2015年5月15日、ホンダ・フィットシャトルの後継モデル、「シャトル」がデビューした。ハイブリッド、ガソリンの両モデルを用意し、ラゲッジユーティリティを徹底的に研究した新型モデルである。
シャトルは言うまでもなくフィットをベースとしたステーションワゴン型モデル。プリウスαがライバルとなるコンパクトサイズのワゴンモデルとなる。マーケットは20万台から27万台という市場規模を持ち、独身、子離れ以降の世代をターゲットとし、乗用ミニバンからのダウンサイザー、スモールコンパクトからの上級移行層を狙うモデルとなる。
特徴を簡単にまとめると、上質で上品なデザインを持ち、広い空間、長距離でも疲れない乗り心地と走り、静粛性があり、クラストップの省燃費、そしてガソリンは169万円、ハイブリッドも199万円からという競争力の高い価格設定というところにまとまる。
モデルバリエーションは4グレードで1.5Lのガソリンモデル、そしてハイブリッドメインで、3グレード展開する。それぞれ、ハイブリッド、X、Zという設定で、ハイブリッドはエントリーユーザーを狙い、最上級グレードがZとなっている。
ボディサイズは先代フィット・シャトルと同様に立体駐車場に入るサイズとし、全長4400mm×全幅1695mm×全高1545mm、ホイールベース2530mmとなっている。搭載のパワーユニットはガソリン車は1.5Lの自然吸気にCVTを組み合わせている。ハイブリッドは基本フィットと同様のi-DCDでモーター内蔵のデュアルクラッチ式のハイブリッドとなる。しかし、各部、燃費向上を目指すため、フリクションなどの見直しが行なわれ、ハイブリッドで34.0km/L、ガソリンで21.8km/Lというクラストップの省燃費を実現している。
◆ポジショニング
新型シャトルはフィットのネーミングを付けていない。その理由として、既存のユーザーを調査した結果、フィットユーザーとは明らかに異なる目的で購入している方であり、フィットの街乗りに対して、シャトルは長距離や遊びのための移動と考えるユーザーだったという。そのため、明らかに購入目的が違うユーザー向けに、フィットのイメージを外し「シャトル」だけにしたと開発責任者の磯貝氏は言う。
そのため、新型シャトルの開発コンセプトはライフスタイルを広げ、人生を愉しむためにライフクリエイトワゴンという位置づけとし、お気に入りの場所などへの移動をフォローできればという思いがある。また、初代シャトルの名を冠するシビックシャトルへのオマージュも含め、不要なものはいらない、自分の生活をクリエイトしていくというDNAを受け継いでいると説明する。
そして、開発コンセプトのキーワードは「classy resorter(クラッシーリゾーター)」としている。少し余裕があり、リゾートに行けるクルマ。特別感とユーティリティの共存が高次元でバランスし、デザインや内装の質感などのスペシャル感を持ち合わせているとしている。つまり、存在感、クラス感、こんなデザインなのに、こんなに積めるという新価値がコンセプトであるというわけだ。
◆デザイン
エクステリアの特徴はヘッドライト、眼だ。面全体がシャープに光るLEDを装着し細くシャープに見える。高速で先行車のルームミラーに映る姿にも存在感があるようにしている。また、インテリアでは、ソフトパッドをインパネ上部からすべて回り込んで、上質感をつくり、センターコンソール付近にピアノブラックのパネルを使い、高級感を選出。特徴的に、センターコンソールは大型で、深さもある仕様としている。i-padも入る大型サイズにもなっており使い勝手が研究されている。また、シート表皮もなめらかな感触のものを採用し、コンセプトにマッチしたエクステリア、インテリアデザインとしている。
ボディカラーは全8色で、シャトル専用色として2色用意されている。ひとつは、ミッドナイトブルービーム・パール、そしてミスティックガーネット・パールだ。ミッドナイトブルービームは3コート塗装し、光が当たるとビームが走ったように光る塗装になっている。
ラゲッジユーティリティはこのクルマの最大の特徴とも言える部分だ。ステーションワゴンとしては最も重要であり、単なるスペースとして処理しないことで議論を重ねたという。大切なアイテムを綺麗に載せるスマートな荷室という狙いで、「クロークルームラゲッジ」と命名し、コンセプトとしている。
大事なものが置ける場所を作る、大きなものを余裕で載せられる容量を作る、汚れたものが気にならないところを作る、などこれらの要求を満たすラゲッジとし、ゴルフバッグであれば4本が楽に積める容量570Lを確保。汚れた靴や濡れたものを置く場所がある、などの工夫をしている。また、マルチユースバスケットという物入れをリヤシートバックに設置し、中の底には合皮を使うなどの気遣いを見せる。そしてベビーカーや車いすも収納でき、ユーティリティにたけたステーションワゴンタイプとしている。
◆シャシー、ボディ、ダイナミック性能
コンセプトのターゲットユーザーであるリゾーターが市街地からリゾートへの移動で、愉しさと上質感を高次元でバランスしたハンドリングとしている。フロントではタイロッドエンドの取り付け位置の変更やブッシュ硬度の最適化をし、ダンパーには振幅感応型のSACHS(ザックス)製ダンパーを前後に装着。小さい入力時のひょこひょこした動きや、コーナリングなど大きい入力でフラフラしないなどの効果が期待できる。
リヤはトレッドを1475mmから1483mmへ拡大しワイド化している。キャンバー角も+0.25度の1.75度としている。またアクスルビームでは10%程度の剛性アップを図り、トレーリングアームブッシュに液封タイプのブッシュを採用している。そしてコンプライアンスブッシュまわりを補強し、足回りをシッカリ感を高め、これらのチューニングにより、ハンドリング、乗り心地を向上させ、愉しさと上質さを高次元でバランスさせているとしている。
ボディはCピラーから後端までを環状骨格とし、リヤサスペンション取り付け周りの補強をすることで、剛性を高めサスペンションの性能をフルに発揮でき、乗り心地も向上するボディとしている。
同時に780MPa、980MPs、ホットスタンプなどのハイテン材の使用率を上げワゴボディ形状でありながら、軽量で高剛性ボディとしている。また、ホンダ独自のインナーフレーム構造で、フレーム結合部に高効率継ぎ手骨格を採用するなど、結合剛性アップ、補強材の削減などの効果を出し、軽量・高剛性としている。これらの高剛性ボディに、長距離移動での室内騒音を下げることも重要視し、サイレント空間も実現しているという。
最後に装備についてだが、オートエアコンは全車標準装備とし、パドルシフトはZ、Xグレードに標準装備している。また、プラズマクラスターはガソリン車でオプション設定だが、ハイブリッドでは全グレード標準装備としている。これら快適装備、移動の愉しさを追求したのが、今回の新型シャトルである。