automobile Study
フォルクスワーゲン・グループの研究部門は2019年4月5日、ハンブルクの市街地で自動運転車両のテストを実施していることを明らかにした。フォルクスワーゲンにとって、ドイツの主要都市における実際の交通環境下で、レベル4の自動運転のテストを実施するのは今回が初となる。
市街地での実施という踏み込んだテスト
ボディにレーザースキャナー、カメラ、超音波センサー、レーダーを搭載した5台の「eゴルフ」が、ハンブルク市内に整備された自動運転およびコネクテッド・ドライビング用テスト区間の3kmのセクションを走行する。テスト走行の結果は、すべてのデータ保護規則を十分に考慮しながら継続的に評価され、フォルクスワーゲン・グループ内の数多くの自動運転に関する研究プロジェクトに使用される。
研究部門長のアクセル・ハインリッヒは、「今回のテストは技術的な可能性に加え、自動運転に必要な都市インフラに重点を置いています。将来的に、運転をより安全で快適なものにするためには、車両が自動運転に対応してよりインテリジェントになるだけでなく、信号機や交通管制システムと相互に、または車両同士でも通信できるシステムも提供する必要があります」と語る。
ハンブルクでは現在、自動運転およびコネクテッド・ドライビング用の9kmほどのテスト区間を整備中で、2020年に完成する予定だ。そのためハンブルク市は、I2V(インフラtoビークル)、V2I(ビークルtoインフラ)通信用の機器を使用して、信号機を順次改修している。これによって、フォルクスワーゲンとハンブルク市は、デジタル化ITS(高度交通情報システム)による交通の流れの最適化と、市街地における自動運転の本格的な実施に向けて重要なステップを踏み出す。
ハンブルク市の経済・運輸・イノベーション担当上院議員のミヒャエル・ヴェストハーゲマン氏は「ハンブルクでは、2年半後にITS世界会議が開催される予定です。そこでは、自動運転が重要な話題になるでしょう。私たちの戦略的パートナーであるフォルクスワーゲンに、テスト区間の最初のユーザーになっていただいたことを嬉しく思っています。私たちは、ハンブルクをインテリジェントモビリティのモデル都市として定着させ、2021年には世界中の人々に、革新的な数多くのモビリティ プロジェクトをご紹介できればと願っています」と述べている。
自立ではなく道路インフラとの協調という別次元
フォルクスワーゲン・グループの研究部門によって製作された「e-ゴルフ」は、11基のヴェロダイン社製のレーザースキャナー、7基のレーダー、そして14台のカメラを搭載している。通常、数時間にわたって行なわれるテスト走行では、1分当たりの最大データ通信量が5GBにも上るため、e-ゴルフのトランクには、ノートパソコン約15台分に相当する処理能力を持つコンピューターが搭載されている。
最先端のセンサー類と組み合わされたこの高度な計算能力により、歩行者、自転車、他の車両、交差点、優先権、駐車車両、移動中の車線変更に関するデータを収集して、ミリ秒単位で計算。情報は多様化し、より複雑だが車載ソフトウェアで使用される人工知能は、関連するすべてのオブジェクトを認識し、誤った警告を発することなくそれらに対応できる能力が求められる。このプロセスでは、ディープラーニング、ニューラルネットワーク、パターン認識を含む、複数の異なる人工知能のアプローチを採用している。
安全上の理由から、ハンブルク市で実施されているすべてのテスト走行では、特別なトレーニングを受けたテストドライバーが運転席に座り、あらゆる運転機能を常に監視し、緊急時にはいつでも介入できるようにしている。
フォルクスワーゲン・グループ研究部門は、公道における自動運転機能をレベル5まで可能にするために、すべてのグループ・ブランドと関連するグループ部門と協力している。今回のプロジェクトで得られた結果は、さらなる研究開発プロムラムに順次組み込まれ、次の段階では、数年後に公道でモノやヒトを自動輸送するための具体的な製品を提供できることを目標としている。もちろん公道において、安全を監視するドライバーがいない状態での自動運転には、法的枠組みの変更と、対応するインフラの整備も不可欠なことはいうまでもない。
これまでの実証実験は高速道路、自動車専用道路、あるいはアメリカでの交通量の少ない市街地域がほとんどだったが、このフォルクスワーゲンとハンブルグ市の取り組みは、本格的な混合交通の市街地で行なわれることと、道路インフラとの協調を目指しているという点で画期的ということができる。
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