2013年7月25日、ルノージャポンはオールニューの新型「ルーテシア」を発表し、9月24日から発売することを明らかにした。新型「ルーテシア」は、ルノー社の新たなブランド&デザイン戦略を体現した第1号車となり、革新的なデザイン、新開発のダウンサイジングコンセプトによる1.2L・4気筒ターボエンジン、6速DCT(EDC)など最新技術を搭載し、満を持してBセグメントに挑戦する。
ルノー社は、今後新たなブランド&デザイン戦略を展開し、新しい企業ステートメントとして「change your life, change your car」を掲げている。この戦略を担当・推進しているのがルノー社のブランド&デザイン担当常務(SVP)ローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏だ。ヴァン・デン・アッカー氏は、アウディ、フォードのデザイナーを経て、2006年にマツダのデザイン本部長に就任し、「流れ」デザインを推進した。そのヴァン・デン・アッカー氏は2009年にルノーに移籍し、コーポレートデザイン担当取締役に就任している。
第4世代となる新型ルノー・クリオ(クリオは欧州名で日本名ルーテシア)の開発は2008年に始まっていたが、ヴァン・デン・アッカー氏がルノー全体のブランドとデザインの方向性を煮詰めるとともに、、新たにルーテシア・デザインチーム6名を選抜し、ルノーの新デザインを造形していくことになった。
ヴァン・デン・アッカー氏が導き出したルノーのブランドバリューは「Human(人間)」であり、デザイン戦略は「CYCLE OF LIFE」、すなわち人生である。そして新たなデザイン・キーワードとして「シンプル」、「官能的」、「温かみ」という3つの言葉が選ばれた。
新型「ルーテシア」はこの3つのキーワードをもとにデザインされている。もうひとつデザイン戦略で重要なことは、「CYCLE OF LIFE」を展開するために、「CYCLE OF LIFE」を6つのステージ、「LOVE」(愛、情熱)、「EXPLORE」(冒険、旅行)、「FAMILY」(家族)、「WORK」(仕事、活動)、「PLAY」(遊び、楽しみ)、「WISDOM」(人生の経験を経た境地)というステージに分類されている。これらのステージを象徴するコンセプトカーを展開し、そのコンセプトカーのデザイン要素やテーマカラーは量産モデルと直結されることが決められた。特にカラーに関しては、過去のルノーは地味で無難な傾向が強く、それがクルマを面白みに欠けると感じさせていたと総括され、こだわりのカラーリングが展開されることになる。
ちなみに、「LOVE」の次の章以降は、コンセプトカーは「キャプチャー」、「Rスペース・コンセプト」、そして、「フレンディジー」で、これらにリンクした市販モデルが続くことになる。
さらにブランド&デザイン戦略の一環としてルノーバッジをより大きく強調し、フロントマスクの中央に位置させる、ルノー車全体で共通した顔を作ることもデザイン基盤になっている。それまではルノーバッジは冷遇され、ブランド全体で共通したフロントマスクを持たなかったという反省が生かされているのだ。
新型ルーテシアは、革新されたルノーのブランド&デザイン戦略の第1号モデルであり、「CYCLE OF LIFE」の花びらの1枚目に当たる。コンセプトは「LOVE」(クルマ、クリオ=ルーテシアの象徴されるルノーに対する情熱や愛)で、テーマカラー「ルージュフラム」(情熱を表す深みのある赤)だ。ただし、カラーバリエーションは、ブラン・グルシエ(ホワイト)、ノワール・エトワール(ブラック)、グリ・カシオペ(グレー)、ブルー・ドゥ・フランス(ブルー)、ジャン・エクレール(イエロー)、マロン・アルダン(ブラウン)がラインアップされている。
新型ルーテシアのデザインモチーフは、「LOVE」を象徴するコンセプトカー「デジール」だ。2010年のパリショーでベールを脱いだ2シータースポーツクーペ「デジール」は、ヴァン・デン・アッカー氏がルノーに移籍して初めて手がけたコンセプトカーであり、そのテーマカラーが「ルージュフラム」であり、コンセプトは「恋に落ちる」だったという伏線がある。それだからこそ「デジール」のデザイン要素は見事なまでに新型ルーテシアに融合されている。その役割を担ったのが、選抜された6人のデザインチームだった。
こうしたクリエイティブなデザインフィロソフィが、新型ルーテシアで7色のボディカラーと内装カラー、ホイールカラーを組み合わせた「パック・クルール」(インテンス・グレードのみ対象/一部注文生産車)や、内装パーツセットの「パック・デザイン」(全グレード対象/ディーラーオプション)によって、自分だけの1台をデザインすることができるようになっている。
新型ルーテシアは、2012年のパリショーでデビューした。ボディは旧型と比較して、全長は4095mm(+70mm)、全高は1445mm(-40mm)、全幅は1750mm(+30mm)、そしてホイールベースは2600mmで25mm延長されている。またトレッド幅は1505mmで旧型より50mm拡大され、Cセグメントに迫るサイズになっている。新型は5ドアモデルのみの設定だが、デザイン的には3ドアにも見えるようにリヤドアのハンドルがサッシュに隠され、3ドア的なスポーティなシルエットを描く。また、大きく張り出したショルダーラインにより安定感やダイナミックさを強調する。デザインテーマは溶解した金属の質感だという。
