【ホンダ】N-ONE試乗記 クラスを超えた質感と走りを持つホームランバッター誕生

マニアック評価vol145
2012年11月1日に発表されたホンダの軽自動車Nシリーズ第3弾となるN-ONEに試乗してきた。ライバルはリッターカークラスだ。軽であるネガな部分をなくし、積極的にチョイスしてもらう狙いで誕生したモデルだけに、実際乗ってみてどうだったのかレポートをお送りしよう。

1967年発売のN360の復刻とも言えるN-ONEは名車のヘリテージカーであり、当時31psで31万3000円という価格も破格値だった。誕生までに国策としてホンダは二輪車に限って生産、赤いボディカラーは消防車と同じなので採用禁止などの足かせを破って誕生させ、大ヒットさせたという歴史がある。

さて、新世代のN-ONEのターゲットユーザーはもちろんN360を知る団塊の世代、そしてまったく存在すら知らない若者世代をターゲットに開発され、いいものをたくさん乗り継いできた団塊世代も満足し、若者には自由に移動できる喜びを知って欲しい願いを込めた意欲作なのだ。

11月2日発売以来2週間で1万5000台を超えるオーダーがあり、好調の滑り出しだ。グレードは標準グレードとプレミアムグレードの2系統あり、それぞれにNAとターボが設定される。さらにHIDヘッドランプや、サイドカーテンエアバッグなどが標準装備されるLパッケージも両グレードに設定され、また、全てのグレードにFFと4WDがラインアップする。

NAエンジン
ターボエンジン

 

ボディサイズは軽自動車規格をフルに使ったサイズで、全長3395mm×全幅1475mm×全高1610(1630=4WD)mm。ホイールベースは2520mmと長い。搭載されるパワーユニットは3気筒660ccでNAエンジンの出力は58ps/7300rpm、65Nm/3500rpm、ターボも同じく3気筒のエンジンで64ps/6000rpm、104Nm/2600rpmというスペックに全車CVTが組み合わされている。JC08モード燃費はNAが27.0km/L、ターボモデルでは23.2km/Lとなっている。価格は115万円〜170万7750円。

開発のポイントとなるのは、軽自動車であるネガを徹底的に排除し、維持費の安さなどメリットを最大に活かすことだ。その維持費の安さから軽を選択するユーザーの傾向としてターボを贅沢品として捉え、NAを選択する比率が7割、そしてハイトワゴン、つまりワゴンRやムーヴを選択している。そのユーザーも取り込むためにターボを贅沢品ではなく、ネガな部分を取り去るためのものとして装備。さらに、走り、安全、広さ、質感、静寂性というそのうちどれかひとつでも気に入らなければ軽を選択しないという、気持ちの壁を打ち破るために誕生してきている。

その結果、ライバルとなるのはズバリ、ミラージュ、マーチなどのリッタークラスで軽の枠を越えた目標があり、フィットユーザーをもターゲットにしているというのだから、期待値は高まる。

外観をひと目見たときの印象は「大きい」「ホイールベースが長い」という印象。もちろん軽規格内に収まっていて間違いなく軽サイズだが、それは長いホイールベースと四隅に配置されるタイヤ、踏ん張り感のあるデザインによるのだろう。また、全高も高く1610mmある。これは軽のハイトワゴンユーザーを意識したものだろう。そしてホイールベースはフィットより20mm長く、そのためリヤのニースペースも40mm広くなっているから、天井の高さと相まって、広い室内が広がっている。

フロントシートはベンチシートタイプで、座り心地がいい。シートサイズも小さくなくしっかり座れる。後席は大人4人がくつろげる空間と説明するように、ニースペースも広く、シートバックがリクライニングするため、ゆったりしている。天井も高く圧迫感はまったくない。目に飛び込むインパネ回りの景色からも安っぽさは感じられない。樹脂成型のダッシュ回りではあるが、シボ加工され見た目の印象はクラスを超えている。

100km/hで2800rpm付近を示す
モード燃費を大きく上回る24.6km/Lという燃費も表示されたが、テストドライブの結果は15.63km/Lだった

 

