ホンダは2020年10月2日、八郷隆弘社長がオンラインで緊急会見を開き、2021年シーズンをもってF1グランプリのレース活動を終了することを発表しました。
現在のホンダのF1参戦は1964年からの第1期から数えて4期目にあたり、2015年から参戦していますが、ハイブリッドシステムを採用するF1グランプリでパワーユニットの熟成不足により苦戦を強いられていました。そのせいもあって、パートナーのマクラーレンとの契約は20017年に打ち切られてしまいました。
そのためホンダは、2018年からトロロッソ(現在はアルファタウリ)、2019年からはレッドブル・チームにパワーユニットを供給する体制に変更。同時にパワーユニットの出力と耐久信頼性を向上させ、ついに2019年第9戦でレッドブル・チームが優勝を果たしました。その後はメルセデスAMGチームに次ぐ実力を発揮するようになり3勝を記録しました。2020年シーズンもアルファタウリ・チームがベルギー・グランプリで優勝を果たしすなどこれまで2勝しています。
しかし、ついに経営的な判断から2021年シーズンをもってF1活動に終止符が打たれることになりました。パワーユニットを供給する2チームとは8月頃から協議を行ない、9月末にF1活動終了の決断をしたということです。かつてのF1活動には、「休止」や「撤退」といった言葉が使われましたが、今回は「終了」という表現であり、今後ホンダがF1に復帰する可能性は限りなく小さくなっています。
八郷社長は会見で、2030年に乗用車の2/3を電動化車両とし、2050年にはカーボン・ニュートラル(実質CO2排出量ゼロ)を実現するという長期目標を達成するために、今後は燃料電池車(FCV)、バッテリーEV(電気自動車)など、将来のパワーユニットやエネルギー領域での研究開発に経営資源を重点的に投入して行くことを発表しています。そのためにエンジニアを集中的に投入したため、F1活動を終了すると説明しました。
次世代の電動化技術や燃料電池技術、さらにはエネルギーマネージメントの研究開発の拠点として、2020年4月には「先進パワーユニット エネルギー研究所」も新設しています。それは「さくら研究所」で、F1のエネルギーマネジメント技術や燃料技術、研究開発の人材は今後「先進パワーユニット・エネルギー研究所」に移行することになります。
つまりホンダは全力で次世代の電動化技術や燃料電池技術の開発に取り組み、F1グランプリに巨額な費用と多くの人材を投入する余裕はもはやないと考えたわけです。
ホンダは現在、イギリス工場の閉鎖、世界各地の工場生産ラインの統廃合など、過剰な生産体制の見直しを行なっており、同時に研究・開発でも選択と集中を行なおうとしているのです。