4代目となる新型レクサスRXは2015年4月に開催されたニューヨーク・オートショーで発表され、同年10月22日に日本でも発売が開始された。RXはアメリカではV6型3.5Lエンジンを搭載したRX350と、3.5L・V6エンジン+ハイブリッドのRX450hの2機種という設定だが、日本市場には2.0L4気筒ターボの「RX200t」とハイブリッドモデルの「RX450h」の2種類が導入される。アメリカでの試乗レポートはこちら。<レポート:松本 晴比古/Haruhiko Matsumoto>
レクサスRXは、アメリカ市場ではミッドサイズと呼ばれるカテゴリーで、RXはこのセグメントサイズSUVのパイオニアで、1989年に発売された初代モデルは大ヒットした。そうしたことからレクサスRXはカテゴリーリーダーとなり、レクサスの販売台数の30%を支えている。このことはよく知られているが、この市場は次々に強敵が参入し、現在ではBMW X5、アウディQ5、メルセデスGLE(Mクラス)、フォルクスワーゲン・トゥアレグなどと競合している。
今までのレクスRXはライバルより少しボディがサイズが小さかったが、2014年により小型のレクサスNXを新規にラインアップしたため、新型RXはサイズアップし、ミッドサイズど真ん中のボディサイズを実現している。従来型との比較では、全長は4890mm(+120mm)、全幅1890mm(+10mm)。ホイールベースは2790mm(+50mm)、全高1710mm(+20mm)となっている。タイヤ、ホイール径も18インチ、20インチへと拡大されている。
エクステリアは「大人の色気を感じさせる力強いデザイン」というコンセプトで、最新のレクサス・デザイン要素を採り入れ、伸びやかでしかも踏ん張り感が感じられる。イメージ的にはあくまでも都会的なSUVだ。従来モデルは女性的でデザインもおとなしい感じだったが、新型は都会的でありながら存在感も強められており、RXというクルマのポジションが分かりやすくなっている。
ハードウェアは、従来型のプラットフォームを改良して使用しているが、トヨタのTNGAの活動の要素をレクサスでも先取りしており、走りの大幅な改善が図られている。例えばボディはレーザースクリュー溶接や接着を多用し、結合剛性を大幅に向上。エンジンマウントは従来の井桁型のフロントサブフレーム上に搭載されるタイプから慣性主軸マウント、つまりボディから吊り下げる形式に変更され、コーナリング時の追従遅れを低減する。またダイレクト感などに大きく影響するステアリング・ラックギヤはサブフレームに直付けされている。さらにフロント・デフはプリロード式を採用し、操舵に応じてドライバーの意図通りにボディが反応するように大幅な革新が行なわれている。
◆インプレッション
試乗したモデルはRX200tとRX450hのラグジュアリー仕様であるバージョンLと、スポーティグレードのRX450h Fスポーツの3台。RX200tはFF駆動、RX450hは2台ともE-Four(電気式AWDシステム)モデルだった。なおこのE-Fourは後輪独立制御式で、レクサスで初採用となっている。
RX200tは、NX200tにも使用されている4気筒2.0Lのダウンサイジングターボを搭載している。従来型の2.7L自然吸気エンジンに代わるエンジンだ。パワーは238ps、最大トルクは350Nmで1650rpmから最大トルクを得ることができる。
トランスミッションは6速ATが組み合わされている。RX200tの車重は1930kgあるのでパワーウエイトレシオで考えればちょっと苦しいのだが、アクセルを踏んでみると低速トルク型のエンジンなので思ったより軽快に走ることができた。
また4気筒エンジンということもあって、ステアリング操作に対してボディの動きが軽く感じる。このRX200tにはAWDも設定されているが、都市部で使用することを考えるとFF駆動モデルで十分という気がする。では次に排気量の大きいRX450hはどうだろうか?
RX450h バージョンLは質感、走りの点でRXの世界観を感じさせるモデルだ。まず走りは、モーターの力で走り出す時のトルク感や大きくアクセルを踏み込んだ時のエンジンとの連携も滑らかで、力強さを感じる。V6 型3.5Lエンジンは262ps/335Nm、フロントモーターが167ps/335Nm、リヤモーターが68ps/139Nmでシステム出力は313psだから当然ともいえるが。
中間加速でもハイブリッドの滑り感がなく、アクセルに比例した加速が感じられるし、エンジンも稼動して加速するシーンでは、スポーティな排気サウンドも聞こえてくる。これはサウンドジェネレーターを装備し、スポーツサウンドを演出している効果で、これまでのなにかと大人しく控えめなハイブリッドカーのイメージを変えている。
RX450hの車重は2100kgを超えているが、この車重を意識させない動力性能になっている。またハンドリングも素直で、扱いやすい。電動パワーステアリングはコラムアシスト式だが、操舵時のアシストの滑らかさはかなり煮詰められていることが感じられる。
乗り心地もフラット感があり進化している。Fスポーツは当然ながらバージョンLより引き締まった印象になるが、スポーツ仕様として考えるともう少し違いを演出してもよい気がする。
走行中の静粛さもかなりレベルアップしている。このクラスはライバルたちの静粛性能の向上ぶりが顕著だが、それに十分対抗できるレベルになっている。
RX200t、RX450hともにブレーキのフィーリングが格段に向上し、剛性感、コントロール性や安心感が高められていることも注目しておきたい。これはレクサスの新世代のブレーキと位置付けられ、今後登場するクルマにも採用されていくらしい。
つまり新型RXはリニアな加速、ドライバーの意図通りに曲がる、安心感のあるブレーキというクルマとしての基本要素が、大きく前進しているのだ。ただ、走行中のボディ全体からくるドシンとした剛性感などはもう少しレベルアップしたいところだ。
インテリアは、中央に幅広いセンターコンソールが配置され、インスツルメントパネルは水平に伸び、広がり感が感じられる。また新たにフルカラーのヘッドアップディスプレイが採用され、フロントガラスに情報がくっきり表示されるようになっている。
ただ、インフォテイメントのコントロールを行なうリモートタッチは、今回からバックボタンと、エンターボタンが追加されているが、操作感、操作方法はすぐにはなじめない。装備ではドライバー支援システムを網羅しているのに加え、路車間通信、車車間通信による支援システムも搭載され先進的といえるが、現実にはまだ使用できるシーンはごく限られている。
プレミアム・ミッドサイズSUV/クロスオーバーはグローバルで見て、最も競争の激しいカテゴリーだ。その中でRXは都市型のSUV的なラグジュアリー・クロスオーバーというポジショニングがはっきりしており、同価格帯のライバルたちとは微妙に立ち居地が違っている。それだけに、今後はより付加価値を高める革新的な装備などが求められている気がする。