【試乗記】ルノー ルーテシアGT クルマの本質レベルが高いフランスのコンパクトカー

マニアック評価vol282
ルーテシアGT フロントスタイル

運転がしやすく、ハンドリングも満足度の高いルーテシアに新たなラインアップが加わった。「ルーテシアGT」は定評のあるサスペンションをさらにルノー・スポールがチューンしたニューモデルで、その試乗レポートをしよう。

◆ポジショニング
ルーテシアGTは259万円(税込)で、ボディサイズは全長4095mm×全幅1750mm×全高1445mm、ホイールベースは2600mmでBセグメントにカテゴリーされるモデルで、搭載するエンジンは1.2Lターボに6速DCTを組み合わせている。グレードラインアップはエントリーグレードからアクティフ、ゼン、インテンス、そして今回のGTという構成で、上位のグレードということになる。もっとも、1.6Lエンジンを搭載し、専用のシャシーチューンをしたルーテシアRSがあり、ルーテシアはスポーティラインの充実したモデルでもある。

ルーテシア バリエーション

さて、今回のルーテシアGTはインテンス、ゼン、アクティフと違うのはルノーのモータースポーツ部門である「ルノー・スポール」がチューニングした専用のシャシーを持っていることだ。フロントのスプリングレートはノーマル比+40%、フロントダンパー減衰力+30%とチューニングされている。

またGT専用装備として2つのドライブモード切り替えができる「R.S.ドライブ」を装備する。ノーマルとスポーツモードの切り替えでアクセルレスポンスが変わり、少しのスロットル開度でも力強く加速する。

ルーテシアGT メーター

他にもエクステリア、インテリアで専用パーツを装備している。エクステリアでは、GT専用バンパー、17インチホイール、ボディ同色サイドモール、グレーメタリックサイドミラー、クローム・デュアルエキゾーストパイプ、メタリックリヤアンダープロテクター、そしてR.S.リヤスポイラー等が専用外装として装備している。

ルーテシアGT ミラー ルーテシアGT サイドシル ルーテシアGT リヤバンパー

インテリアではGTロゴ入りシート、パドルシフト、GTロゴ入りレザーステアリング、グレーメタリックインテリアトリム、滑り止めラバー付きアルミペダル、R.S.ロゴダッシュボード、R.S.ロゴ入りキッキングプレオートがおごられている。

ルーテシアGT フロントシート

エンジンは他グレードのルーテシアに搭載されているものと同じ1.2L・4気筒直噴ターボエンジンで120PS/190Nmの出力。FF駆動式だ。R.S.を除きエンジンスペックに違いがないというのも、ある意味ルノーらしい。というのは、走りの差別化をエンジン出力で行なうのが一般的だが、ルーテシアではサスペンションのチューニングによって走りの差別化をしているからだ。つまりサスペンションのセッティングに強い自信があるという証拠でもあると言える。

◆インプレッション

ルーテシアGT インカー
出力の絶対値には違いはないが、その走りには頷ける。もともとルーテシアの走りは高い評価であることはご存じだと思う。当サイトでも走りの良さを高く評価した記事を掲載している。そのルーテシアのスポーティバージョンであるルーテシアGTの試乗フィールドは、ワインディング&高速で試乗できた。

低速域でのステアリングの正確さは扱いやすさを感じさせ、運転に慣れていない人でも安心感を持てる。また、中速域、高速域での正確さは安全、安心につながる操舵フィールであり、この基本的なフィールがルーテシアの特徴のひとつでもあるわけだ。

ルーテシアGT インパネ

GTではさらに安心感の高さと、楽しさが加わる。特にワインディングではルノー・スポールがチューニングしたシャシー性能を楽しめる。コーナー進入ではロールから始まり、ヨーモーメントへとつながり旋回モードになる。サスペンションはストローク感があり、スポーツモデル=固いアシという常識を覆す。

旋回中にアンダーステアが強くなるような場面でも、回頭性が上回り、不安なくさらにスロットルを開けることができるのだ。これはリヤの追従性が成せる操舵フィールではないだろうか。リヤアウト側の接地感がドライバーには伝わってくるのだろう、ダンパーのリバンプ側の減衰が素早く追従してくるので、ノーズはイン側へとずんずん回頭していく。

ルーテシアGT エンジン
搭載エンジンは1.2L・4気筒直噴ターボ。最大出力120PS、最大トルク190Nm

FFモデルに限らないことだが、このリヤの動きが悪いとスピンモードを感じたり、アンダーステア、オーバーステアなどいろいろな動きを察知することになる。そうなると安心感の高いコーナリングではなく、コントロールに神経を使ったコーナリングへと変わってしまう。このあたりがルーテシアGTの懐の深さであり、ルノーのクルマ造りに感心させられる。

Bセグメントでは国内メーカーにもグローバルで展開するモデルがあり、直接対決となるモデルもあるが、このレベルではルーテシアに軍配が上がる。欧州のBセグメントはこのルノーに限らず、プジョー208、フォードフィエスタ、フォルクスワーゲンポロなど何れもレベルが高く、クルマとしての本質を見失わないクルマ造りと言えるだろう。また、ユーザー自身も燃費性能ばかりを訴求するようなクルマ選びをしない、ということも国内事情とは異なる。その結果、プロダクト性能で差があるという結果になっているのだろう。

ルーテシアGT フロントスタイル DSCN0083

車両価格としては国産Bセグメントとの差が当然輸入車のほうが高いが、それでもその差はかなり詰まりつつある。この性能差と価格差をどのように考えるかということは人それぞれで価値観が異なるが、一度、試乗してみることは決して損なことではないので、ディーラーへ行ってみることをお勧めする。

■ルノー・ルーテシアGT主要諸元

ルノー公式サイト

COTY
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