2011年10月27日、ホンダは5ナンバーサイズ・トールミニバンのフリードとフリード スパイクをマイナーチェンジし、新たにハイブリッドモデルを追加して発売した。またフリードは今回、3列目シートをこれまでの3名乗車から2名乗車に全タイプ変更し、1人当たりのシートスペースを拡大している。
したがってフリードの定員は1名ずつ少ない6人乗り、または7人乗りとなった。フリード スパイクは従来通りの5人乗りで、セカンドシートはベンチシートとなっている。さらに従来は「G」と「Gエアロ」というグレード展開だったが、今回のマイナーチェンジでトップグレードとしてハイブリッドを追加。また新開発の電動ウインチを装備した車イス仕様も11月25日から発売する。
フリードの3列目シートの変更は、フロントシートからウォークスルーできることや、3列目シートの格納性を向上させることで、使いやすさを重視したものになっている。また全モデルにVSA(車両挙動安定化制御システム)、ヒルスタートアシスト、ECONディスプレー、3点式ELRシートベルトを標準装備している。
エクステリアではフロントグリル、リヤコンビネーションランプ周りのデザインが変更されている。また、搭載されるエンジンは従来と同じく、1.5Lのi-VTEC(L15A型)にCVTという組み合わせで、燃費は10.15モードで17.0km/L、JC08モードで16.6km/Lだ。
新たに追加されたハイブリッドは、1.5Lのi-VTEC(LEA型)とモーターを組み合わせたタイプで、ホンダ車のこれまでと同じIMA(インテグレーテッドモーターアシスト)システムである。搭載されるエンジンはCR-Z用のLEA型1.5Lの4バルブエンジンだが、フリード系に搭載されるLEA型は同じ型式ながら、2バルブ/ツインプラグの仕様である。また、1.3Lではなく1.5 Lエンジンが選ばれたのは、フリード系の車重がミニバンのため重いからだ。
このエンジンは圧縮比10.8で88ps、132Nmの出力。メカニズム的には運転中の気筒休止を行い、停止中はアイドルストップ状態となる。このエンジンに組み合わされるMF6型モーターは14ps、78Nmで、他のハイブリッド車と共通である。ただし、フリード系のハイブリッドモデルは最終減速比を4.9に低めている。
またリヤのフロア下に格納されるIPU(ニッケル水素電池とパワーコントロールユニット)も他のシリーズと共通となっている。燃費は、10・15モードで24.0km/L、JC08モードで21.6km/L。もちろん5ナンバーミニバンではトップの燃費になる。
フリード系にハイブリッドシステムを搭載するにあたり、これまでのスペースユーティリティやラゲッジ積載性をスポイルしないことが重視され、電池とコントロールユニットは完全にフロア下面に格納されている。この結果、3列目シートのフロア高さは65mmアップしたものの、シートブラケットを短縮することで吸収できている。乗員のヒップポイントや居住スペースはもちろん、ラゲッジスペースも従来通りになっているのはセンター燃料タンクレイアウトのおかげと言えるだろう。
ハイブリッドモデルのシャシーは、リヤのキャンバー角とトレッドを拡大することで旋回時の安定性を向上させ、フロント/リヤともにダンパーを専用チューニングしている。同時にリヤはIPU(インテリジェント・パワー・ユニット)を搭載しているため、左右のリヤダンパー間をクロスメンバーとガセットで補強し、リヤホイールハウスのサス取り付け部の剛性を高めている。また、低燃費化のためにフロントブレーキキャリパーにパッドリターンスプリングを設置して引きずりを防ぎ、さらに転がり抵抗の低いタイヤを採用している。
ハイブリッドモデルは最上級モデルとなるため、専用の遮音材や吸音材に加え、遮音フロントガラスも採用して静粛性を高めている。
なおホンダのハイブリッドモデルは、今回のフリードとフリード スパイクを投入することで、国内で6車種をラインアップすることになり、2011年の1?9月実績ですでにハイブリッド車は33%となっている。年内には軽自動車を除く販売でその比率が50%を超えると見込んでいる。
ガソリン価格の高止まり、燃費重視のユーザー指向などを追い風に、拡張性の高いIMA(パラレル)タイプのハイブリッドシステムのメリットを最大限に活用し、ホンダは最もハイブリッド比率の高いメーカーの座を確保しつつあるのだ。