これまでホンダが取り組んでいること、これからやることなどの事業や背景についてお伝えしてきたが、ここからその完成形のHonda eMaaS(ホンダ イーマース)の事業イメージの正体を覗いてみよう。
仮想のエネルギーストレージ
現在の時点では、前提として再生可能な自然エネルギーが中心で、そのエネルギーが持つ不安定要素を解決するところからスタートする。つまり、風力発電や太陽光発電は、気象状況によって発電量が変わるという不安定さがあり、その不安定な部分を補うために、市場にあるバッテリーを仮想エネルギーストレージとして活用していく。
Honda eMaaSの中で、車両位置情報、バッテリーの充電情報、気象情報をベースにした発電量などのビッグデータを束ねて、解析し、市場にあるバッテリーをひとつの仮想エネルギーストレージとして扱い、解析データを元に電力量の調整をしていくプラットフォームがHonda eMaaSの根幹になる。
電力が余ったら市場のバッテリーに蓄電し、足りない時には市場のバッテリーで補うという循環で、貯められない電気を市場のバッテリーに蓄電することで電力の不安定さを解決する仕組みだ。さらに、その仕組みの先には、発電事業者や電気小売事業者へ提供し合うという新しいビジネスモデルがここに構築されているわけだ。
どうやって実現させるか
そのHonda eMaaSを実現するためにまずアグリゲーターとして情報を束ねるための位置情報をまとめるテレマティクスサーバー、ホンダ独自のバッテリー統合管理エンジン、そして供給の場所やタイミングなどを決めるアルゴリズム、これは専門性が高いために、リソースアグリゲーターと手を組むことで実現していくとしている。例えばMoixa社、Ubitoricity社とともに、2019年秋にイギリス・ロンドンで、2019年8月にはドイツ・オッフェンバッハで当該技術の実証実験に着手するとしている。
一方、充放電器に関してはホンダ・パワーマネージャーや前述のドイツのユビトリシティ社のスマートケーブルで街灯の電柱から充電するなどの試みがある。これは、どこの誰がどれくらい充電したのかということが管理できるシステムの具体的なものだ。
ホンダはこうしたV2G技術において、電動製品全体のバッテリーをひとつのエネルギー源として管理し、充放電器を一括管理し提供するシステムを、世界に先駆けた新しいビジネスモデルの創出であるとしている。
モバイルバッテリー
Honda eMaaSの構築に向けて、市場に出回るバッテリーにも新技術を提案している。つまり、スマホのモバイルバッテリーと同じように、モバイルパワーパックは、Honda eMaaSによって地産地消のエコシステムになるとしている。これは可搬型バッテリー、充放電器、小型モビリティで構成され、研究開発が進められている。
また小型モビリティになるとモバイルパワーパックでは最大出力が足りないという課題があり、その場合はHEVのバッテリーを搭載して、距離はモバイルパワーパックで稼ぎ、出力をHEVのバッテリーで補うといった試みも行なっているのだ。こうした試みはラスト1マイルと言われる都市間でのシェアサービスに活用できると位置付け、すでにフィリピン、インドネシアで実証実験を行なっている。
ホンダは二輪、四輪はもとより、コミュニケーションロボット、短距離移動系なども含め、統合管理しながらホンダらしいサービスの提供を目指しているということだ。VR体験や人型ロボットの研究開発も進められており、ロボット研究では近い将来説明の機会があるということだった。また、ヘリコプターに乗り、目的地に到着し家族とコミュニケーションをとりながら移動していく未来のVR体験は新鮮で、子供の頃思い描いた漫画の世界が現実になっていくという時代の流れを思い出した。
以上が今回開催されたホンダミーティングの内容となる。自動車メーカーが新たなモビリティカンパニーとして舵を切ったことがわかる明確な説明会であり、今後のモビリティ社会の発展、日本の経済に大きく影響していくことは間違いないだろう。ホンダはこうした新モビリティ、エネルギー、コネクテッドを推進する新体制を築き、開発、事業創出、コネクテッド開発、購買、知財などが一体となる体制「HIT」で事業推進しているということだ。<レポート:高橋明/Akia Takahashi>