【マツダ】プレマシーマイナーチェンジ試乗記 スカイアクティブG&Drive搭載

マニアック評価vol174

プレマシー 20S-SKYACTIV L Package

2013年1月24日からマイナーチェンジをしたマツダ・プレマシーは販売を開始しているが、マイナーチェンジでスカイアクティブG・エンジンとスカイアクティブ・ドライブを搭載し、より上質で気持ちのいい走りになったという。今回、試乗の機会を得たので、そのレポートをお送りしよう。

2010年に発売されたプレマシーは、走りの楽しさや上質感、リニア感といったものに注力して開発され発売したモデルだ。その具体的な技術として、後のスカイアクティブ・シャシーやエンジン、ドライブトレーンといったものへ適用されていくのだが、今回のMCで先端のスカイアクティブG・エンジンとトランスミッションが搭載され、より洗練された走りを持つミニバンとして登場した。

今回のマイナーチェンジでスカイアクティブG(ガソリン)とスカイアクティブ・ドライブを搭載

プレマシーのハンドリングを司るシャシー開発で主眼が置かれたのは、アウトバーンを200km/h以上の速度でも安心して走行できるモデルを造りたいと考えていたという。欧州でも積極的に販売活動を行うマツダにとって、それは当然のことだ。ヨーロッパでは「マツダ5」の名前で販売されるプレマシーも例外でなく、高速安定性、リニアなハンドリングを目指し開発されている。

そのためには、リヤのスタビリティをしっかりと造り、高いシャシー性能でしっかりクルマを曲げる必要がある。すなわち安定性と操縦性を高い次元で両立させること。この考え方でプレマシーは開発され、これがのちにスカイアクティブ・シャシーへと発展していくことになる。ちなみにAutoProveに掲載した桂伸一氏のプレマシー評価記事により、開発エンジニアは大きく勇気づけられたという話を、今回、開発主査である松岡英樹氏から伺うことができた。

改めてそのシャシーセッティングの考え方を紐解いてみよう。繰安性能開発担当エンジニアの黒澤仁氏によれば、ダイアゴナルロール姿勢によって、滑らかな旋回Gのつながりができるという説明を受けた。

ダイアゴナルロール姿勢とは、クルマの対角線上でタイヤにかかる荷重を見る考え方のこと。コーナーを曲がるときに、フロントの外側タイヤには荷重がかかり沈み込む。反対に内側のタイヤへの荷重は少ないために浮きあがるが、それを抑制する必要がある。好ましくないダイアゴナルロール姿勢として、リヤの外側も沈み込んでしまうと、クルマの挙動はフワフワしたものになり、安心感のない旋回になる。そのためリヤ外側の沈み込みを抑制し、フロント内側、リヤ外側の対角線が直進時に近いポジションを保つ。そうすれば安定したコーナリングを得ることができる、という理論である。

マツダではハンドリングに定評のあるポルシェ・ケイマンやメルセデス・ベンツEクラスなどを試験し、データを集めたという。その結果、接地感の良好なFR車やMR車では、ロール姿勢は同様なデータを示したという。従ってFFのプレマシーでも同じようなデータとなれば、安心感のある良好なハンドリングなる。それを目指して開発されたというわけだ。

結果、プレマシーはスライドドアを持つミニバンでありながら、スポーティに走る気持ち良さがあり、ドライバーの期待通りにクルマが旋回する、つながりのあるハンドリングであるとの評価を得た。スポーツミニバンなどの代名詞がある所以は、ここにその理由があるのだ。

今回のマイナーチェンジでは、さらにリニアで統一感のある気持ちのよい走りに洗練するために、スカイアクティブ・エンジンとスカイアクティブ・ドライブが搭載されている。評価のポイントとしてリニアな加速性能、優れた応答性がポイントとなる。しかし、ワインディングを元気に走ることだけを評価していては、ミニバンのインプレとしては不十分だ。プレマシーは車種のキャラクター上、女性ユーザー視点での、加速性能、応答性にも配慮している。その部分も感じ取ってみたい。

