ホンダの航空機事業子会社のホンダ エアクラフト カンパニー(Honda Aircraft Company)は2022年10月8日、アメリカ・フロリダ州オーランドで開催される世界最大のビジネス航空ショー、ナショナル ビジネス アビエーション(NBAA 2022:プレスデー:10月17日、一般公開:10月18日~20日)で、小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」の最新型としてアップグレードされた「ホンダジェット エリートⅡ」を発表した。
ホンダジェット エリートⅡは、燃料タンクの拡張による最大離陸重量の増加により、航続距離を従来から+204kmの2865km(1547ノーティカルマイル)に延長させ、より遠くの目的地へ移動することが可能になった。機体構造の改良では着陸時に使用するグランドスポイラーを主翼に初搭載し、着陸時の機体ハンドリングと安定性を向上させている。
また、新たな安全技術の取り組みとして、最新の自動化技術であるオートスロットル機能と緊急着陸装置を2023年末までに導入することも発表した。ホンダジェットはこれまで複数回のアップグレードにより最新の安全機能を高めるアビオニクスシステムに搭載してきたが、この新たな2つの自動化技術の導入により、パイロットの負荷を軽減するとともに、機体運用の安全性をさらに向上させることができる。
今回発表されたホンダジェット エリートⅡは、機能美の追求を目指し、究極のオーナーシップ体験と快適性を追求したモデルとなっている。エクステリア・デザインでは「ブラック・エディション」(特別色)を新たに設定。
インテリアはモダンなグレーを基調にした「スチール」と暖かみのあるベージュを基調にした「オニキス」の2種類のデザインが加わり、また、機内通路の床材には従来のカーペットのほか、木目調のデザインを選択できるようになっている。さらに、機内壁の遮音材を刷新し機内に流れ込む風切り音を抑える設計とするなど、ノイズ低減の工夫を施したことでキャビン全体の静粛性をさらに向上させている。
また、ホンダジェット エリートⅡに搭載されているエンジンの製造メーカー、GEとホンダとの合弁会社「GE ホンダ エアロ エンジンズ」は、持続可能な航空燃料(SAF)を100%使用したHF120ターボファンエンジンの試験に成功したと発表した。SAFは航空領域でのCO2排出量を削減し、カーボンニュートラルを達成する手段の1つとして注目されている。
SAFの利用は米国材料試験協会(ASTM)による認可制となっており、既存のジェット燃料(ケロシン)へSAFを混合できる含有率の上限が定められている。現在の上限は50%となっているが、今回の試験により、今後の航空燃料の進化・普及を見据え、100%のSAFを使用できる可能性を確認することができたという。
試験では、SAF100%をHF120で使用した場合のエンジン性能への影響を既存のジェット燃料と比較し評価した。SAFには、現在最も普及しているHEFA-SPKを使用し、地上でのエンジン試験をゼネラル・エレクトリック社(米国オハイオ州ピーブルズ)で数日間に渡り実施。その結果、通常のジェット燃料を使用した場合と同等の性能が確認されたという。
GEとホンダは、SAFの安全性を評価し規格化の支援を行う国際団体(FAA/OEM Review Panel)に加入しており、SAFの安全性と普及に向けて活動しているが。今後も両社で協力し、持続可能な社会に向けたCO2排出量の削減など技術を進化させ、業界をリードして行くとしている。