デトロイト国際オートショー総覧 デトロイトモーターショー2012

デトロイトモーターショー2012
2012年1月9日に開幕した北米国際自動車ショー(NAIAS:通称はデトロイト・オートショー)の各社の出展車を総覧してみよう。NAIASは毎年開催され、その規模の大きさから世界5大オートショーのひとつとされている。それは、巨大な自動車マーケットを持つアメリカの、それもモーターシティと呼ばれる自動車産業の中枢都市、デトロイトで開催されるからだ。ちなみに2011年の開催時には32台がワールドプレミアを行い、55カ国から5000人以上のジャーナリストが訪れ、入場者総数は73万5000人を記録している。

また、今回の会場で発表されたカーオブザイヤーで、ヒュンダイ・エラントラが受賞し、表彰されたことも印象的だ。エラントラはカローラやシビックを猛追する勢いでセールスを拡大しており、スポーツ性と実用性、ラグジュアリー感と値頃感、機動性と安全性を兼ね備えた小型車として評価された。

■ホンダ/アキュラ

ホンダの話題はなんといってもアキュラ・ブランドのNSXコンセプトの登場だった。NSXコンセプトはデザインスタディ・モデルとされているが、その中身は軽量なボディに次世代のV6型直噴VTECエンジンをミッドに搭載し、走りと燃費を両立させるスポーツハイブリッドSH-AWDと発表されている。

アキュラブランドRDX NSX ILX
デトロイトで発表されたアキュラブランドのニューモデル3台。左からRDX NSX ILX

高出力エンジンに新開発のモーター内蔵型DCTトランスミッションを組み合わせ、さらに前輪の左右輪を独立した2個のモーターで駆動するハイブリッドスポーツカーなのだ。つまり3個のモーターを使用したハイブリッドカーといえる。前輪を駆動する左右のモーターは、独立した駆動力を与えることができ、オン・ザ・レールのスーパーハンドリングを実現するという。

コンセプト的にはアウディR8を意識し、デザインはキャビンが極端に前進したフォルムで、このプロポーションから考えれば縦置きエンジンレイアウトであっても不思議ではない。

ショーでは、3年以内に最初にアメリカで発売すること、生産はアメリカのオハイオ工場で行われることが発表された。オハイオ工場で生産されるということは、従来のようなホンダ内製のオールアルミボディとは考えにくいが、アルミ材やカーボン材などの軽量材料を駆使するものと予想できる。なお、この次期NSXの開発ベースとなるプロトタイプ車両(新デザインは反映されず、仮の試作ボディにパワートレーンを搭載した初期的プロトタイプ)は、すでにニュルブルクリンクで何度もスクープされている。

NSX
次期NSXとしてワールドプレミアされた。HVモデルで3個のモーター、DCTというメカニズム

NSXと同じくアキュラ・ブランドでは他に2台がベールを脱いだ。

1台はILXコンセプトで、若者層向けのアキュラ・ブランドのエントリーモデルとされている。デザイン的には4ドアクーペといった感じで、エンジンは、2.0L、2.4Lのエンジンと、1.5Lハイブリッド(IMA)の3種類。

ILX
アキュラブランドのエントリーモデルとされるILX

ILXはコンセプトという名称がつけられているが、インディアナ工場で生産され、今年の春には発売が予定されていることから、量産を前提にしたモデルあると考えられる。

もう1台はRDXプロトタイプで、現在アキュアラ・ブランドで販売されている小型クロスオーバーカーのRDXの後継となるモデルだ。現行モデルよりトレッド、ホイールベースを拡大し、キャビンのボリュームをアップするとともに、フォーマル、ラグジュアリー指向のデザインを採用している。エンジンは現行の2.3Lのi-VTECターボから3.5LのV6型エンジンに変更している。オハイオ工場で生産されるこのモデルも、今春の販売を予定しているため、量産モデルそのものと考えてよいだろう。

RDX
プロトタイプだが、ほぼ量産モデルそのものと予測できるRDX

一方、ホンダ・ブランドでは、アメリカ仕様の新型アコードクーペ・コンセプトと、新型アコードシリーズの概要を発表した。

新型アコードシリーズ、すなわちセダン/クーペは、アメリカで初導入となる次世代パワートレーン、アース・ドリーム・テクノロジーに基づいた新型エンジンと、CVTを採用。さらに2モーター式のプラグインハイブリッドも投入するとしている。プラグインハイブリッドは、EV、ハイブリッド、エンジン直結の3モードを使い分け、従来のホンダ・ハイブリッドよりは電池容量を大幅にアップしている。なおこのプラグインハイブリッドシステムは日本ではインスパイアに搭載され、すでに実証実験を実施中だ。