ちなみにリニアな加速性能とは、アクセルの操作量に応じた反応がポイントとなる。ゆっくりと踏む、スパッと早く踏む、全開にする。それぞれ、ゆっくり加速Gが立ち上がる、グッと強い加速Gを感じるというように、スロットル開度に対して忠実であることが重要視されている。駐車場などでゆっくり動かしたいときには、少ないアクセル操作でクルマもゆっくりと動き、信号待ちからの加速では加速Gをグッ感じられるように走れる。そのような制御してきているということだ。またトランスミッションでもスカイアクティブ・ドライブは6速ATでロックアップ領域の広いダイレクトな変速をする。プレマシーでは滑らかに、そしてどれくらいアクセルを踏んだ際にダウンシフトするのか? それが予見しやすいかどうかなどが評価のポイントとなるだろう

ドライバーの意思通りに動かせるリニア感が魅力

試乗コースはマツダR&Dのある横浜を中心に、首都高速と一般道で設定してみた。特にチェックしたのは、一般道での信号待ちからの加速、前車への追従、低回転域での走行など。開発担当エンジニアの同乗もあり、制御の範疇を細かく教えてもらえたのは幸運だった。

その結果、このリニア感というのはまさに、ドライバーの官能評価の領域で、極端に言えば、十人十色の好みがある。逆に制御技術でどの10色にも仕上げることもできるという世界だ。その前提を踏まえ、筆者は多くの場面でリニアに感じ、操作のしやすい仕上がりだと感じた。

今回の試乗ではスカイアクティブを搭載しないモデルも比較用に用意されていた。搭載車と非搭載車を乗り比べてみると、1300rpm付近でゆっくりとアクセルを開けたときにその違いがある。非搭載モデルは低回転付近ではトルクが強く立ち上がり、スロットルを開けたフィールよりも加速するイメージ。逆に搭載モデルは低回転域では、穏やかに感じるのだ。非搭載モデルの方がほんのわずかな違いだが、スロットル開度と開度スピードに対して、エンジントルクの立ち上がりが早いと考えられる。

ただ全般的に搭載、非搭載を比較すると、スロットル開度と開度速度に対してダイナミックに反応する非搭載モデルに対し、リニアに反応するのが搭載モデルという印象だ。非搭載モデルはよりシビアなスロットルワークが要求されていたことが分かった。つまり、ゆっくり動かそうとしたときには、イメージよりさらに穏やかに操作しなければならないということだ。操作が速くても、遅くても丁寧に扱う必要がある。そうは言っても北米仕様によくあるようなアクセルの早開きではないので、、両車を乗り比べするという特殊な条件で試乗できたゆえに感じた、ほんのわずかな差だと付け加えておこう。したがって、運転操作に自信のない人ほど、スカイアクティブのほうが運転しやすいという結果が想像できる。

今回の試乗ではタイヤが15インチのものと17インチのもの、両方に乗ることができた。15インチを装着するグレードは今回のマイナーチェンジで追加されたもの。試乗は15インチの標準グレードと17インチを装着するLパッケージで行った。通常、タイヤサイズの違いは見た目以上に乗り心地に差が出るものなのだが、今回は15、17どちらも良好な乗り心地だった。通常は大径タイヤは乗り心地の印象が良くないものだが、プレマシーは17インチを履いても上質なの乗り心地。また15インチ、17インチのどちらも硬い入力はなく、入力はマイルドで穏やかな印象だった。

扁平の17インチでも乗り心地はマイルド
パドルシフトで積極的に変速操作が行える

 
ステアリングにはパドルスイッチが装備されている。より積極的に変速操作を行って、スポーティ気分も味わえる。走りを洗練させたマイナーチェンジなのだが、軽量化も行われ、燃費も向上している。2.0Lクラスのミニバンではクラストップとなる16.2km/Lという燃費をマークし、16インチ、17インチモデルでも15.2km/Lという省燃費だ。

ハイブリッドやダウンサイジング+ターボという手段を使わずとも、従来のコンベンショナルな技術を磨き上げてのクラスナンバーワンは見事である。なお背の低いミニバンとして唯一75%減税を受けるモデルとなっている。マイナーチェンジの内容については既報で、コチラを参考にして欲しい。

マツダ・プレマシー諸元表

マツダ公式サイト

COTY
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