2015年10月27日、ホンダが開発していた新型「NSX」の市販仕様車がついに公開された。世界の報道メディア向けに公開された場所はホンダ栃木研究所のテストコース。3モーター・ハイブリッド/SH-AWDを備える新型NSXはレーシングカーのようなサウンドを響かせた。
公開されたNSXはHマークを付けた右ハンドルと、アキュラのAマークを付けた左ハンドルモデルの2台で、いずれもホワイトカラーだった。もちろん、アメリカをベースに開発・生産され、開発を指揮したのはアメリカ人のテッド・クラウス氏だ。
ボディは全長4470mm、全幅1940mm、全高1215mm、ホイールベース2630mm。まさにスーパーカーのボディ・フォルムだ。車両重量は1725kgだという。
ボディ骨格は、アルミ材と部分的に3次元熱間成形の高張力鋼板、プレス成形材を組み合わせで、アルミ部は押し出し材、プレス材、重力鋳造材に加え、世界初のアブレーション鋳造材も使用している。アルミ・アブレーション鋳造とは砂型鋳造時に急速冷却を行なう製法で、靱性(じんせい)に優れているため衝撃吸収構造部に採用されている。
なお開発初期には、ボディ骨格はカーボン製も検討されたが、あくまで社内で生産できる体制を重視したため採用は見送られたという。
ミッドシップマウントされる75度のバンク角を持つV6型3.5Lツインターボエンジンは、直噴+マニホールド噴射というツインインジェクターを装備。ピストンはクーリングチャンネル式を採用。またスーパーカーらしい低重心を追求し、ドライサンプ式としている。
ハイブリッド・システムは、フロントがツインモーター、リヤのモーターはエンジン直結の薄型モーターを配置し、バッテリーはドライバーシートの背後にレイアウトされている。エンジン出力は500ps/550Nmで、フロントの2個のパワー(1個が36ps)、リヤモーター47psを加えたシステム総合出力は573ps/645Nmとなっている。
低速・低負荷で短距離は前輪のツインモーターのみで、つまりFFでEV走行も可能で、通常走行中は4WDとなり、このツインモーターによりトルクベクタリングを行なうことで旋回をアシストするSH-AWDとして機能する。また加速時には3個のモーターが駆動ブースターとして作動する。
トランスミッションはコンパクト、低重心構造の9速DCTを採用。なおドライブモードは「Quiet」、「Sport」、「Sport+」、「Track」の4モードだ。
◆インプレッション
試乗は高速周回路を2周するのみ。ドライブボタンを押し、モードはスポーツでスタート。するとフロントモーターだけで走りだす。この時新型NSXはFF走行をしアクセルをゆっくり踏むと60km/h付近まではEV走行をする。
周回路の合流車線の途中から車速を上げるとエンジンが稼働する。アクセルを踏み込み車速をドンと上げ周回路を走行。直線部分でレーンチェンジを試すと、地面に吸いつくような姿勢のままスパッと車線を移動する。リヤ操舵機能はないものの、左右のトルクベクタリングやトーコントロール機能があり、しかも場合によっては4輪にかかるトルク、後輪のトーアングルすらも別々に動く場合も考えられるわけで、これまでの常識を大きく変えるドライバビリティと言えるだろう。
車速はあっという間にリミッターが働く188km/hを示す。2周目はモードをスポーツプラスにしてみる。エンジン音は乾いたサウンドで官能的なサウンド。これまでのホンダ車とは一味違うサウンドで走る。専用に開発されたDCTは小気味よくシフトし、まさにスーパースポーツをドライブしている満足感が得られる。
この気持ち良さを存分に味わう時間もなく周回は終了。市販は目前となった新型NSX、価格は1800万円程度と予測されている。