【マツダ】スカイアクティブ搭載デミオの実力と燃費をロングドライブで試す!

マニアック評価vol59

2011年6月9日にマイナーチェンジし、新たに追加されたデミオSKYACTIVはハイブリッドシステムなどを採用せず、エンジンの素の性能向上と新開発ミラーサイクルエンジンを組み合わせた燃費チャンピオンカーで、10・15モードで30km/Lとしている。

 

↑いよいよSKYACTIVエンジンの燃費を試す機会がやってきた。

しかしその一方で、日本車の10・15モード燃費は試験方法の問題もあり、実用燃費とは相当な開きがあるのは、ハイブリッド車を含めすっかり定説になっている。新登場のデミオSKYACTIVの実用燃費は? 大いに興味あるところだ。7月末にマツダが主催し、自動車メディアが参加するエコランが行われたので、遅ればせながらその模様をご報告しよう。燃費データを競うエコランの燃費データは、ある意味では極端に燃費に特化しやすいが、合わせて実用燃費に関しても考察した。

 

↑復路組のスタートは秋保温泉のホテル。ここから400kmの行程が始まる。

東京〜仙台近郊の約400km区間で燃費を競った

往路で燃費を競った各チームは、東京をスタートし東北道を通り、途中の福島では高速道路を降りて一般道を約90km走行。途中3カ所のチェックポイントを通過し、再び東北道に乗って仙台近郊の秋保温泉がゴールだった。走行距離はちょうど400kmである。われわれが参加した復路組の各チームはこの逆のコースをたどった。

↑二本松城にて。福島県西部で、地震の被害は少なかった地域だ。

エコランではエアコンオフ、一般道路では40〜50km/hの一定速走行、高速道路では80km/hでの巡航はもちろんで、常に道路状況を先読みしてアクセルの開閉を決めるのはまあ常識として、それ以外に高速道路ではトラックの後方を走る、タイヤの空気圧を指定値より高めにして、平坦路や登坂では目標速度よりやや高い速度まで加速し、その後はニュートラルにしてできる限り惰性走行するといった技もある。

 

↑一般道では参加各車がそれぞれの走り方で走行する。

しかしながら、一番燃費に大きな影響を与えるのは、一般路の信号での停止&発進の回数を減らことができるか否かである。アイドルストップを装備しているものの、停止状態からの発進加速では燃費は3.0〜4.0km/Lと最も燃料消費が多くなるのだ。

その点でわれわれは、今回のコースの中でもっとも信号が多く、渋滞していた郡山駅前の周辺の国道4号線を回避しなかったのが、燃費データを低下させる最大の原因となってしまった。

 

↑チェックポイントの福島空港。この後に通る阿武隈高原道路は地震による損傷も。

また、往路チームと復路チームを比較すると、往路チームの方が全体的により良好な燃費となった。地勢的には復路の方が燃費に有利なのだが結果的に逆転してるのは走行時間帯、つまり福島での一般道の渋滞具合などによる影響が大きかったと思われる。

 

23.7km/hで10・15モード燃費の80%を達成した

我がチームの最終データは23.7km/Lで9チーム中の4番手。ちなみにトップは27.1km/Lだった。また今回、参考データとして測られた満タン法は400kmの距離であってもきわめて誤差が大きく、メーターパネルの燃費計とのデータの差も大きかったのも実感された。

 

↑ゴールに指定されたガソリンスタンド。ここで下の封印がはがされる。

満タン法では給油口ぎりぎりまで目視で給油しており、かなり正確そうに思われるが、実はガソリンタンク内部はエンジン周辺で加熱されたガソリンがリターンしており、タンク内の蒸発ガス圧が高い状態になっており、走行後の給油量は不安定になる。それに対して、メーターパネル内にある燃費計ははるかに正確と言える。

現在のクルマは車輪速センサーを使用し、タイヤの回転に合わせて距離を算出し、これと燃料噴射量の積算から演算したデータが燃費計に表示されるので、誤差はきわめて小さい(タイヤを指定サイズ以外に変更するとデータは正確ではなくなるが…)。

昔のクルマはトランスミッション軸の回転数をケーブルで取り出し、メーター内部でスピードメーターとオドメーターにギヤを介して機械的に振り分けており、そもそもスピードメーター用に7〜10%オーバーで表示するようにしてあるので、オドメーターもオーバー表示していた。そのため、正確な燃費を計算するためにはオドメーターの補正係数を算出する必要があったのだ。

 

↑操作系については不満はなく、長旅でも快適だった。

これに対して、ABSが装備されるようになって以来のクルマは車輪の回転数で距離をカウントし、ECUは約50mごとに距離と車速をモニターするため正確で、したがってオドメーターの表示誤差も0.5%以内といった優秀な範囲になっている。ESPが標準化されたクルマの距離精度はさらに高められている。一方でスピードメーターだけが保安基準に従い、実は7〜8%のオーバー表示をしている。

したがって、現在のクルマの瞬間燃費計や平均燃費計は相当に精度が高いと考えてよい。満タン法での燃費はよほど長期間にわたるデータでなければ精度は低いのだ。

 

SKYACTIVの実力はハイブリッドと互角以上

デミオSKYACTIVのエコランでのトータル燃費は、画像のように400kmの走行距離で23.9L(給油までに0.2ポイント低下して、競技結果は23.7km/Lであり、外気温が33〜34度であったことを考えると、冬季にはさらに数%改善されるデータになるだろう。高速道路を80km/Lで巡航している場合の瞬間燃費は25km/Lを超えていた。また一般国道で信号が多いセクションでは20km/Lを切り、信号の少ない郊外路では20km/Lを少し上回る結果であった。

こうしたことから見て一般的な実用燃費は、高速道路では20〜23km/L、郊外路でも20km/Lは確実で、信号の多い都市部の道路で15km/L前後。デミオSKYACTIVはハイブリッド車と同等かそれ以上の燃費を達成していると言える。

 

↑100km/h巡航では2600rpmと、予想より回転数は高かった。

また高速道路での100km/hの巡航時にはエンジン回転数は2600rpmあたりになり、意外にもハイギヤード化されていない。マツダはギヤ比は従来モデルと同じであり、CVTの制御を大幅に見直しているとのこと。言い換えると運転の過渡状態でエンジンの最良効率ゾーンに素早くCVTを適合させるようになっていると言える。

乗り心地やフラット感、静粛性などについてはこの国産セグメントではトップレベルと言えるが、快適性の大きな要素となるシートに関しては前回の箱根での印象と同様で、長距離走行を考えるともう一工夫が欲しい。エンジンでは高回転での加速の頭打ち感を感じる場面も時々感じられた。

「i-DM」は運転を採点するアイテム

デミオSKYACTIVから採用された「i-DM」(インテリジェント・ドライブマスター)は燃費計の上部に表示される運転モニターだ。これは緩慢な運転操作でエコ運転のグリーン表示されるだけでなく、上級者の運転のように高めの横G、前後Gでもスムーズな運転操作が行われた場合はブルー表示され、運転中の採点や、運転後の評価なども行う機能がある。

開発者の話では、今回のデミオに限らず今後のマツダ車でスタンダードの運転モニターとされ、エコ運転でゆっくり走るだけではなく、アクティブでスムーズな運転を支援しようというマツダのポリシーの象徴と位置づけているのが印象的だった。

文:編集部 松本晴比古

写真:編集部 松本晴比古/本田正隆

 

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