ソニー・ホンダモビリティは2023年1月5日、予告通りにラスベガスで開幕した「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー) 2023」において、ソニー・グループのプレゼンテーションで開発中のEVセダンのプロトタイプを発表した。そして、このソニー・ホンダモビリティとしての第1号モデルの車名は「アフィーラ(AFEELA)」とすることが紹介された。
プレゼンテーションで登壇した水野泰秀CEOは、ソニー・ホンダモビリティの企業理念は「多様な知で革新を追求し、人を動かす。」であり、開発に着手しているアフィーラのコンセプトは、Autonomy(自律・自動運転)、Augmentation(拡張性)、Affinity(親和性)の実現と語った。
エクステリアのデザインはプレーンで平板な印象の4ドア・クーペ・フォルムのセダンだ。そしてクルマと人のインタラクティブなコミュニケーションを実現するため、知性を持ったモビリティがその意思を光で語りかける「Media Bar(光で表現する演出)」を搭載しており、今後、さまざまなパートナー、クリエイターと共に、可能性を幅広く模索していくとしている。
これは、すでに他社でも一部実現しているヘッドライトやフロントの光るバーで映像を周囲に投影したり、周囲の歩行者に対する光のサインやクルマの表情の変化を演出することを意味していると推測できる。
インテリアは、繭に包まれたようなシンプルでやさしいラウンド基調のデザインとし、単に心地良いだけでなく、注意を逸らす装飾性を極力排除してカラーもシンプルさを徹底。人を中心とし、人が求める機能と体験の実現を目指すという。
インスツルメントパネルは、メルセデス・ベンツ Sクラスのようなピラーtoピラー(左右Aピラー幅全体)にディスプレイを配置。左右Aピラーの根元部分はリヤビューカメラの映像を表示。ドライバー正面のメーターパネルは車両情報を、助手席側はエンターテイメントを担当する。またフロント・シートの背面にも後席の乗員のためにそれぞれ大型のディスプレイが採用されている。
また、ルーフはガラス・サンルーフを採用し、明るいキャビンとしている。ステアリングホイールは航空機タイプで、スイッチ類はセンターアームボックス前端のダイヤル・スイッチのみだ。もちろん、ドアやシート部には多数の高性能スピーカーが搭載されていると推測できる。
アフィーラが提供する3つの「A」
アフィーラが提供する価値として、Autonomy(自律・自動運転)、Augmentation(拡張性)、Affinity(親和性)の3つの「A」が挙げられている。
Autonomy(自律・自動運転)は、進化する自律性とされ、安心安全技術をベースにした快適な移動空間を目指し、高度運転支援システム(レベル2+)、レベル3の自動運転システムを搭載する。そのため今回のプロトタイプには、車内外に計45個のカメラ、超音波センサー類、LiDARを搭載。室内のインキャビンカメラはドライバーモニター・カメラだけでなく乗員の個別姿勢検知カメラの搭載も想定されているようだ。
高速道路渋滞時に起動できるレベル3の自動運転システムは、恐らくホンダ レジェンドのシステムのアップグレード版であろう。
そのため800兆/秒という世界最先端の演算速度を誇るクアラコム社製スナップドラゴンSoC(システムonチップ)を搭載する統合制御ECUを採用。またそれだけではなくクアラコム社とは幅広く連携して電子プラットフォームのシステム開発を行なうとしている。
Augmentation(身体・時空間の拡張)は、新しいヒューマン・マシン・インターフェースを提案し、クラウドで提供するサービスと連携。ユーザーごとにパーソナライズされた車内環境を実現し、ユーザーに運転以外の楽しみも提供するという。
つまりリアルとバーチャルの世界を融合することで、移動空間をエンタテインメント空間、感動空間へと拡張。メタバースなどデジタル技術をフルに活用し、新しいエンタテインメントの可能性も追求。その一例として、ゲーム会社のEpic Games社とモビリティにおける新しい価値観やコンセプトの検討を開始しているという。具体的にはドライバーが一人で運転していても助手席にバーチャルの人物像を作り出し、会話を楽しむといったシーンが想定されている。
また拡張現実(AR)技術によって直観的なナビゲーションの提供を目指すとしており、これはフロントガラスを通した現実の風景に画像や記号を重ね合わせてわかりやすくルートガイドするといった機能だ。
Affinity(人との協調、社会との共生)は、クルマのオーナーだけでなく、自動車産業におけるパートナー、さまざまな産業を支えるパートナー、そしてモビリティにおける新しいエンタテインメントの創出に加わるクリエイターもともに新たな社内環境を作り出すことのできる環境を整えるということを意味している。
もちろんそのために、5Gネットワークを介して、継続的にソフトウェアアップデートを行ない、クルマを進化・成長させて行くシステムになっている。
アフィーラは2025年前半から受注を開始し、2026年春頃にアメリカ市場でのデリバリーを開始する計画だ。このことから、アフィーラのベースはGMのEV専用のアルティウム・プラットフォームを採用しているものと推測できる。
そして、クルマとしては日本製として初のソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV:ソフトウエアで定義されるクルマ)になるということだが、実は他の自動車メーカー、特にヨーロッパ系のメーカーもいち早くSDVの実現を目指してスタートを切っている。
こうした背景を考えると2026年時点でアフィーラは、高価格ゾーンのクルマであるだけに、どれだけの競争力、アピール力を持っているかが問われることになる。