2014年12月1日、ホンダは新ブランドとなるコンパクトサイズのハイブリッドセダン、グレイスを発表した。アッパーミドルセダン風な堂々としたデザイン、広い室内を5ナンバー枠のサイズにまとめ、最新のi-DCDハイブリッドを搭載している。
ホンダの商品ラインアップの中で、これまで空白となっていたセダンのカテゴリーには2013年6月にアッパーミドルクラスのアコードを投入。2014年11月にDセグメントのレジェンドを、そして今回のコンパクトクラスのグレイスをラインアップに加えることで、セダンシリーズがようやく完成したことになる。
現在はセダンというカテゴリーは減少傾向にあるが、年間47万台という市場は無視することはできない。さらにハイブリッド車に関しては人気拡大傾向を続けていることも重視され、グレイスが投入されたのだ。
グレイスは、すでにインド、タイではシティ・セダンの名称で販売されており、1.5LのNAエンジン、1.5Lのディーゼルエンジンをラインアップしている。しかし、日本のグレイスは1.5L+i-DCDのハイブリッドモデルのみ設定されている。グレードはベースモデルのDX、LX、最上級グレードのEXという3グレードで、助手席回転シートを持つ福祉車両も設定されている。また全グレードに4WDモデルも設定されている。
グレイスの開発コンセプトは、「コンパクトセダン・レボリューション」で、アッパーミドルクラスのセダンが持つ室内の広さと質感、堂々としたデザイン、そして基本性能が優れた走りを追求している。したがって、コンパクトクラスでありながら、フィット・ベースのパッケージング技術を使用し、クラスを超えた広さ、質感、走り、そしてハイブリッドによる優れた燃費、5ナンバーボディならではの取り回しの良さを実現するというものだ。
グレースのボディサイズは、全長4440mm×全幅1695mm×全高1475mm(4WD車は1475mm)、ホイールベース2600mm。もちろんセンタータンク・レイアウトとすることで後席の足元スペースも競合車を上回っている。またトランク容量も床下収納4Lを含み430Lを達成している。
インテリアは、ドライバーの心地よさ、後席の乗員も満足できる質感や装備を目指し、トリムの仕上げはソフトパッドや先進感の感じられるメーターデザインを採用している。後席用にはエアコンの吹き出し口や、スマートフォンなどの充電ができるソケットの装備などクラスの常識を超えた質感と装備としている。
エンジンは、アトキンソンサイクル運転の1.5L・4気筒エンジンと1モーター・デュアルクラッチ式のi-DCDを採用。これはフィット・ハイブリッド用のユニットと共通で、EV走行、エンジン走行、モーターアシスト、減速エネルギー回生が自動的に行なわれる。エンジンとモーターのシステム総合出力は137ps。JC08モード燃費は34.4km/L。グレイスはまたハイブリッドセダンとして初のビスカス式4WDも設定している。
ボディは軽量・高剛性とし、さらに室内の静粛性も大幅に向上している。EXグレードはフロントウインドウに遮音ガラスを採用し、吸音・遮音インシュレーターや、一体型フロアカーペットなどをきめ細かく配置することで室内の静粛性をクラストップレベルまで高めている。ボディ剛性は従来の計測方法に加え、新たにタイヤ接地点での剛性評価を行なうことで、シャシー部の剛性を向上している。
シャシーは、スポーティ感と上質感の両立を目指して新開発されている。ストラット式フロントサスペンションはキャスター角とトレール量を増大。横力に対してトーアウト特性を強めている。また、入力分離式ダンパーマウントを採用。低フリクション・スタビライザーリンクなども採用している。リヤは軽量・高剛性の新H型トーションビーム式を採用し、従来よりロールセンターを高め、ダンパーのシリンダー径の増大、高剛性ハブベアリング、液体封入式ブッシュの採用など、横剛性を向上させ、同時に乗り心地も向上させている。
電動パワーステアリングはコラムシャフト径のアップ、サブフレームへのラックギヤの取り付けをリジッド化することにより、質感の高いステアリング・フィーリングを目指している。
ブレーキは電動サーボ式で、減速回生との協調制御を行ない、自然で安心感のあるフィーリングに。もちろんVSA(横滑り防止システム)、ヒルスタートシステム、衝突回避・被害軽減ブレーキはEXグレードに標準装備とし、他のグレードにはオプション設定されている。
新登場のセダン、グレイスはセダンのラインアップのベースを受け持つ5ナンバーモデルだが、2014年4月に生産を終了したインサイトを受け継ぐクルマでもある。またマーケットでは、トヨタ・プリウスに対抗する役割も与えられており、ホンダにとってはきわめて重要な任務を背負っている。