという順番になるのだろうが、マツダはユーザーの使い方でグレードを選んではどうか?と提案している。

市街地が多く、ゴーストップが多ければハイブリッドがお薦めで、ワインディングを元気に走りたければ1.5Lがいい。もっと元気に、走りたければ2.0Lを、そしてワインディングも長距離もこなしたければディーゼルをチョイスという具合に。

それには質感や乗り心地、ハンドリングにおいて、グレード間で差があっては目的別にグレードを選択しづらくなるが、新型アクセラはそこを真剣に造ってきている。Cセグメントのベンチマークとされるゴルフでさえ、1.2Lのコンフォートラインと1.4Lのハイラインではリヤサスペンションがトーションビームとマルチリンクという違いがある。アクセラは標準モデルの1.5Lにでも廉価なビーム構造とせず、マルチリンクを採用している。

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その出来栄えも素晴らしく欧州Cセグメントと勝負できるレベルだと感じた。もともとアクセラは海外で人気のマツダ 3という名称を持ち、オーストラリアや欧州で販売を伸ばしているモデルである。この新型はさらに販売を伸ばすのは間違いない。もちろん、国内でもCX-5、アテンザに継ぎヒットすることは必至だ。

マツダのトップにインタビューをしたわけではないが、このチャレンジは他の国産メーカーからはまだ感じない勢いがあり、北米ばかりに目を向けた商品リリースが多い中、クルマのレベルが高い本丸、欧州での評価を得るために挑戦している。階級社会である欧州で、日本車のポジションと言えば安くて壊れない、でも高速連続走行は苦手。支持するのは低所得者層が多いという現実。しかし、近年そのポジションも韓国車の台頭で日本車のポジションは追いやられ始めている。逆に、自動車の歴史をそれなりに積んできた日本車がいつまでもそのポジヨンでいいのか?という反省もあるはずだ。マツダはまさに、そのポジションから脱却し、ゴルフやフォーカスと顧客を取り合うモデルへと変貌しているのだ。

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◆欧州Cセグメントの土俵に登った

欧州におけるCセグメントとはフォルクスワーゲンのゴルフがその代表格であり、フォードフォーカスと1位2位を争うファミリーカー、大衆車クラスだ。MAZDA3はそのクラスに飛び込み、顧客争奪戦へと参戦することになる。また、BMW1シリーズやメルセデス・ベンツAクラス、アウディA3などはサイズ的には同じCセグメントになるが、ひとつ上の上質感を持つプレミアムCセグメントという呼び名でセグメント分けをしていたりする。当然プレミアムCセグメントは富裕層ターゲットの商品開発がされ、クルマに求められる価値観もプレミアムに相応しいか?というポイントになる。

しかしMAZDA3は、そのプレミアムCセグメントではなく、いわゆる大衆車クラス、ファミリーカークラスが土俵であり、世界中で誰もが使いやすく、乗りやすく、性能が満足できるという最も難しい領域のマーケットで勝負することになる。そしてこのアクセラは、それらの要求に応えCセグメントの土俵に登ったと思うのだ。

では、何がそれほどレベルが高くなっているのか?エクステリアからは、一目でマツダのクルマであることが分かり、かつ上級モデルの流れを汲むモデルであることもすぐにわかる。というのが今回のアクセラだ。それはマツダがグローバルで販売するモデルを見ると、CX-5、アテンザとあり、このアクセラもそのデザインの流れを汲んでいることは一目瞭然であることは、誰でもわかるだろう。

それは、自動車会社各車のモデルが混在する市街地においても、その存在感を示しブランド力を感じさせるエクステリアだと思う。ドイツのBMW、メルセデス・ベンツ、アウディなどプレミアムブランドが得意とするグレードを跨る共通のアイデンティティとデザインがマツダにもあるという証明だ。したがって国内においてマツダブランドは、いまひとつという人もいるだろうが、そのイメージは払しょくされる日もそう遠くないはずだ。

