ホンダから発売されたコンパクトSUVのヴェゼル試乗会があり、参加してきたのでレポートする。
◆ポジショニング
コンパクトSUVというカテゴリーは国内ではライバルが少なく、スバルXV、日産のジューク&デュアリスあたりと競合する。しかし海外に目を向けると欧州ではルノー・キャプチャー、プジョー2008、さらにプレミアムクラスだがBMWミニのクロスオーバーなどもいる。
それらは、欧州のB/Cセグメントに属し、コンパクトカーの新しい需要を掘り起こしているモデルたちでもある。イメージは都会でもおしゃれに使用でき、アウトドアでも使える。使い勝手が良く、環境性能にも優れているという要素を持つまさにクロスオーバーなモデルだ。
ヴェゼルはフィットと共通する部品を多く使用したモデルであり、部品調達も現地生産に対応できるメガ・サプライヤーとの協業部分も見られる。ヴェゼルは欧州でもアジアでも北米でも販売が予想され、「それぞれのマーケットニーズに応える仕様になる」と、開発責任者の板井氏は言う。欧州であれば一番の需要はディーゼルエンジンであり、北米であればガソリン車、日本であればハイブリッド車が必要であるという意味だろう。
国内仕様はハイブリッドとガソリンの1.5L+CVTという2種類のパワーユニットで構成してきた。ハイブリッドはフィットHEVとは若干異なり、エンジンがよりパワーのある1.5Lエンジンにモーターが組み合わされた仕様だ。フィットRSに搭載しているガソリンエンジンといえば想像つくか。そしてトランスミッションはモーター内蔵タイプの7速DCTという組み合わせでフィットよりもスポーティな走りをイメージさせる。駆動タイプはFFと4WDがそれぞれに用意され、HEVと4WDの組み合わせは魅力的に映る。
エントリーモデルとなるFFの1.5L自然吸気エンジン+CVTが187万円(5%消費税込み)、JC08のモード燃費は20.6km/L。トップモデルとなるハイブリッドのFFが250万円、燃費は27.0km/L。HEVの4WDが268万円という設定。燃費は23.2km/Lだ。ディメンションは全長4295mm×全幅1770mm×全高1605mm、ホイールベースは2610mmでフィットよりはひとまわり大きなサイズ。ちなみに新型フィットは3955mm×1695mm×1525mm、WB2530mm。つまりヴェゼルはフィットよりひと回り大きいCセグメントのポジショニングになる。
このことが示すように、Bセグメントのフィットの派生車という見方をする向きもあるが、ヴェゼルはホンダの5本目の柱となるグローバルモデルであり、Cセグメントの車両である。発表会で伊東社長の言葉どおり、フィットとは異なる商品軸をもつ新型車なのである。ちなみに、5本柱とはアコード、シビック、CR-V、フィットでありヴェゼルが加わる。
ついでに説明すると、部品調達のオペレーションとして数を束ねていくので、同時期に共通部品を使用したモデルが誕生してくる。それを派生車と捉えた人もいた。がしかし、部品調達はグローバルオペレーションとはするものの、商品軸としては別なところにポジションニングしているわけで、それがB/Cセグメントのポジショニングの違いにより明確にわかる。ヴェゼルではマグナシュタイヤー、シェフラー、ZFなどのメガ・サプライヤーグループが関わっている。
◆インプレッション
インテリアからは「新しさ」を感じる。例えばフローティングデザインのセンターコンソール、空調などの操作パネルがタッチパネルになっているなど、コンパクトクラスではなかった先進的なデザインが取り入れられている。キャビンフォワードされた室内は広く、特に後席のヘッドスペース、フットスペースは広く大人4人がゆったりと乗れる広さがある。
運転席はドライバーオリエンテッドにデザインされ、ドライビングが楽しめる印象だ。ナビ画面、空調操作などもドライバー側へ傾き、操作しやすい工夫がある。そしていずれもタッチパネルというのも時代の流れを吸収している。
ラゲッジスペースはホンダならではのセンタータンクレイアウトを採用しているため、荷室が広く、低くなっている。特にラゲッジフロアの低さは際立ち、ステーションワゴンと同等、いやそれ以上に低い位置での積み下ろしができる。バックシート6:4の分割式なので、使い勝手もいいだろう。
乗り心地ではHEVとガソリン車とでは若干違いがあるが、どちらも細かな動きがあり、ひょこひょこした振動を感じる。それは低中速域付近で、コーナリングGがかかる場面やハイスピード域では感じられないフィールだ。しかし、総じて乗り心地はよく長距離でもワインディングでも楽しめる乗り心地と言える。ダンパーはZFグループのSACHS(ザックス)を採用している。
ハンドリングでは、ステアリングの制御が気持ちいい。ジェイテクト社の電動パワーステアリングを採用し、低速では軽い操舵でコーナリングGや高速域では手応えがしっかりあるように制御されている。ちなみに、先に発売された新型オデッセイのパワーステアリングはZFレンクシステム社製を採用していた。
少し気になるのはHEVとガソリン車ではフィールが異なることだ。ガソリン車はブレーキタッチもエンジンフィール、シフトフィール(CVT)もナチュラルに感じられ、ドライバーの期待値にリンクしたフィールが味わえる。コーナリングのGのつながりも滑らかだ。一方HEVはエンジンフィールとブレーキフィール、あるいはコーナリングフィールとエンジンフィールといった、クルマの動きを滑らかに繋げる操作において、それぞれ個別のフィールを感じるのだ。
例えば減速しているときに、エンジンのBモードで弱い回生ブレーキとエンジンブレーキで減速がかかる中、フットブレーキのタッチが合わず、フットブレーキをかけた瞬間に強い減速になってしまう。あるいは、パドルシフトを装備するDCTでありながら、低中速回転ではリニアに反応せずワンテンポ遅れた反応をする。など、少しリズミカルに欠けた運転を強いられる気がする。
もっとも、HEVの中での比較とすれば、フィットHEVより滑らかに変わったし、違和感は減っている。ブレーキのタッチもブレーキバイワイヤーと気づかされない制御ができている。エンジンを高回転まで回せば、リニアで素早いシフトアップ&ダウンが可能で、気持ちよく走らせることが可能だ。つまりHEVモデルのフィールは、何と比較するかで評価が分かれるが、ガソリン車はどれと比べてもバランスよく仕上げられていると言える。
■ホンダVEZEL(ヴェゼル)価格表