新型アコードに搭載される新しいエンジンは4気筒2.4Lの直噴エンジン、3.5LのV6型エンジンの2種類がラインアップされ、性能的にはクラストップの燃費を達成する。新型アコード(セダ/クーペ)の発売時期は、エンジン車は今秋、プラグインハイブリッドは2013年末としている。

■トヨタ/レクサス

レクサスはLF-LCを出展した。トヨタのカリフォルニア・デザインセンターでデザインされたこのハイエンドの2+2クーペは、レクサスSC(ソアラ、2010年に生産終了)の後継モデルと位置付けられる。LF-LCは先代のSCよりはるかに走りにパフォーマンスをアップさせていると予想できる。パワーユニットはハイブリッドと明言されているが、3.5LのV6型ハイブリッドかV8型ハイブリッドかは不明だ。なおこのLF-LCは今回のデトロイトモーターショーで、最優秀コンセプトカーに選ばれている。

トヨタは、次世代4ドアコンセプトカー「TOYOTA NS4」を出展した。NS4は2015年頃を想定し、環境性能、先進の安全技術と人トとクルマと社会がつながる技術を搭載し、デザインや動力性能、質感などを高次元で実現したコンセプトカーだ。デザインはトヨタのハイブリッドカーのアイコンであるトライアングル・シルエットをモチーフに、低重心を強調したものとなっている。

NS4NS4走り

性能的には2015年でトップレベルの燃費とスポーティな走りを両立させた次世代プラグインハイブリッドとしている。先進性では次世代プリクラッシュ・セーフティや新しいマン-マシンインターフェースを採用する。ボディサイズは、全長4650mm、全幅1770mm、全高1370mm、ホイールベース2700mm、パワートレーンは2.0Lエンジンを搭載したプラグインハイブリッドで、タイヤサイズは225/40R19と発表されている。

NS4コンセプトモデル
トヨタの次世代4ドアモデルNS4。2.0Lエンジン搭載のPHVで2015年頃を想定している。

トヨタはプリウスV(プリウス・アルファ)、プリウスC(アクア)、プリウス・プラグインハイブリッド、プリウスというハイブリッドファミリーを出展。さらに燃料電池車のFCV-R、トヨタ86のアメリカ版、サイオンFR-Sも出展している。

■日産


日産は、燃費と快適性を重視した次期型パスファインダーのコンセプトモデルを出展した。4代目となるパスファインダーのデザインは、スタイリッシュで、使い勝手の良さとSUVとしての性能を妥協なく求める斬新な外観とパッケージングを実現したという。

エクステリアでは、日産の将来のモデルを暗示する大きな曲線のキャラクターラインが特徴的に表現されている。またインテリアは3列シート・7人乗りで、広いスペースと使い勝手の良いインテリアとしてまとめられている。この新型パスファインダーはエアロダイナミックなボディを持ち、改良されたV6型エンジンと次世代CVTを搭載することで、最も燃費のよい7人乗り乗用車という点を訴求している。 燃費は市街地/高速道路の混合走行で、従来型のV6型エンジン搭載モデルに比べて25%向上するとしている。

次期パスファインダー
4代目となる次期型パスファインダーを発表。V6型エンジンに次世代CVTを搭載

また日産は、ミニバンのEV、e-NV200コンセプトを世界で初公開した。多目的ミニバンのNV200をベースに、EV化したもので、ビジネスユーザー、ファミリー向けとしている。

アメリカではコンパクトなボディサイズながら、多機能な室内空間とEVならではの静かさ、そして快適なドライビングを実現し、商用バンとしてのセグメント常識を大きく変える可能性のあるクルマであり、すでにニューヨークタクシーとして決定しているNV200のもうひとつの姿といえる。

航続距離はリーフと同程度の性能を持ち、最大積載量と荷室スペースはNV200と同程度だ。なおフロントマスクはリーフと共通のデザインにして、日産EVのアイデンティティを訴求している。モーター出力は80kW、最大トルクは280Nm。このe-NV200はもちろん日本にも導入されると考えられる。

 

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