2013年6月20日、ホンダは新世代のスポーツ・ハイブリッド「i-MMD」を搭載した9代目「アコード」を発表し、6月21日から発売する。上質な走りを追求した上級セダンであると同時に、新開発されたハイブリッドシステムにより30km/L(JC08モード)を達成している。グレードはフル装備のEXとベースグレードのLXの2機種。
初代アコードは1976年に登場し、ホンダの上級セダンのポジションを確立。今回デビューしたモデルは9代目となる。しかし、1990年代後半、5代目からアコードはアメリカ市場がメインマーケットになり、6代目からはフレキシブル・プラットフォームを採用し日本市場向け、ヨーロッパ市場向け、アメリカ向けと作り分けるようになっている。また日本ではセダン・マーケットの縮小傾向が加速し、日本にけるアコードの存在感が薄れていた。
今回デビューした9代目アコードは、これまでのクルマ作りを変更しグローバル・モデルと再定義し、世界共通化を図っている。もちろんアコードはホンダ・ブランドにおける最上級モデルという位置付けは不変である。搭載するエンジンは、アメリカ向けは2.4L・直4と3.5L・V6がメインとされ、2.0Lエンジン/i-MMdを採用したプラグイン・ハイブリッドモデルもラインアップされている。一方で、日本市場向けにはハイブリッド・モデルだけに絞り込んで投入することにしている。また、アコード・ハイブリッドをベースに、外部充電ができる「プラグイン ハイブリッド」は、法人企業や官公庁などを中心に、6月21日からリース販売する。このプラグイン・モデルの燃費は70.4km/L(JC08モード)を達成している。
エクステリアは、上級セダンらしい端正な正統派3ボックスとしフォーマルさとモダンさを両立させたデザインを採用。先進性の象徴としてプロジェクター式LEDヘッドライトを新採用している。サイドビューではインバース(逆)プレスを使用した上下2本のラインを入れることで、立体感と安定感を表現し、その一方でフェンダー部を張り出させることでダイナミックな印象も付け加えている。
平面視でBピラー部分を張り出させた「バレル(樽形)シェイプ」とし、前後セクションの絞り込みを加えることで、キャビンの居住スペースと空力性能を高めている。この平面パッケージングの結果、左右にワイドなスペースを持つフロントシートとリヤシートの着座位置をやや狭めたV字シートポジションレイアウトにより、前席は広々感があり、後席は前方視界を拡げることで快適性を高めているという。
なおボディサイズは、全長4912mm(+185mm)、ホイールベース2775mm(+70mm)と延長しながら、全幅1850mmは従来モデルと変更なし。
インテリアは、ボディサイズの変更により前後席のスペースを拡大し、さらにバレルシェイプ・デザインにより室内左右幅が40mm拡げられたことで居住快適性を向上。インテリアの素材はソフトパッドをダッシュボードやドアライニングに採用。艤装は、革、木、布などをデザインイメージし、木目調パネル、本革風の革シボ、メッキパネルなどを組み合わせている。
シートはラグジュアリーさを表現するために柔らかな表面の感触とホールド性を意識したラウンド形状のシートバックを組み合わせ、フォーマルセダンにふさわしい雰囲気を作り出している。
ダッシュボードは水平基調のゾーニングにより、落ち着いた雰囲気を演出する。メーターはスピードメーターとマルチインフォメーション・ディスプレイとし、タコメーターはない。またナビのディスプレイは8インチサイズ、オーディオはスイッチの代わりに5.8インチの液晶タッチスクリーン式を採用し、オーディオ、ナビ、空調などを操作できるようにしている。
ボディは新開発の骨格を採用し、高張力鋼板の使用比率を58%にまで拡大するなど軽量化と高剛性化を図っている。従来モデルとの比較では曲げ剛性が36%、ねじり剛性が53%向上しているという。特に、フロントの平面曲げ剛性を29%向上、リヤの上下曲げ剛性を25%、リヤ平面曲げ剛性を46%、リヤねじり剛性を70%向上させ、コーナリングでの落ち着き、サスペンションの正確さを向上させている。
またフロント・サブフレームは新開発のアルミ製を採用。これは今まで一般的であったアルミ鋳造製ではなく、アルミ板金製で、骨格部への適合は世界初となるアルミ板の摩擦攪拌接合工法を用いて製造されている。
