2015年1月29日、イギリスのマクラーレンF1チームは2015年のF1グランプリに出場する新型マシン、マクラーレン・ホンダ「MP4-30」の画像を初公開した。このマシンのステアリングを握るのはフェルナンド・アロンソ、ジェンソン・バトンの両ドライバーだ。
2015年のF1は、昨年と同様に1.5L・V6のダウンサイジング・エンジンに、減速エネルギー回生システム(KERS)、つまりモーター・ジェネレーターユニット「MGU-K」と、エンジンの発生する熱エネルギーを回生するシステム、ターボチャージャーと連結された専用のモーター・ジェネレーターユニット「MGU-H」を採用している。これは世界耐久選手権(WEC)でポルシェ919が採用しているシステムと同じハイブリッドシステムだ。
規則では減速エネルギー回生、MGU-Kはエネルギーの使用量に制限がある。最高回転数は5万rpm、最高出力は120kW(約160ps)で、1周あたりにバッテリーに蓄えられるエネルギー量は2MJ(メガジュール)、バッテリーに蓄えた電力を使用してMGU-Kが1周あたりに放出できるエネルギー量は4MJとなっている。
一方、MGU-Hは無制限のため、MGU-Hで発電した電力をクランクシャフトと結合されたMGU-Kに送れば、MGU-Kに課された制限に縛られることなく160psのブースト効果が得られる。そのため、MGU-Hをいかに有効に活用でき、効率よく機能させるかが重要で、ターボと直結されたMGU-Hからより大きな電力を引き出すことがF1エンジンシステムの鍵となっている。
また、エンジン、MGU-K、MGU-Hというハイブリッドシステムを統合制御するのがERS(Energy Recovery System)と呼ばれるコンピューターだ。エンジンと2個のMGUの性能をレースの中で最適作動されるための、ハイブリッド制御ソフトこそが最も重要なのだ。
レースで使用するガソリンは使用量(最大100kg)と燃料流量(最大100kg/h)が規則で決められている。つまり、エンジンの熱効率を高めて燃費と出力を両立させ、同時に減速エネルギー回生とエンジンの熱エネルギー回生という2種類のエネルギー回生システム、つまりハイブリッドシステムを最大限に使用する。
なおエンジンは規則により、最高回転数は1万5000rpm、ガソリンの最大流量は1万500rpmで得られるように設定されているので、この回転数以上ではパワーはダウンする。今回搭載されているホンダエンジンは「RA615H」型と呼ばれる90度V型6気筒で、重量は145kg。使用するガソリンは、5.75%のバイオ燃料を混合したF1ガソリン用である。またトランスミッションは8速。
MP4-30のシャシーは、モノコック、ボディパネル、サスペンションリンク類はすべてカーボン製。車両総重量(ドライバー搭乗、燃料、オイル満載状態)で702kgだ。ブレーキ・キャリパー、マスターシリンダー、リヤのブレーキbyワイヤーシステムはアケボノ・ブレーキ製。ホイールはエンケイ製を採用している。