この安っぽさがないという印象は、標準グレードでもそうで、軽の枠を確かに超えた品質感をもっている。車内に座ってみると、確かに軽自動車であるとは感じない。まさにリッタークラスと同等の印象だ。エンジンをかけてみるとターボモデルは遮音に相当力を入れているため、軽独特の軽いエンジン音には聞こえない。そこにも安っぽさがないわけだ。NAエンジンは実は高回転まで回して走るといい音がした。7300rpmまで回せるというのもイマドキではないのかもしれないが、熟年層には楽しいエンジンだった。

N-BOXと基本のパワーユニットは同じなのだが車重が100kgも軽いというので、エンジンのパワー感、トルク感が随分と印象が違った。つまり、NAでも十分なパワーがあるので、市街地走行でもキビキビと走れる。しかし、高速のロングドライブをするならターボがいい。こちらは、軽を選ばない理由として、高速の登坂車線でトラックを追い抜こうと追い越し車線に出てみてはものの、なかなか追い越せず、速いクルマに後に付かれるというのがイヤだという人も多い。ターボモデルはそのストレスはまったくない。登坂車線でもグイグイと加速していく。

80km/hからの加速でも力強く加速をするので、高速での追い越しも躊躇なくできる。高速走行での安定性でもハイトワゴンとは比較にならないほど安定しているので、ロングドライブも可能だ。だからターボモデルには「ツアラー」の名称が与えられているわけだ。

このターボモデルの市街地での走りだが、最近の低燃費指向にCVTの特性を振ったリッターカークラスよりは加速性能は高い。アクセルのレスポンスもよく、軽快に走れる。さらにLパッケージにセットされるパドルシフトを使いSモードで走行すれば、よりスポーティな走りも楽しめる。おそらく箱根のワインディングでも楽しく攻める走りができるだろう。さらにこのLパッケージにはクルーズコントロールの装備も含まれるので、長距離も楽にこなせる新世代の軽自動車といえる。

安全面では、乗ってすぐに感じたことのひとつだが、ボディ剛性の高さがある。しっかりしたボディはリッターカーを凌ぐしっかり感があって、乗っていて安心感がある。もちろんホンダの衝突安全技術のG-CONボディだ。そして横滑り防止のVSA(ヴィークルスタビリティアシスト)は全車適用で当然、ABSもトラクションコントロールも全車適用している。また坂道発進のサポートとなるヒルスタートアシストも全車適用だ。さらに、今回、軽では初めて採用したのが、エマージェンシーストップシグナルで、急ブレーキを踏んだときにブレーキランプに加えてハザードランプが自動で高速点灯し、追突事故予防する。

これまでの受注内訳も公表されていて、ボディカラーが豊富で単色で11色、ルーフとボディを2色に塗り分ける2トーンカラーも加えると16色からの選択が可能だ。そのうち、標準グレードではホワイトがもっとも人気が高く約31%、赤、シルバー、モカ、ブラックの順、2トーンもブルー×ホワイトが約4%ある。一方プレミアムグレードは2トーンカラーが人気で、レッド×ブラックが一番人気で20%を占める。次いで単色のホワイトになるが、ホワイト×ブラック、ブルー×シルバー、イエロー×ブラックも人気が高い。この2トーンカラーは受注全体の23%を占める人気ということだ。

標準グレードとプレミアムグレードの販売比率は50:50。その構成比は標準グレードのLパッケージが約27%、プレミアムグレードのLパッケージが約19%、プレミアムグレードのツアラーLパッケージが約15%といった割合で、NAエンジンとターボエンジンとの構成比も70:30で、ハイトワゴンではターボ比率が多くて15%程度だったことを考慮すれば、ターボ人気が高いことが伺える。

さて、こうして走り、広さ、安全、質感、静寂性など軽のネガなポイントを削ったN-ONE、逆に維持費の安やなど軽としての恩恵はあるわけで、予算150万円前後を見ているユーザーには頭を悩ます嬉しいモデルが誕生したことになるだろう。そして、自分の目で確かめてみれば、軽自動車のイメージを大きく変える1台であることは間違いない。Nシリーズ初期の開発段階で携わっていたホンダの繁浩太郎氏のことばを借りて「軽」を「K」というセグメントにしてみてはいかがだろうか。

 

< N-ONE NAモデル >

 

 

ホンダ N-ONE 公式サイト

COTY
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