新型アコードは上級セダンにふさわしい静粛性の向上も追求され、フロントガラスは遮音ガラス、吸音インナーフェンダーカバー、3重ダッシュインシュレーターなどを採用している。さらに、室内騒音を大幅に低減するため、こもり騒音として逆位相の音をオーディオスピーカーから発生させるアクティブサウンドコントロールを装備している。
搭載されるハイブリッド・パワーユニットは、新開発の2.0L・DOHC16バルブVTECエンジン「LFA型」が採用されている。このエンジンは、発電、バッテリーへの充電、高速巡航時には駆動を担当する役割を持ち、エンジンの高効率の条件下で使用するようになっている。VTEC機構は吸気遅閉じのアトキンソンサイクル(高膨張比運転)をカバーするFE(燃費)カムと、HP(高出力)カムを切り替えて使用し、FEカムは4500rpmまで担当し、HPカムは6300rpmまで回り、カムの切り替えは4300~4500rpmあたりで行われる。
また電動可変バルブタイミング機構も同時作動させ、FEカム時にはアトキンソンサイクルを作り出し、HPカム時には出力を引き出す役割を果たす。
このエンジンはレギュラーガソリン使用で圧縮比13.0。電動ウォーターポンプを備え、補機ベルトレスとしている。また本格的な水冷EGRクーラーも装備している。出力は143ps/6200rpm、最大トルク165Nm/3500-6000rpmで、ハイブリッド専用エンジンとしてはリッターあたり出力、熱効率ともに世界トップレベルだ。
モーターは、169ps(124kW)、307Nmというエンジン出力を上回る大出力の駆動用モーターと発電用ジェネレーターという2モーター式とし、システム総合出力は199ps。ちなみにプリウス用の駆動用モーターは60kWで、アコード用のモーターはその2倍の出力となっている。このような高出力モーターのため、発電ジェネレーター、駆動用モーターともに油冷式としている。またバッテリーはリチウムイオン式で容量は1.3kWh(プラグイン仕様は6.7kWh)。駆動用モーターは700Vという高い電圧が使用される。
走行モードは、バッテリーの電力のみで走行するEVモード、エンジンで発電し駆動用モーターを駆動するシリーズ・ハイブリッドモード、エンジン走行モードを切り替えながら走行する。エンジン走行モード時にのみ湿式多板クラッチが接続され、エンジン動力が減速ギヤを介しファイナルギヤに伝達される。
高出力密度を持つ新開発のリチウムイオン電池(ブルーエナジー社製)、700Vという高電圧による高出力モーターにより、強力な加速トルクが得られ、従来のハイブリッド車のイメージを覆す動力性能が実現しているという。
なおハイブリッドシステムの概要は既報の記事を参照されたい。
新型アコードのサスペンションは、フロントは従来のダブルウィッシュボーン式から新開発のストラット式に改め、リヤはダブルウィッシュボーン式としている。フロントのストラットはリバウンドスプリング内蔵式とし、前後のダンパーは振幅感応型としている。これはストロークの小さなときにだけ開くストローク感応式の専用バルブを備えたもので、初動では柔らかく、大きなストロークでは正確に減衰力を発揮するもの。
ブレーキは、ハイブリッドシステムに最適な新開発の電動サーボブレーキを採用している。
このシステムはブレーキバイワイヤーで、操作感を作るペダル操作部(シミュレーター)と、ブラシレスモーターにより正確にブレーキ油圧を発生させるメイン作動部を電気的に結合したものだ。このブレーキの採用により回生ブレーキの領域を最大限に拡大し従来の油圧式より8%回生率を高め、同時に自然なブレーキフィーリングを両立させている。
なおACC(アクティブクルーズコントロール)作動時には、電動ブレーキと協調制御することで回生ブレーキを多用した車間距離調整が実現している。
ステアリングは電動パワーステアで、ESPと協調しアンダーステアの場合は切り足す方向へ、オーバーステアの場合はカウンターステアを行いやすくトルク変動するアダプティブ制御を備える。
また、衝突軽減ブレーキとして従来からのレーダー式CMBSを改良した進化型をEXグレードに採用。これまでは15km/h以上での作動域を、今回から5km/h以上とより低速化し、追突軽減ブレーキを実現している。またこのシステムは前走車だけではなく対向車にも対応する。
またEXは、アダプティブクルーズコントロール(ACC)、カメラを使用したレーンキープ・アシストを装備している。
正統派の上級セダンにハイブリッドシステムを組み合わせ、爽快な走りと高い燃費性能を両立させた新型アコードは、縮小傾向が続く日本のマーケットでどのようにポジションを得るか興味深い。