「熟成されたワインのような…」マツダの匠塗り第4弾が誕生!その背景に迫る

マツダは2022年12月9日に発売したマツダ6の特別仕様車「20th アニバーサリーエディション」で、匠塗りの第4弾となるアーティザンレッドプレミアムメタリックのボディ色を初採用した。熟成されたワインのような深いレッドのこのカラーが生まれた背景には、どのようなコンセプトや技術があったのであろうか。

匠塗りを実現したカラーデザイン担当の岡本圭一氏(左)と塗装技術部の河瀬英一氏

マツダは、ボディカラーもデザインの一部という理念から、これまでも匠塗りと呼ぶ他社にはないカラーを作り出している。匠塗りの意味は、熟練した職人が手塗りしたような高品質の塗装を、通常の量産塗装ラインで実現し、ブランド価値を高めることだという。

その契機になったのは、魂動(こどう)デザインとともに採用された2012年に登場したソウルレッドであった。魂動デザインを象徴するソウルレッドは受け入れられ、グローバル市場では全ボディカラーの中で22%を占め、日本市場でも20%のシェアとなっている。

通常のクルマではホワイト、グレーが過半数を占め、レッド系は15%以下で、どちらかといえばマイナーなボディカラーなのだ。こうしたことを考えれば魂動デザイン=ソウルレッドは特別な存在ということができる。

近年のマツダ車のボディカラーの比率

このソウルレッドを起点として、他社にはない強い個性を持ち、陰影を生かした新しいデザイン、質感の表現として独自のボディカラーにこだわることがマツダ・デザインの思想になっている。これら特別なカラーは、3層塗膜とし、量産の塗装工程で実現するという点で塗装技術の革新でもあった。

そのために、独自の塗料材料、塗装設備を構築し、特別なカラーを進化させてきているのだ。ソウルレッドの次に登場したのがソウルレッドプレミアムメタリックだ。複層塗膜、メタリックのアルミ粒子の配合、そして塗装層の間の界面をコントロールする技術が投入されている。

アルミ粒子の配合とは、微小なアルミ箔を塗装層内でランダムに混入するのではなく、すべての箔を平面化させ、光の反射を強化する目的だ。このソウルレッドプレミアムメタリックは2012年のアテンザから投入されている。

続いて登場したのがマシングレー・プレミアムメタリックで、アメリカ市場向けCX-9で初採用されている。その後このカラーは2015年から国内でアクセラ、アテンザに採用されている。

そしてソウルレッドをさらに進化さえたのがソウルレッド・クリスタルメタリックで、このカラーは2017年に登場した新型CX-5とともにデビューした。

2022年にはラージ商品の第1弾となるCX-60にロジウムホワイト・プレミアムメタリックが新たに加わっている。このロジウムホワイト・プレミアムメタリックは、ラージ商品群にふさわしい上質さを強調し、純白さと金属的な輝きを両立させるカラーとして開発されている。

ロジウムホワイト・プレミアムメタリックは、均一化されたホワイトのカラー層の上に極薄いアルミ層を配置し、このアルミ箔を薄い皮膜の中で均一に配置するという新たな技術が導入されている。

ラージ商品群用に開発されたアーティザンレッド・プレミアムメタリックはまず特別仕様車のマツダ6 20th アニバーサリーエディションで採用

そしてラージ商品群向けに新たに開発されたのが、今回デビューしたアーティザンレッドプレミアムメタリックだ。その狙いはソウルレッド系の持つ情熱、スポーティさ、エモーショナルといった価値を、より上質にアップグレードすることで、イメージ的には熟成されたワインのような色調で、透明感のある赤と、深みのある陰影の両立である。

そのために、ベースの反射・吸収層として新開発された漆黒の顔料と高輝度で平面配列させたアルミ箔、光を吸収する粒子を一体化させ、2層目の透過層には高輝度の顔料を配置する構造としている。

アーティザンレッド・プレミアムメタリックは、光線が直射するハイライト部は、きめ細かく透明感のある赤、陰影部分は深く沈んだ重厚感を生み出し、ハイコントラストに見えることでデザインの美しさを強調するとともに、高い質感、成熟したプレミアム感を表現している。

こうした匠塗りの進化は、いうまでもなくサプライヤーの塗料メーカーの協力と、塗装ラインの塗装技術の進化の両立で実現している。そのためデザイン部、複数の塗料メーカー、塗装技術設計部門、生産部門が一体となって匠塗りを開発しているのだ。

そして今後も、匠塗りによる新たなプレミアムカラーが継続的に登場することになっている。

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