既報のように、ポロはビッグマイナーチェンジを行ない、発売された。現行のポロは5代目「6R」型は登場以来5年目でビッグマイナーチェンジが行なわれたことになる。
フォルクスワーゲン流では7年目でフルモデルチェンジするのが通例だが、今回は5年目でビッグマイナーチェンジを実施し、部分的に先行技術が投入された。これはどちらかといえば本社の都合だろうと思う。しかし、その一方でヨーロッパのBセグメントはプジョー、シトロエン、ルノーなどがニューモデルを投入し、それらのクルマはいずれもCセグメントを凌ぐほどの驚くべき性能アップしており、ポロの牙城を脅かし始めているから、VW社としても早めに手を打ちたいという思惑もあったと思う。
今回のビッグマイナーチェンジは、プラットフォームのフロント部分が新世代のMQB様式を取り入れ、搭載エンジンもMQB対応タイプの新設計版の、ゴルフ7のファミリーとなるEA211型系列に変更されるというかなり大掛かりなものだ。
例によってヨーロッパ仕様は、エンジンもディーゼルを含め多くの仕様が設定されているが、日本に導入されたのはスタート&ストップ、減速エネルギー回生システムを装備する90ps仕様のみで、エンジン出力は従来型と比べて15ps/15Nmダウンしている。つまり燃費指向のエンジンを選び、同時にゴルフと同様のミリ波レーダーを装備し、衝突の危険を警告したり、衝突の軽減や回避を行なうプリクラッシュブレーキシステム「フロントアシストプラス」、「アダプティブ・クルーズコントロール(ACC)」などドライバー支援システムも導入され、Bセグメントで突出した安全装備をアピールする。もちろんこれはVWジャパンの商品企画のコンセプトに従ったものだ。
新型ポロの外観はエクステリアではバンパーのデザインが小変更されている程度。むしろインテリアが、ゴルフと同タイプのステアリングホイールになり、メーターパネル、ドアトリム、シートなどがこれまでより質感が向上している。一見するとゴルフと同じか、と思うほどになっている。
▲60:40の分割可倒式後席シートバックを採用。ラゲッジスペースは床下のアンダーフロアまで物入れを確保
しかしその一方で、ポロは全長3995mmと4.0mを切るサイズで、全幅1685mmと、きっちり5ナンバー枠に収まっていることが大きな訴求点だ。最近のヨーロッパBセグメントは、プジョー208のように全長は4.0mを切るものの全幅は1740mm、ルノー・ルーテシアは全長4095mm、全幅1750mmとBセグメントの上限を攻めるクルマも多くなっているが、ポロは従来のサイズを守っており、これも日本ではかなり大きなポイントとなると思う。
では、新型ポロの走りはどう変わったのか? 第一印象は従来型とかなりフィーリングが違っているのに驚かされた。従来型はボディのがっちりとした硬さと正確なステアリング・フィールというポロ独特の印象があったが、新型はボディのしっかりした感じはそのままに、硬さが取れ、しなやかさとも言うべき質感の良さが加わっている。と言うと漠然とした表現だが、要するにゴルフ7に限りなく相似した、より大人っぽい落ち着いた印象と言うべきだろうか。
ステアリングは従来の電動油圧式から電動式に変わっているが、ステアリングの正確さと落ち着き具合、クイック過ぎない滑らかな操舵フィーリングは従来以上のレベルに仕上がっている。自然で、穏やかな操舵フィーリングは、どんなユーザー層にも抵抗なく受け入れられるものだ。また乗り心地、静粛さも従来よりさらに向上し、入力の角を丸められ、ストローク感があり快適だ。リヤ席でもフラットでショックやピッチングが少ない乗り心地はこのクラスのトップレベルであり、上級車をも凌駕しているかもしれない。
室内の静かさも、今ではヨーロッパのBセグメント車は上級モデルを凌ぐレベルを競い合っているが、この新型ポロもそうした静粛性のレベルは遜色なしだ。さらに新設計されたシートの座り心地、しっかりとしたサイドサポートも秀逸だ。操舵感、乗り心地、静かさ、シートの座り心地といった性能が高まっていると言うことは、長距離ドライブでも疲労が少ないわけで、これらはとても重要な実用性能なのだ。
さらに、TSIコンフォートライン・アップグレードパッケージ車で標準装備、TSIコンフォートラインでオプション設定のレーダーによるアダプティブ・クルーズコントロール(ACC)を使用すれば、長距離ドライブでのストレスの少なさは上級車にまったく引けを取らないといえる。
新型のエンジンはさらに滑らかになり、低速からフレキシブルで扱いやすい。7速DSGとのマッチングも申し分ない。燃費はJC08モードで22.2km/Lと向上し、郊外路での実用燃費は、このモード燃費を上回ることも難しくないはずだ。言い換えると、ハイブリッド車の実用燃費とほとんど変わらない燃費レベルになる。これも新型ポロのアピールポイントだろう。
ポロは、機能性を重視したパッケージングに加え、快適で長距離を走っても疲労が少ない乗り味を実現することで、老若男女、誰が乗っても不満がない。エンジンの動力性能も突出しているわけではなく、全方位で完成度が高いといえるが、逆に言えば個性が薄く、優等生的である。しかしそれこそがポロの本来的な狙いと言える。ただし、懐の深い走りのフィーリングは、本質的な意味でのドライビングプレジャーを味わうことはできる。
優れた実用燃費、ドライバー支援システムや安全装備といった現在のトレンドを取り入れつつ、走りのレベル、インテリアの質感を高めた新型ポロは、ダウンサイザーにも抵抗なく受け入れられるだろうし、商品企画的にターゲットされている女性ドライバーにも好感が持たれるクルマと言える。
Bセグメントのクルマとして求められる基本性能を最大限に高め、どんなドライバーにも受け入れられる走りや操作性、そしてセグメントで初となるドライバー支援システムと言った先進装備を備えていると言った総合力において、やっぱりポロはクラスレスであり、このクラスのチャンピオンと言えるだけの資質を備えていると言って間違いないだろう。
VW POLO諸元表