ホンダ ステップワゴン試乗記 熟成の極みと斬新アイディアのわくわくゲート

マニアック評価vol344

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発売直後の受注も好調の新型ステップワゴン

ホンダ新型ステップワゴンの5代目は、2015年5月のゴールデンウイーク明けの時点で、目標台数5000台の2倍となる1万台の受注を受け好調な滑り出しだ。特にテールゲートが縦にも横にも開くわくわくゲートが話題。徹底的にユーティリティを突き詰めつつ、ミニバン本来の基本性能をじっくりと見直したモデルだという。基本性能の進化と新しい価値の提供という新型ステップワゴン/スパーダに試乗してきたのでレポートしよう。<レポート:髙橋 明/Akira Takahashi>

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よりスタイリッシュなステップワゴン・スパーダ

試乗は御殿場周辺。東名高速から箱根にかけてという、高速道、一般道、ワインディングというロケーションだった。試乗会場のホテルを出発してすぐに東名高速に乗る。最初に気づくのは風切り音やロードノイズの静かさだ。5代目ステップワゴンのこだわった部分でもある静粛性は、開発の狙いどおりのレベルをクリアしていると感じた。

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ステップワゴンとスパーダ(下)、リヤビューもデザインと雰囲気が異なる

ステップワゴン試乗記022そして、高速道に乗ってすぐに気付くもうひとつのポイントは、この静粛性の高さとともに直進性の高さと安心感のあるステアフィールだ。直進の座りがしっかりあり、その安定感がドライバーに伝わる。その結果、長距離、長時間の高速移動でも疲れにくいことが容易に想像できる。これは、ステアリングまわりで、コラムシャフト径のアップやトーションバーバネレートのアップ、ステアリングラックの4点リジット止めなどが施され、車体のふらつきやシッカリ感などを増しているということだ。

3列目シートに座り、ドライバーとの会話はストレスなくできるのか?といえば、乗用車と同レベルという印象だ。声のボリュームを上げることなく、普通に会話が可能だ。ミニバンというボディ形状から、どうしてもフロアパネルからの音の侵入や箱型のボクシースタイルでは、風切り音も大きくなってしまうもの。それが見事に消されていて、乗用車と同等と言えるだろう。実は空力にもこだわりが強く、エクステリアデザイナー自ら風洞実験には頻繁に立ち会い、Cd値はセダンクラスまで向上しているという。その効果が風切り音の静かさというポイントに表れているわけだ。

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セダンレベルまで空力性能をアップした新型ステップワゴンは静粛性も高い

 

運転席からの視界では、フロントウインドウからの見晴らしがよく、ワイパーブレードなど視界を妨げるものがない。しかし、ひとつ気になったのはドライバーズシートの座面が少し小さく感じたことと、座面の後傾角が少なく、前に滑り出しそうな印象があったことだ。女性やビギナーに多くみられる抱え込む運転姿勢だと、特に気にならないだろうが、運転好きの人で、ドラポジにこだわるようなユーザーには、気になるポイントかもしれない。

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◆ボディ&シャシー
新型ステップワゴンには超先進的な何か?という技術的なものはとくに投入されていない。反面、これまでの技術の熟成率をあげての開発だったため、さまざまな箇所にこだわりを持って開発されている。その結果ハンドリングや乗り心地、使い勝手などにその成果が表れているというわけだ。

例えば、ボディはハイテン材の使用率を挙げている。これまでの44%から52%まで使用率を上げ、1500MPa級超ハイテン材も2%使用している。そして結合剛性を上げ、部分的に接着剤も使用するなどした結果、スタティックな曲げ剛性で8%、ねじれ剛性で25%以上向上している。こうした高剛性ボディを手に入れることで、サスペンションはハンドリング、静粛性、安定性などすべてに好影響が出ている。なおこの辺りの詳細は、Auto Proveのステップワゴン詳細解説を参考にしてほしい。

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サスペンションの最適化などにより三列目の乗り心地もアップ

