2014年12月に発売されたホンダのコンパクトセダン、グレイス・ハイブリッドを改めて試乗してみた。詳細はこちらで解説しているので、詳しいデータはリンク先記事を参照してほしい。<レポート:髙橋 明/Akira Takahashi>
グレイスは、フィットと同じプラットフォームを使い、ボディサイズは全長4400mm×全幅1695㎜×全高1475㎜(4WD:1500㎜)、ホイールベース2600㎜で、5ナンバーのB/Cセグメントのセダンとしてデビューした。インドやタイでは「シティ・セダン」のネーミングで販売されており、2014年末、国内にはグレイスの名前でハイブリッドのみの販売が始まった。しかし、2015年6月には1.5L+CVTのガソリンモデルも国内販売が始まり、ラインアップは拡大した。
エクステリアはセダンとしてまとまったデザインで、フィットと兄弟車であることを感じさせない大きさと、雰囲気を持っている。真横から見てもセダンらしいルックスとAピラーからルーフ、Cピラー、テールへと流れるラインは美しい。
インテリアはこのクラスには珍しくレザーシートが設定され、高級な印象がある。全体に外観と同様落ち着いたインテリアデザインにまとめられ、年配者らの印象もいいだろう。メーターもハイブリッド車でありながら、情報過多にならず上手に整理されている。しかしタコメーターだけは視認しにくく、イメージをつかむ程度の見せ方になっている。ハイブリッドだけに、「エンジン回転を気にするな」ということなのかもしれない。
センタークラスターはナビや空調部はタッチパネルがメインで採用されている。実はこの操作系は使いにくかった。まず、利き手とは逆の左手で操作するので、ミスタッチが多いことと、レスポンスもイマイチよくない。以前カローラの試乗レポートでも書いたが、走行中に操作する空調やラジオ、オーディオのチャンネル切り替え、ボリュームなどはわかりやすさと誤操作の起きにくいインターフェイスが望ましい。事故に結びつくこともあり、つまらないことでリスクは増やしたくない。カローラはこのあたりの研究もしっかりされていて、アナログ操作とタッチパネルをうまく組み合わせているのだ。
それとシフトのPポジションが分かりにくかった。地下の駐車場など少し暗い所に入ると、まったく見えない。ポジションランプをつけても明るいところから急に暗くなるので、目が慣れるまでPが見つからないということを経験した。人間の研究ということなのか、すこし実用的ではない部分があった。
走りだすと、静粛性はよくクラス以上の静かさがあると思う。風切音も聞こえないし、フロアからのノイズも気にならない。乗り心地では入力は丸くコンパクトセダンとしては、レベルの高い乗り心地だと思う。ただ、もう少ししっとりとしたものがあってもいいのではないか、と感じた。そして欧州車のような、包まれた感じとか、ボディ剛性の高さをなんとなく感じる、しっかり感のようなフィールも欲しい。
エンジンは、1.5Lのガソリンエンジンにモーター内蔵の7速DCTと組み合わせたi-DCDハイブリッドシステムだ。フィットのデビュー時にも書いたがDCTをチョイスする意味は、良くわからないままだ。確かに発進からシフトアップしていくときは素早く気持ちよくシフトアップする。しかし、ダウンシフトも含めて、ドライバーの意図とは関係なくバッテリーの充電状況によって、エンジンの回転数が変わることもある。それに伴いギヤも自動で選択されるため「勝手にギヤが変わってエンジン回転があがる」という状況を経験する。もちろん、車速には変化はない。
ドライバビリティというものとは違う、制御の世界を体験してしまうのは、あまり先進的とはとらえにくい。だから、グレイスを滑らかにスムーズに走らせるには少しコツが必要なる。スロットルの開け方とリニアに加速するという動きはドライバーが意識して作る必要があり、ハードの技術と並行して制御技術の熟成も必要に感じた。つまり、ハイブリッドシステムを滑らかに、高級車のようにしなやかに動かすのは制御で作れるだろう、という意味だ。
操舵フィールとしては、ステアリングのセンターの座りはわかりやすいが、もっとはっきりしてもいいと思う。応答性は期待値に近く素直な印象。ただ、パワーユニットとのマッチングなのか、力強さを感じる場面がなく、トルクフルに感じないのが残念だ。特に高速で追い越し加速をすると、エンジンが唸ってしまいトルク感のない加速に感じてしまうからだ。
まとめるとインテリア、エクステリアデザインは大人な感じで好ましいものの、操作系にやや難がある。走行性能では静かで乗り心地もよいが、もう少ししっとりとしたものがあると、ひとクラス上が狙える。パワーユニットでは、上質感や滑らかさなどフィールに係るところの熟成を期待したい、という印象の試乗だった。
ガソリンモデルには試乗していないが、少なくともパワーユニットに関してはハイブリッドとは異なり、熟成の領域にある1.5L+CVTとの組み合わせだけに、そのあたりの満足度は高そうだ。機会をみてレポートしてみたい。