【ホンダ】新型フィット・ハイブリッド&1.3L試乗記 グローバルでも闘える上質感のある乗り心地 レポート:高橋 明

マニアック評価vol223

9月に発売された3代目ホンダ・フィット。今回はハイブリッド(写真)と13Gに試乗した

新型フィットの公道試乗会があり、参加してきた。試乗したのは話題のハイブリッドと、1.3Lエンジンを搭載する13Gで、横浜の市街地、首都高速での試乗となった。

新型フィットはまだ発売間もないが、人気が集中しているのはハイブリッドモデルだ(なおハイブリッドは2013年12月発売)。販売台数全体の73%にも達するのだ。一方のガソリンモデルは1.3LのFパッケージとLパッケージでガソリン車全体の80%以上を占めている、というのがフィットの受注状況。今後はもっと、ガソリン車の販売が増えてくるとは思うが、ハイブリッドの人気の高さがよくわかる。

■パワーユニットはハイブリッドを含んで3種類

1.5Lアトキンソンサイクルガソリンエンジン&モーターのパワーユニット搭載のハイブリッド

最初に試乗したのは、新規のハイブリッドi-DCD。Fパッケージ・グレードでハイブリッド専用デザインのホイールキャップを装着している。タイヤサイズは185/60-15でスチールホイール。アルミホイールはオプションというグレードだ。ここまでの受注状況ではFパッケージ36.1%、Lパッケージ43.7%、そしてSパッケージが18.5%。最も高級なSグレードよりFパッケージ、Lパッケージが人気というのもユーザーの熟慮具合が伺える。

新型フィットの特長はダイナミックでスポーティなエクステリアデザインに、コンパクトなのに圧倒的な居住空間を持つスペース効率の高いキャビン、そして優れた燃費性能と気持ちの良い走りというのがポイントになる。ボディサイズは先代より全長で+55mm長くなり3955mm。全幅1695mm、全高1525mm、ホイールベースは2530mmで+30mmになっている。

搭載するユニットもすべて新規設計され、13Gグレードには1.3Lのアトキンソンサイクルのガソリンエンジンi-VTEC DOHCに5MTとCVTの組み合わせでFFと4WDがある。15Xは1.5Lの直噴エンジンi-VTECにCVTが組み合わされ同様にFFと4WDを設定。さらに同じ1.5Lエンジンで6MTとCVT搭載モデルのRSがある。そして1.5Lアトキンソン+モーターというハイブリッドの3つのユニットがある。トランスミッションはモーター内蔵7速DCTである。ちなみに、RSとハイブリッドはFFのみの設定となっている。

 

■上質な乗り心地と格段に向上したハンドリングに驚く

ハイブリッド車に乗り込んで最初に感じたのは、上質な乗り心地だった。しっとりとした走りで、路面からの入力がソフトでしなやかに感じる。それは静粛性の高さも影響し、クラスを超えるレベルだと思う。このような乗り心地のしっとり感や上質感では、ダンパーのチューニングなどさまざまな改良があげられる。これはフィット全体に関わる開発コンセプトだが、「スムース&アジャイル」滑らかかつ俊敏を狙っている。リヤのトーションビームは踏襲するものの、ビーム自体が変更され、サプライヤーであるドイツ・ベンテラー社のビームが採用されている。

これは、ビーム断面がクラッシュドパイプと呼ばれる形状で、通常のコの字断面とは大きく異なる。これによりスタビ効果が高まるため、リヤのスタビライザーは配されていない。また、ダンパーも入力分離式という新しい方式を採用し、大入力時は路面からの入力をそのままボディへ伝え、マウントラバーへは入力しないようにし、その一方で微小な振動入力はマウントラバーが吸収する仕組みだ。その結果、設計自由度があがり、小・中入力に最適なマウント特性を実現でき、乗り心地の向上に繋がっている。また、トーションビーム本体やトレーリングアーム自体の剛性をアップし、旋回時のリヤの応答遅れを回避し、ドライバーの期待値通りのリニアな特性となるようにしている。

フロントもキャスタートレールを約10mm増大させ、直進時、および旋回時の安定性をアップ。ダンパー特性の最適化、スタビライザーの大径化&中空化、軽量サブフレームの採用などにより、操舵フィールはクラスを超えたレベルに引き上げている。

ステアリングフィールが向上し、路面からのインフォメーションがより感じられるようになっている

これらの改良により、ハンドルの操舵フィールが飛躍的に向上している。操舵感は軽いが、きちんと反力が伝わるので、安心感がある。そして路面からの振動やショックなどは上手く消されていて、上質なフィールが手に残るのだ。これは、ステアリングギヤボックスをサブフレームにダイレクトマウントすることや、電動のパワーステアリングをブラシレスの大容量モーターを採用、また、ステアリングコラムポストを大径化するなどの改良が加えられたことによる、上質感への変化が感じられるわけだ。

DCTを持つハイブリッドユニットは、EVで走りだす。途中、EV走行、ハイブリッド走行、エンジン走行が自動で切り替わり、インジケーターを見ていないと、どのモードなのか?理解しにくい。ただ、気をつけて細かく見ていくと「なるほど」と合点のいくシーンもあり、ハイブリッド車を楽しめることになる。

試乗したハイブリッドはフロアシフトのみ
EV、ハイブリッド、エンジンの3モードで走る

また、試乗車にはパドルシフトがなく、フロアシフトのみだった。ミッションはDCTだがギヤ選択ができず、シフトレバーには強回生を意味する「L」モードだけで、ドライバーが意図したギヤを使って走行するモードはない。パドルシフトが付いている場合はどうなのだろうか?このことからも、今回のDCTは燃費の効率を上げるために、最適なエンジン領域、モーター領域を引き出すための減速機という性格が強いと感じた。

■1.3Lグレードは加速時のリニア感がアップした

1.3Lアトキンソンサイクル・エンジン搭載の13G。アイドルストップ搭載で2代目ハイブリッド同等の燃費をマーク

一方、13Gの試乗は人気のLパッケージだった。新規に開発された1.3LはDOHC化され、アトキンソンサイクル運転をするにもかかわらず100ps/119Nmという高出力を持っている。圧縮比も13.5でマツダ・スカイアクティブを上回った。燃費はJC08モードで26.0km/Lで2代目フィットハイブリッドと同等になっている。

新規のCVTはG-Design Shiftという考え方が導入され、アクセル開度に対し、Gの立ち上がりを早め、盛り上げ、長く維持するように制御している。そのためダウンシフトでのレスポンスも速く、また加速のときにもエンジン回転と車速の関係がリニア感のあるものになっていた。

アイドリングストップ付きの13Gは、信号で停止するたびに機能している。通常アイドルストップ車は始動用のバッテリーを搭載している場合が多いが、13Gはバッテリーではなくアイドルストップ専用のキャパシタをリヤトランク下部に搭載している。このキャパシタはクルマのライフタイムと同様で、定期交換不要というものユーザーにはありがたい。

アイドルストップ機構を持つ13G。専用キャパシターをトランクルーム下部に装備する
試乗は横浜周辺の市街地と首都高速で行なった。

 

今回試乗した13G、ハイブリッドに共通しているのはボディ剛性の高さと乗り心地の上質さ、ハンドリングの正確さがあげられる。これらの性能は強力なライバルである欧州Bセグメントと競合するモデルには必須の性能と言える。したがって、今回の3代目フィットはモデル全体のレベルがアップしたことを印象付けるものだった。

■ホンダ・フィット主要諸元

■ホンダ・フィット価格表


ホンダ公式サイト

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