レクサスは2020年6月16日、ニューヨークで「IS」の7年ぶりのビッグマイナーチェンジを世界初公開しました。このモデルは本来4月上旬に開催されるニューヨーク モーターショーで初披露される予定でしたが大幅にデビューのスケジュールが変更されることになりました。
ニューヨーク モーターショーの中止が決定され、当初6月8日にオンラインで発表予定としていました。しかし、ニューヨークにおける新型コロナウイルス感染の問題と、さらに黒人差別に関する大規模抗議デモの拡大を受け、急遽この発表は延期され、改めて16日に実施されたのです。なお、今回発表されたのはアメリカ仕様の2021年モデルです。日本では2020年秋に発売予定で、価格は発表されていません。
モデル概要
レクサスISは、BMW3シリーズ、メルセデス・ベンツCクラス、アウディA4などをターゲットとするスポーティセダンですが、主戦場はヨーロッパというよりはアメリカ市場です。
今回登場したISは、レクサスの目指す乗り味「レクサス ドライビング シグネチャー」をより高い次元に押上げるために、トヨタ テクニカルセンター下山をはじめ、世界各地で走り込みをし、走行性能を熟成させています。そして細部までチューニング、熟成することでライバルに匹敵するレベルに引き上げ、日常の走行シーンでも走りの気持ち良さを感じることができるとしています。
デザインは、従来よりボディの全長と幅を30mm拡大し、ワイド&ローなフォルムにこだわったほか、高精度なプレス技術によりシャープな造形を実現。ISならではのアグレッシブなデザインとしています。
また進化した安全システムも採用し、トップレベルの安全性、運転支援を行なうことができるようになりました。
シャシーとパワートレーンを改良
マイナーチェンジと言う表現でもわかるように、新型ISは新世代のTNGA-Lは見送られ、従来からのプラットフォームを継承し、熟成させるという手法が採用されています。
開発するにあたり、クルマを操る楽しさを重視し、数値では測れない人の感性フィーリングにこだわり、一連の運転操作のつながりやリズムなど、ドライバーの意図に忠実でリニアな操縦性を追求しています。
また不快な振動や音といった雑味の発生を抑えるために、原因を突き詰めて解消するなどクルマづくりの基本に立ち返り、走りの気持ち良さ、乗り心地、操縦性を熟成したといいます。
ボディは、サイドラジエーターサポートの補強、フロントサイドメンバーのスポット打点追加、Cピラーからルーフサイドにかけての構造最適化などによりボディ剛性を高めています。この結果、ハンドル操作に対するレスポンスなど運動性能を高めるとともに、ノイズや振動を徹底的に排除し乗り心地を向上させています。
シャシーでは、ダンパーのオイル流路に非着座式のバルブを採用し、微小な動きに対しても流路抵抗による減衰力を発生させる「スウィングバルブショックアブソーバー」を採用。ダンパーのストローク速度が極めて低い場合でも減衰力を発揮することで、応答性が良く、しかも上質な乗り心地を実現しているということです。
新採用の19インチタイヤはコーナリングフォースを大幅に向上するために採用されました。そしてホイールの締結には、ヨーロッパ車と同様のハブボルト式を採用し、締結力の強化と質量の低減を図っています。
パワートレーンは従来どおりで、2.0L4気筒直噴ターボ(8AR-FTS)、2.5L4気筒ハイブリッド(2AR-FSE)、3.5L V型6気筒(2GR-FSE)の3種類が選択できます。
2.5Lハイブリッド モデルはアクセル開度に対するエンジンとモーターの駆動力制御を変更し、よりリニアな加速フィールを実現。2.0Lターボモデルではドライバーのアクセル開度などから走行環境を判定し、シーンに応じて適切なギヤ段を設定するアダプティブ制御を採用し、よりドライバーのアクセル操作や意図に対してリニアなレスポンスを実現しています。
デザイン
エクステリアでは、新開発の小型軽量ランプユニットを搭載した薄型のヘッドランプを採用。新デザインとなったスピンドルグリルは、グリルの先端を起点に立体的な多面体構造とすることで押し出し感を強調しています。
また、スピンドルをモチーフとしたブロック形状とメッシュパターンを組み合わせています。低く構えたグリル周りとそれに合わせて下げたサイドのキャラクターライン、トランク後端の造形で重心の低さを表現しています。
前後フェンダーは左右に張り出しを強め、L字をモチーフにした一文字型のリヤコンビネーションランプと立体的なバンパーガーニッシュを採用。新デザインの19インチホイールや、ワイドなトレッドによりスポーティな走りを予感させるプロポーションを生み出しています。
またボディパネル製造工程で、上下方向のプレスの動きに合わせて金型が横方向からスライドする機構を追加したことで、立体的な造形を可能とする「寄絞り(よせしぼり)型構造」の最新プレス技術を採用しています。これによりラゲージ部のキャラクターラインなどで高精度で、よりシャープな造形が実現しています。
エクステリアカラーは、強い陰影により造形を際立たせるソニックイリジウムと、金属質感と高光沢を実現したソニッククロムの2色を新規に採用しています。
「F SPORT」は専用のFメッシュパターンのグリルを採用。その他にもグリルロワ部のエアインテーク、専用19インチアルミホイール、リヤスポイラーなどの専用装備や、専用外板色ラディアントレッド コントラスト レイヤリングを採用し、よりスポーティな印象にしています。
インテリアではマルチメディアシステムを一新。新たにタッチディスプレイを採用し、SmartDeviceLink、Apple CarPlay、Android Autoに対応できるようになっています。
インスツルメントパネル上部やドアパネルはツートーン配色とし、左右方向の広がりを強調。さらにドアトリムの一部にレクサスの新たな加飾表現である複数のエンボスラインを交差させたグラフィックパターンを採用。オーナメントパネルにアッシュ(オープンフィニッシュ/墨ブラック)、ブラックジオメトリーフィルム、F SPORT専用サテンクロムを新採用しています。
安全システム
安全システムは新たにレクサス セーフティ システム+を採用。このシステムは、単眼カメラとミリ波レーダーの性能を向上させ、昼間の自転車運転者や夜間の歩行者も検知可能なプリクラッシュセーフティの対応領域を拡大。交差点右折前に前方から来る対向直進車や、右左折時に前方から来る横断歩行者も検知可能になっています。
またドライバーの操舵をきっかけに車線内で操舵をアシストする緊急時操舵支援や低速時の事故予防をサポートする低速時加速抑制などの機能も追加されています。
自動車専用道路などではレーダークルーズコントロール、同一車線内中央を走行できるよう操舵を支援する高度運転支援機能、レーントレーシングアシストなどでの車線認識性能も向上しています。
レーントレーシングアイシストの作動時にはカメラによる白線認識にAI技術を活用し、カーブの大きさに合わせてあらかじめ減速して横Gを常に一定にしたり、半径の小さなカーブやトンネル内でも途切れの少ない運転支援を可能にするとしています。
この新型ISは、果たしてBMW3シリーズと真っ向勝負になるのでしょうか。興味は深まります。