2011年12月3日から一般公開される第42回東京モーターショーにおけるダイハツのブーステーマは『BIG ANSWER FROM SMALL』。次世代の軽スポーツコンセプトのD-X(ディークロス)、新規格を予感させる電動コミューターのPICO(ピコ)、未来の燃料電池車・軽ワンボックスのFC商CASE(エフシー・ショーケース)という3台のコンセプトカーを世界初公開する。
いまや軽自動車ナンバーワンとなったダイハツ。台数ベースではタントのようなハイト系モデルが売れているが、イメージリーダーとなっているのは2シーターオープンのコペンだ。そのコペンも2002年のデビューということで、モーターショーが近づく度に、次期モデルのコンセプトが展示されるのではないかと話題となってきた。
そして、いよいよ今回の東京ショーではダイハツの考える新しい軽スポーツカーが提案される。それが、この「D-X(ディークロス)」である。
とはいえ、これは純粋な意味でのコペン後継車というわけではない。コペンのような趣味性の高い軽自動車を、コペンとは異なるアプローチから迫った、ひとつの提案ということだ。
たとえば、エンジンはコペンでは4気筒DOHCターボだったが、このD-Xでは2気筒のDOHC直噴ターボとなっている。排気量はもちろん軽自動車規格の660cc級とされている。この2気筒エンジンは、前回の東京モーターショーでも技術展示されたものの進化形だ。
ヘッドはDOHC 4バルブで、カットモデルの画像から、吸気側に可変バルブタイミング機構が備わっていることが確認できる。またエンジン左側面に見える黒いパイプはEGR(排気再循環)のためで、いかにも大流量EGRを目指しているのは、その太さからも理解できるところ。
大流量EGRを前提としているとすれば、このエンジンはターボ(過給)仕様だけの設定となると解釈するのが自然だ。つまり、このターボはスポーツカーとしてのパワーを求めただけではなく、環境性能を考えての過給というアプローチだと言える。ならば、この2気筒ターボは次期コペンのためだけではなく、すべてのダイハツの軽自動車に搭載されるエンジンのスタディであり、そう思えばD-XがATとの組み合わせとなっているのも納得できる。
また「アクティブ着火システム」という新機構を搭載している点も見逃せない。通常のスパークプラグでは、電極間を一筋の火花が飛ぶだけだが、このシステムでは放電に高周波を加えることで、複数の細かいスパークを実現するというもの。スパークプラグ周辺という狭い範囲であるが、多点同時着火的な技術と言えよう。
こうして着火性能を向上させているのは、大流量EGRへの対応ということだが、当然ながら市販車への搭載を前提として開発されている技術。2気筒エンジンの登場以前に、現行型3気筒エンジンの進化版に採用される可能性も臭わせている。
一方で、D-Xのエクステリアには次世代2シーター・スポーツカーのデザインスタディという意味が込められている。基本となっているのは赤と黒のアグレッシブなオープンスポーツスタイルだが、この樹脂製ボディカウルは簡単に取り替えることができ、さまざまなバリエーションが楽しめるという。
まず基本形の発展型として提案されているのが「レースカー」というイエローとカーボンカラーによるバリエーション。
次に「スポーツワゴン」はクローズドボディで、ボディ後方にラゲッジスペースを持ったバリエーションとなる。
さらに「スポーツバギー」は、オフロード走行を楽しむイメージのデザインスタディ。こうしたバリエーションが展開できるということは、サスペンションやギア比といった面での簡単な変更も考慮されていると予想される。
こうしてボディバリエーションがあることからも、コンセプトカーのD-Xは単純にコペン後継というわけではなく、軽自動車で走りを楽しもうという層に向けたマーケティングという意味合いが強いと思われる。
■D-X(ディークロス)主要諸元 ●ディメンション:全長3395×全幅1475×全高1275mm ホイールベース2230mm ●タイヤサイズ:165/50R17 ●駆動方式:FF
近未来のモビリティとして現実味を帯びてきた電動ミニカーのコンセプトとして生み出されたのが、PICO(ピコ)だ。タンデム(前後)2シーターの電動コミューターというのは、複数メーカーから似たようなコンセプトが提示されているものだが、これは次世代コミューターとして国交省も含めて規格が煮詰められている、いわゆる新規格ミニカーをイメージさせる1台。
軽自動車より小さく、現行のミニカー(50cc以下のエンジンを積んだ1人乗り車両)よりも大きいというコンセプト。安全装備などのテクノロジーも詰め込まれ、具体性よりも技術展示という要素の大きいコンセプトカーだ。
こうした市街地型コミューターでは歩行者との共存性が求められるが、ピコではボディの各所に電光掲示板を備えているのが特徴。これらによって走行状態を周囲に伝えることで、安全性と共存性を高めようという狙いだ。
またフロントにレーダーを備えることで周囲の状況をキャッチしてインパネ上の液晶モニターに表示。衝突回避に備えると同時に、車体の電光掲示板に注意を促すメッセージを流すといった提案もされている。
■PICO(ピコ)主要諸元 ●ディメンション:全長2400×全幅1000×全高1530mm ホイールベース1815mm ●車両重量:400kg ●タイヤサイズ:135/80R12 ●最高出力:9kW ●航続距離:50km ●駆動方式:RR
?
さらに未来の軽自動車を感じさせるコンセプトカーが、FC商CASE(エフシー・ショーケース)。漢字とアルファベットを組み合わせたユニークな車名だが、これはFC=燃料電池/商=商用車…のスタディモデルというコンセプトをシンプルに表現したもの。
全高も含め、ほぼ軽自動車枠いっぱいのボディをスクエアに使うことで、限られたボディサイズの中で可能な限り有効なキャビンを実現しようというのは、まさに商用ワンボックスのデザインスタディ。
ボディ側面がそのまま跳ね上がるようなガルウイングドア、ハンドルやシートまでも格納可能にしたことで、停車時にフラットで広大な室内スペースを提供することが可能になっているのは、移動販売車などのビジネスユースへの提案と言える。また下側が開くことでステップとなり、乗降性を確保するという狙いもあるという。
こうしたボディデザインの提案は、次世代の軽商用車を感じさせるが、車名の最初を飾るFC=燃料電池は、もっと先を見据えたもの。
すべてのパワートレインを床下に収めた燃料電池システムは、自走可能なレベルにまで仕上げられているというが、この燃料電池はダイハツ独自の“ヒドラジン”を燃料に使ったもの。
前回の東京モーターショーで技術展示されていたこの燃料電池は、ヒドラジンという液体を使うことで、一般的な燃料電池に使われる水素よりも燃料のエネルギー密度を格段に高められるのが特徴。それにより燃料タンクをコンパクトにできるので、軽自動車サイズの床下にすべてのパワートレインを収めることができるのだ。
なお燃料電池スタックのスリーサイズは長さ836×幅182×高さ352mmと、非常にコンパクト。このサイズで35kWの出力を目標値としているという。
■FC商CASE(エフシー・ショーケース)主要諸元 ●ディメンション:全長3395×全幅1475×全高1900mm ホイールベース2450mm ●タイヤサイズ:165/55R15 ●航続距離:500km ●駆動方式:RR
さらにJC08モードで30.0km/Lという省燃費性能が話題のミライースがスペシャルボディカラーで参考出品されるほか、最新の市販モデル9台も出品される。