ルーテシアは、ルノー/日産のBプラットフォームを採用し、ルノーの大黒柱となる5ドア・ハッチバックモデル、およびエステート(ステーションワゴン)と位置付けられ、ヨーロッパ市場ではガソリンエンジンの900cc・3気筒、1.2L8NA/ターボ、1.6Lターボ、そしてメインエンジンの1.5Lコモンレール・ターボディーゼルなど最新世代ががラインアップされ、2012年11月からヨーロッパ市場で販売が開始された。
日本仕様は、ベースグレードの「アクティフ」、ミドルグレードの「ゼン」、最上級の「インテンス」の3機種を設定している。
日本市場には4気筒・1.2Lターボが導入される。日本仕様の1.2L・4気筒エンジンは、エンジン型式名H5Fで、2012年に登場した最新エンジンで、ルーテシア以外ではメガーヌ、セニック、ダチア・ロジーなどに搭載されている。排気量は1197ccでボア・ストロークは72.2×73.1mm。DOHC・16バルブ。吸排気カムに連続可変バルブタイミング機構を備える。直噴・ターボを採用したダウンサイジングエンジンで、最高出力120ps/4900rpm、最大トルク190Nm/2000rpm と低速・大トルク型エンジンだ。このエンジンには可変容量式電動オイルポンプ、低フリクションタイミングチェーン、グラファイトコーティング・ピストンスカート、DLCコーティングカムタペットなど低フリクション対策も徹底されている。また減速エネルギー回生システムも搭載している。
このエンジンに組み合わされるトランスミッションはヨーロッパでは5速MTがメインだが、日本市場にはゲトラグ社と共同開発された6速EDC(エフィシェント・デュアルクラッチ、すなわちDCT)トランスミッションが採用される。ルノーは、2ペダル・トランスミッションとしてAMT、CVT、トルコン式ATもラインアップしているが、ルーテシアには最新ユニットの乾式デュアルクラッチ式のEDCが組み合わされている。
インテリアのデザインテーマは、空を浮遊する飛行機。飛行機の翼が持つような、軽量で高い強度を併せ持つ形状の特徴を取り入れ、ダッシュボードのデザインは、まさに飛行機の翼のイメージが具現化された。そして、ステアリングホイールは回転する飛行機のレシプロエンジンをモチーフにデザインされている。また特徴的なブリリアントブラックのセンターコンソールは、薄型のパネルがダッシュパネルから浮かび上がっている、フローティングデザインだ。このパネルには、エアコンコントロール、エアコン吹き出し口、7インチタッチスクリーン式インフォテイメント(ラジオ/オーディオ、Bluetooth、USBポート、各種設定機能)がまとめられている。
ダッシュボードやドアトリムは、正三角形を組み合わせた統一デザインが採用され、細部に至るまで統一感のあるインテリアとなっている。また、ダッシュボードとドアトリムは、内外装カラーの組み合わせが選べる「パック・クルール」と、内装パーツセットオプションの「パック・デザイン」で、好みの色の組み合わせにカスタマイズすることができるのも大きな特徴だ。
サスペンションはフロントがストラット式で、直角三角形の形状のロアアームと組み合わされる。このロアアーム形状によりシャープなハンドリングと優れた乗り心地を両立させている。高剛性サブフレームは、ハンドリングの応答性と正確性を高める基盤となっている。リヤサスペンションは、コイルスプリング付のトーションビームで構成される。コーナリング性能を高めるためスタビライザーが装備され、新たにウレタン製のプログレッシブ特性を持つバンプラバーが採用されている。電動パワーステアはよりクイックになり、ロックトゥーロックが2.71回転。より俊敏で、しかも市街地での取り回しも優れている。
燃費環境対策としてECOモードスイッチを備えている。このスイッチを押すことで、エンジントルクの抑制、スロットルのマッピングを変更し、ギヤシフトはより高いギヤを選択、エアコン制御を省エネにするなどの統合制御により、ノーマルモードに比べ燃費を12%改善できるという。
新型ルーテシアはトルコのブルサ工場で生産されるが、ユーロNCAPで5スターを獲得した安全性の高いボディ骨格の実現はもちろん、最新設備の導入により、パネル間の隙間を従来より0.2mm縮小し、ルーフサイド部の結合部はロボットによりプラズマ溶接され、トリムなしの滑らかなルーフを実現するなど、ボディの製造面で大幅なレベルアップを見せている。さらにコンセプトカー「デジール」で試みた深みと厚みのある長寿命の光沢塗膜、赤みがかったトップコート(カラードトップコート)塗装の初採用など品質面でも革新が行なわれている。
なお、ルノージャポンは、この新型ルーテシアの発売を記念して、「インテンス」をベースに、通常は設定のないブラン・グラシエのボディカラー/ブルー内装/ブルーホイールの「パック・クルール ブルー」と、フランス国旗をデザインした内装パーツセット(フレンチ)の「パック・デザイン」を組み合わせた、特別な ルーテシア「クール フレンチ リミテッド」を、30台限定で9月24日発売するとしている。価格は238万円。