ホンダ 自動運転レベル3搭載の「レジェンド」が国交省の型式指定を取得

国土交通省とホンダは2020年11月11日、国土交通省が定めた自動運転レベル3の規制をクリアしたとして、「レジェンド」が国土交通省の型式指定を取得したことを発表しました。

国交省のプレスリリース

世界初を目指して

ホンダと国交省は「ホンダ」だけでなく、「レジェンド」という具体的な車名を明記してプレスリリースを発表するなど、異例なケースと言えます。

この理由は、日本では内閣府が主導する国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の中で、2014年から自動走行システムの開発を官民共同で開発や実証実験が行なわれており、このプロジェクトでは2020年に自動運転を実現することが目標とされていました。その成果が「レジェンド」に集約されているからといえます。

現行のレジェンド

「SIP」での成果や、国連での議論、調整を行なった結果としてWP29(国連日欧基準調和)に従い、日本政府、国交省は世界初のレベル3の自動運転のための保安基準「自動運転(正式名称:自動運行装置)」を策定し、2020年4月1日に法的に発効。ホンダはその保安基準をいち早くパスして型式指定が行なわれました。

今回認可を取得したレベル3のシステム「自動運行装置(名称はTraffic Jam Pilot:トラフィック・ジャム・パイロット)」を搭載するレジェンドは、今年度中に発売される予定と発表されていますが、具体的には2021年1月~2月頃と予想されています。

しかし、時系列的にはレベル3の自動運転の保安基準を決定したのは日本が最初ですが、その直後にドイツ、アメリカも同様の保安基準法規を発効させており、少なくとも日本、ドイツ、アメリカの高速道路においてはレベル3の自動運転が可能という法的な準備は整えられています。

そのため、ドイツでは2020年の12月に販売が開始される新型メルセデス・ベンツ Sクラスも2021年1月頃からレベル3の自動運転システムを搭載可能すると発表されており、アメリカでも複数の自動車メーカーがスタンバイしていると考えられ、先陣争いの状態になっています。

法的な条件と仕様

国交省のレベル3自動運転(自動運行装置)は、特定条件下においてシステムが運転を行ない、条件を外れた場合など作動継続が困難な場合は、ドライバーに適切に運転が引き継がれることとされています。

具体的には、高速道路本線上での渋滞時での自動運転が想定されており、そのため「トラフィック・ジャム・パイロット」という別称が採用されています。

想定されている道路は、高速自動車道、都市高速道路とそれに接続される自動車専用道路で、高速道路でも中央分離帯のない区間、急カーブ区間、サービスエリア、パーキングエリア、料金所周辺は除外されます。

さらに天候条件は、強い雨や降雪による悪天候、視界が著しく悪い濃霧、日差しの強い逆光の時などはシステムが停止されます。交通条件としては、自車が走行中の車線が渋滞あるいは渋滞に近い混雑状況であるとともに、前走車や後続車が自車線中心付近を走行していることが求められます。

また車両側では、自車の速度が自動運行装置の作動開始前は約30km/h未満、作動開始後は約50km/h以下であること、同時に高精度地図と全球測位衛星システム(GNSS(Global Navigation Satellite System))による位置情報が正しく入手できていること、ドライバーが正しい姿勢でシーベルトを装着していることなどが求められます。

これらの条件からはずれる、あるいは天候条件が悪化した場合は、運転は自動運転システムからドライバーにバトンタッチされ、もしドライバーがシステムからの移行に適切に対応しない、できない場合は、クルマは自動的に停止することになっています。

この他に通信に対する不正アクセスの防止策など、サイバーセキュリティの採用、車両の運転の記録システムも必要とされています。

記録装置は、自動運行装置のON/OFFの時刻、引継ぎ警報を開始した時刻、運転者が対応可能でない状態となった時刻などの記録を6ヶ月間分、あるいは2500回分記録できるようになっています。

自動運転車用の識別ステッカー

また、道路上で自動運転システムが稼動している状態で、一般の車両と混在することから、自動運転システム搭載車両は専用の識別ステッカーを装着し、一般車両から認知しやすくすることも求められます。

レベル2とレベル3の区別と誤解

今回のニュースに関して、ほとんどのTVニュースなどマスメディアでは、高速道路ではドライバーがアクセル、ブレーキ、ハンドルを操作しない手放しの運転が初めて実現するように伝えていますが、これは誤解です。

すでに手放し運転は実現されています。日産スカイラインのプロパイロット2.0、BMWのトラフィックジャム アシスト、スバルのアイサイトXは、いずれも一定の条件化でドライバーがアクセル、ブレーキ、ハンドルを操作しない手放しの運転も可能になっています。またアメリカのテスラのオートパイロットも同様のシステムです。

これらのシステムは高度運転支援システム(ADAS)を採り入れたレベル2のシステムであり、ドライバーがペダル、ハンドルを操作をしない状態で走行していても、ドライバーには交通環境システムを常時監視している義務があるのです。

これに対しレベル3の自動運転状態は、ドライバーは交通環境システムの監視義務がなく、スマートフォンやTV、動画を見る、メールを表示したり送信するなどの行為、つまり交通環境の監視から視線をはずして別の行動(セカンド タスク)が許される点がレベル2とは大きく異なる特徴です。

しかしながら、レベル3の自動運転システムは、システムでの運転が困難な状況では、警報が表示され、ドライバーは運転を引き継ぐ必要があるため、シートバックを倒して眠るなど、運転姿勢を大きく変えるなどの行為は許されていません。

また法規のように、自動運転が作動するのは高速道路や自動車専用道路で渋滞か、渋滞に近い低速走行時に限定されるため、既存のレベル2のシステムから極端に異次元のに変わるというほどではないことも理解できます。

レジェンドのシステム

現時点では、レベル3のシステムを搭載するレジェンドの詳細な仕様は発表されていませんが、写真のように2014年ラスベガスITS国際会議で発表されているシステムを、より洗練させたものと推測されます。

2014年当時のホンダが発表した自動運転システムの構成

GPS/準天頂衛星、高精度3次元デジタル地図による自車位置の検出と、ロングレンジ、ショートレンジ/広角のミリ波レーダー、カメラ、LiDAR(ライダー:レーザー光式の物体検出システム)などがセンサーとして採用されているはずです。

こうして見ると、レベル2の高度運転システムのシステムにセンサーとしてLiDARを追加しただけのように見えますが、レベル3ではAIを格納したECUによる認知、判断、操作を行なうことをはじめ、電源喪失用のバックアップ システム、故障や異常が発生した時でも安全に操作して停止できるフェイラー オペラビリティ(失陥時の操縦性の確保)、そして、より高精度なドライバーモニタリング システムなどが求められるなど、判断能力や多重操作性、ロバスト性が大幅に高められているはずです。

実は、このレベル3の自動運転システムを搭載したレジェンドは、2020年7月頃に、東京オリンピック/パラリンピックの開催に合わせて公道を走行するなどでお披露目される予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で半年ほどスケジュールが遅れたというわけです。

なお日本ではレジェンドに続いて、マイナーチェンジ予定のレクサスLSもレベル3自動運転の型式指定を受けて登場すると予想されています。

*関連記事:【世界初】自動運転が正式に解禁

国交省 公式サイト

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