アルティメット スポーツ2.0。究極のスポーツカーを開発コンセプトに据えたシビックType-R。2.0L世界最速のFFをルノー・メガーヌ、フォルクスワーゲンゴルフと競って開発されている。
開発責任者は先代のType-Rを担当した柿沼秀樹氏が継続してLPLを担当。自身もスーパー耐久レースに先代のType-Rで出場しており、2022年11月に開催されるスーパー耐久の最終戦5時間レースには、新型のこのType-Rで出場するという。
さて、このマニア垂涎のType-Rに大分県日田市にあるオートポリス・サーキットと阿蘇の外輪山を周遊するやまなみハイウエイやミルクロードの公道でも試乗できたのでお伝えしよう。
サーキットでは制限なしのフルアタックができる環境で、ホンダが開発したスマホ用アプリ「Honda LOG R」と連動させて走行した。新型Type-Rの詳細スペックは既報しているので、参考にしてほしい。
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https://autoprove.net/japanese-car/honda/civic/211105/
ドライブモードは+Rモードが推奨された。コースインして最初に感じるのはエンジンの軽い吹け上がりの気持ちよさとサウンドの良さだ。7000rpmまであっという間に吹け上がり、F-1のインジケーターのようなデザインのメーターではイエローランプからレッドランプの点灯という、気分が盛り上がるグラフィックのメーターが目に飛び込む。
シフトフィールもシャキっと決まり、感触は最高だ。265-30/19というFFとは思えない極太のタイヤを装着しているが、操舵は軽く路面のインフォメーションも正確に伝わってくる。サスペンションは路面にあるギャップを乗り越えても姿勢が乱れることがなく、安定した走行ができ安心感がある。
そして体の収まりのいいバケットシートにも驚く。まるでサーキット走行専用シートではないかというほどで、3点式シートベルトが見た目では不釣り合いに感じるほどだ。コースレイアウトの確認をしたあとストレートを2本走ったが、気持ちよさと楽しさでワクワクが止まらない。何周でも走りたい衝動が湧き上がる。
最高速度も180km/hのリミッターが解除されており212km/h程度までは確認できた。これは国内の主要なサーキットでは速度リミッターが解除される仕様になっており、LOG Rアプリを使って自身の走行データが取れるようになっているのだ。
このロガーデータは走行時に自身のスマホで撮影した動画と連動させることも可能で、タイヤの摩擦円、ブレーキングやコーナリングGのデータなどが数字やグラフィックで表示させることができる。動画を見ながら「ここはもう少しブレーキを遅らせることができる」とか「ラインをアウトにとったほうが旋回Gが増す」などといった分析できる情報があるのだ。
さらに、このデータを公開することも可能で、世界中のType-Rオーナーとの比較もできる「VS」機能もある。気になるドライバーがいれば仮想の勝負も可能というわけだ。つまり、走行後のシミュレーターとしても使えるわけで、ドライビングスキルアップのトレーニングには最適なツールと言える。ちなみに無料でダウンロードでき、車両に乗り込むと自動判定して自分のスマホとリンクできるようになっていた。
さて、330ps/430NmのパワフルなVTECターボエンジンと6速マニュアルミッションは官能的なサウンドと排気サウンドをアクティブサウンドコントロールで作り込まれている。そして車両の制御系も素晴らしく、多少のドライビングエラーでは制御はされず、人間がコントロールできるようになっている点でも扱いやすい。
さらに限界超えてしまうようなドライビングエラーでは制御が働くが、クルマの姿勢自体に大きな挙動変化がなく、すぐにタイムアタックに復帰できるレベルにコントロールされている。新型シビックType-Rの最大の特徴は、サーキット走行をしなやかに、そしてなめらかに走れることだと感じた。サーキットをスポーツ走行するとガタピシと硬く締め上げた車両が多い中、全ての稼働パーツがなめらかに動くことに感動した。
公道でもしなやかに
これだけサーキットを視野にいれた量産スポーツカーも珍しく、果たして一般公道ではどうなのだろうか。
阿蘇外輪山周遊道路は信号も少なく、交通量も少ない気持ちの良いドライブルートが豊富にある。オートバイのツーリングの聖地とも言われているようで、心地よい道路と景色と風を感じることができる場所だ。
オートポリスサーキットを後にしてミルクロードを目指すが、極低速ではやはりヒョコヒョコとした動きになる。これは高性能車の証拠とも言え、逆に気分は盛り上がる。レーシーなフルバケットシートも違和感なく座り心地も良い。
ステアリングはサーキットと同様に軽めに感じられ好印象だ。エアボリュームの少ないタイヤとは言え、硬いと感じる乗り心地ではなく、引き締まった乗り心地だと感じられるのだ。ドライブモードではエコはなく、コンフォートモードで走行する。エンジン音も静かで低回転域のトルクもあるので40km/h〜60km/hの速度規制も普通に走行できる。
車両スペックからは相当なヤンチャ感があるものの、実用的に乗ることも可能なレベルだ。ヒョコヒョコした動きも40km/hも出ればダンパーがしなやかにいなし始め、乗り心地に滑らかさが加わり始めるのだ。この滑らかさとしなやかさがサーキットでも公道でも表現できているレベルは素晴らしい。
このようにシビックType-Rはタイムアタックをするマシンとして、最高レベルに昇華し、かつ公道をしなやかに、スムースにも走行できるアルティメット・スポーツであることが理解できた。スポーツドライビングカーとしての熟成領域であるとも感じ、ドライビングマニア垂涎という言葉がぴったりと当てはまるモデルということだ。