サスペンションも当然最適化されているわけで、特に乗り心地というポイントでは3列目も重視したセッティングがされている。突き上げ感がどうしても起こる3列目を改善すべく手段としては、サスペンションのジオメトリー変化を見直すことで、ダンパーの作動領域をより正確に、そしてダンパー、スプリング本来の性能が出せるように最適化している。ちなみに採用しているダンパーはオデッセイなどで採用したSACHS製ではなく、ショーワ製だ。また、リヤ前後に液封のコンプライアンスブッシュを採用することでもハンドリング、乗り心地に貢献しているという。

そのハンドリングでは、少しの舵角で正確にボディが反応することや、ロールはするが、均等のロール速度でロールしつつヨーモーメントも感じるので、ミニバンであることを忘れてしまう乗用車ライクな操舵感が残るのも印象的だった。

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クラスを越えた座り心地の2列目シート

3列目での乗り心地は、十分常用のシートとして利用できるレベルであり、エマージェンシー的な意味合いは薄い。2列目はさらに乗り心地がよく、ワンランク上のクラスのものだ。車両全体にしっとり感があり、乗り心地に高級感があることから、乗員からの満足度はかなり高いと思う。

◆パワートレーン&パッケージ
5代目ステップワゴンの注目点としてエンジンがダウンサイジングされたことも挙げられる。1.5Lの直噴VTECターボガソリンエンジンで、2.4Lの自然吸気クラスと同等のトルク感がある。スペックは150ps/203Nmだが、ゼロ発進からの加速や中間加速など不満は一切ない。走りだしのターボトルクでグイグイと加速し、低回転域でもターボラグを感じさせないセッティングだ。そこからの加速も力強く、1.5Lであるとは思えない仕上がりだ。唯一、高速域での追い越し加速では物足りなさを感じるかもしれないが、瞬間的なものであり気になるレベルではないだろう。高速道の登坂車線があるような上り坂でもエンジンが唸るような場面もなく、ストレスはない。ちなみに、ミッションはCVTを搭載している。

パッケージングは、全長で4690㎜(スパーダ4735mm)×全幅1695mm×全高1840㎜(4WD 1855㎜)というサイズ。ホイールベースは先代より35mm延ばされ2890mmある。したがって、最小回転半径は+100mmなのだが、エンジンルームをマイナス40mmとしたことで、Wall to Wallは従来モデルと変わりなく5.4mとなっている。また、ステアリングのロックツーロックを3.5回転から3.0回転としたことで、逆に従来モデルより扱いやすくなったと思う。狭い駐車場ではその威力を感じるだろう。

◆ユーティリティ
わくわくゲートやシートアレンジ、室内小物入れ、収納などは熟考され、アイディア満載だ。リヤゲートがゲート途中から横に開く「わくわくゲート」のアイディアは、斬新で楽しい。3段階にノッチがあり、使い勝手を考慮してのセッティングだ。スーパーの駐車場で荷物を載せるのに、テールゲートを持ち上げる必要もなく、簡単に荷室とアクセスできる。そして人の乗り降りやベビーカーなどの積み下ろしで使いやすく便利に設計されている。

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縦にも横にも開く革新の「わくわくゲート」。ドアは三段階に開くので狭い駐車場でも安心
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コンビニフックは車内10ヶ所、ドリンクホルダーは16ヶ所もあり、長時間、長距離のドライブで溜まるゴミや、多人数乗車でも便利に快適に使える工夫がされている。2列目のサンシェードは全車適応で嬉しい標準装備だ。さらに各シートにアンビエントライトの演出もあり、高級で満足感を高める配慮もされている。

安全運転支援ステムではホンダセンシングをメーカーオプションに設定している。単眼カメラとミリ波レーダーにより、対象物をクルマや障害物だけにとどまらず、人間も検知する精度に高められている。もちろん衝突回避、被害軽減ブレーキ、アクティブクルーズコントロール、車線維持支援、誤発進抑制などの機能も持っている。

ユニークなのは、ハンドルを切った際タイヤの向きがモニターに表示されたり、ブレーキを踏まずにエンジンスタートしようとすると音声案内で「ブレーキを踏んでエンジンを始動してください」とアナウンスしたりと、運転に不慣れなドライバーに親切な装備もある。

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5代目ステップワゴンには飛び道具として映るものはないが、熟成した性能、ユーティリティの完成度が高く、特に走行性能の分野ではミニバンを超えるミニバンという印象をもつ試乗だった。

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