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そのエクステリアデザインはマツダのデザイン言語「魂動」がベースにデザインされている。しかし、アテンザのように大きなボディを持たないアクセラでは、別な手法が採られている。そもそも魂動デザインとは?チーフデザイナーの田畑孝司氏の説明では「日本人には古来より、モノには魂が宿るという考えがあり、愛着をもてば持つほど魂が宿るという想いがある。だから工業製品でもそういった製品を造っていけばクルマとフレンドリーな関係になれるものではないか」と。だから魂が動くという文字で表現しているという。ちなみに英語では「Soul of Motion」としている。

さて実際のデザインの場においては、プロダクト造りにおいて大きくマツダが変わってきている要因のひとつに、開発者は何がやりたいのか?何が正しいのか?を決めてから商品化するという考えに変わったことが挙げられるだろう。室内の広さひとつでも、これまでなら「セグメント内でもっとも広い空間が・・・云々」ということが多く語られ、われわれも記事にしてきている。マツダはそれがユーザーにとってもっとも大事なことなのか?正しいのか?ということをもう一度見直したというわけだ。イメージスケッチ イメージスケッチフロント

例えば後席の空間で、大柄な人でも頭上にこぶしがひとつ入れば十分であり、シートに座りリラックスできているのか?を考える必要がある。その答えは、つま先の入るスペースにスッと入れられ、何も足に当たらない、そして手前までかかとを引き寄せることのできるスペースがあれば後席は快適な空間になるという回答だ。これが正しいと判断したのだから、他社のモデルより狭いヘッドスペースでも関係ない、正しいと考えた方向で商品化をしてきたと説明している。

したがってセダンでもハッチバックでもエクステリアデザインは自由度が高かったという。このあたりの潔さは欧州車から感じる「割り切りの良さ」と同じことだろう。とかく、国産車は居住スペースであれば広さの数値にこだわり、それがユーザーにとって本当に必要なのかは議論されてこなかったのかもしれない。

さて、アクセラは前述のようにアテンザとは違った視点でデザインされている。アテンザは大柄なボディを活かし、伸びやかなデザインでスピード感を創っているが、コンパクトカーのアクセラではスピード感が出せず、そのためには車高を下げワイドにすることで魂動デザインとしてみるが、それではCセグメントのファミリーカーとしての使い勝手の良さとスポーティさが同居したものにはならない。

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そのため一から考え直し、ヒントは一瞬の動きにあった。人や動物が飛び出す瞬間の動き、モーションフォルムという考えから、クラウチングから飛び出していくその力強さとスピード感を取り入れればBセグメントにも応用できるものであり、つまりアテンザとは180度違ったモチーフでスタートしているという。

インテリアもエクステリアとちぐはぐにならないデザインが意識され、細部にまで神経の行き届いたデザインがされている。マツダが新たに提案するマツダコネクトに欠かせないナビモニターひとつでも、2DINタイプやインダッシュ・タイプなどさまざまなものを検証し、ジョージ・ミラーという心理学者が提唱する「マジカルミラー」からヒントを得て、モニター内に表示される文字の大きさ、情報量を決め、もちろん、モニターの位置なども研究し、ファミリーカーに相応しい装備にしている。

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ダイナミック性能においては、もっとも驚かされた部分である。個別のインプレッションは後にレポートするが、タイヤのひと転がりでハンドルの正確さ、アクセルのリニア感、ブレーキフィールなどに統一感があり、それがどのエンジン搭載モデルにも共通している。最難関と思われるハイブリッドモデルでも共通の印象だったのだ。

上等な機械部品を装備しただけでは絶対に出せない味が欧州には備わり、そこにはさまざまな研鑽を積んだ結果から生まれる秘伝の味でもあるわけだ。そして冒頭にも触れたがアクセラは走ったときの味に出汁が効き、コクのある乗り味を感じさせてくれたから真のグローバルモデルだと感じたわけだ。

長々とレポートしたが、こうして誕生してきたのがアクセラであり、欧州において日本車のポジショニングチェンジに影響を及ぼすモデルとしてデビューしたのである。今後の販売状況などにも注目の1台と言えるだろう。

 

マツダ公式サイト

COTY
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