ルノースポールといえば、ニュルブルクリンクのコースでFF最速タイムをマークしたメガーヌR.S.が記憶に新しいが、その8分07秒97のラップをたたき出した時の開発チーム、そしてドライバーが日本を訪れ、鈴鹿サーキットにおいて初テストを実施。今回はその様子をレポートしよう。
ルノースポールはルノー本社の中にあるスポーツモデル開発チームで、主に市販車のスポーツモデルを開発している。古くはルノーのレースカーやチューニングをしていたアルピーヌやゴルディーニの流れを汲んだ組織なのだが、現在はルノースポールテクノロジーとして活動している。
1937年からその歴史は始まり、1976年に誕生したルノースポールは翌年77年にF1に出場するために組織されたビジネスユニットが始まりとなった。97年に「ルノースポールテクノロジー」が創業、2002年には「ルノースポールF1」がスタートしている。F1には現在4チーム(2013年)がエントリーしており、インフィニティ・レッドブル・レーシング、ウイリアムズ、ロータスF1チームの活躍は誰でもが知る成績を残している。他にチーム・ケータハムが2013年からエントリーされる。
ルノースポールは市販車のスポーツモデルを開発、製造、販売しながら市販車からレースまでのピラミッド構造をレベル設定し、そのトップにはレーシングカーが存在するヒエラルキーの基で活動している。さらにレースカーを走らせる場の提供として有名な「ワールドシリーズbyルノー」があり、これまで欧州だけで提供していたが2012年はロシアでも展開を始めている。今後アジアでの展開も計画しているという。
そのルノースポールが市販するモデルでは、最もベーシックなモデルがGTラインで、その上級にGT、さらにR.S.があり、市販車のトップレベルがR.S.の名前を持つモデルとなっている。その先はレースを前提とした車輌開発がある。そのベーシックなGTラインとはサスペンションのチューンと内外装のチューニングをしたライトチューンで、現在のルノーの市販車ではメガーヌにGTラインがある。
上級クラスのGTは、GTラインのチューンに加えエンジン、ブレーキもチューンした本格スポーツモデルで、トゥインゴ、クリオ、メガーヌ、ラグナに設定されている。そして最上級のR.S.はサーキット走行も視野に入れたハイパフォーマンスカーで、市販車にはトゥインゴ、クリオ、メガーヌがある(一部国内未導入)。
冒頭のニュルのFF最速コースレコードを出したモデルがメガーヌR.S.で、市販車のトップモデルであり国内導入もされている。価格は385万円という手の届くスポーツカーでもある。
さて、そのルノースポールテクノロジーの車輌開発はサーキット走行を含めた開発が行われており、これまでは欧州のサーキットでテストが繰り返されている。そして集めた膨大な量の情報を基にフィードバックされているが、今回そのテストコースとして初めて欧州以外のサーキットが選ばれ、そして日本の公道も試走するテストが行なわれたのだ。
ルノースポールはこれまで欧州以外でのテストをしたことがなく、また、初めての右ハンドルでのテストであり、初めてのサーキットテストということなった。その初めてづくしの環境でありながら、鈴鹿サーキットを2分33秒328というタイムを出している。このタイムは比較データはないものの、FF2.0Lとしてはおそらく最速だろうということだ。
このテストに参加したメンバーは、ニュル最速をマークしたドライバーロラン・ウルゴン氏、シャシーエンジニアのフィリップ・メリメ氏、マーケティングのジャン・カルカ氏、そしてルノースポール社長のパトリス・ラティ氏の4名である。
ルノースポールの社長自らも参加してのテストという気合の入れようは、日本のマーケットの重要さを物語っている。ルノースポールが提供するGTライン、GT、R.S.モデルの販売台数で日本は欧州以外では世界2位の台数を販売している。またR.S.に限っての販売台数は欧州以外では2位で、欧州も含めた全世界での販売台数は6位であり、ベスト10にランクしている。またルノージャポンの販売台数のうち、ルノースポールが占める割合は25%に達し、その人気の高さを本社もしっかり受け止め、日本からのニーズにも応える形でテスト来日となったわけだ。ちなみに、2012年のR.S.の販売台数は8500台で、ルノースポール全体で4万台を販売。GTが1万台、GTラインが2万台という台数になっている。
さて、そのテストの内容だが、詳細は当然明かされないのだが、鈴鹿サーキットでのテストでは何をチェックしているのかはドライバーのロラン・ウルゴン氏から説明があった。また、日本はR.S.が人気の国で、パーツのサプライヤーまで気にするユーザーが多い国なだけに、200km/h以上の速度で疾走しているのだろうと想像していたという。それが高速道路でも100km/h以下で静かに走り、そして道路のつなぎ目の大きさには驚かされたという話を教えてくれた。
サーキットではタイヤを2種類用意していたようだ。1セットは235/40-18のヨコハマNEOVA、もう1セットはブリヂストンのRE01-Rで235/35-19。ニュルのタイムアタックのときはポテンザRE050だったということで、今回はNEOVAでベストラップを出していた。
また、テストのチェック項目では鈴鹿の場合、ニュルとは正反対の項目がいくつかあったという。それはブレーキをソリッドとスリット入りの2種類のうち、ニュルでは制動力の高いソリッドが向いていたが鈴鹿ではスリット入りがよかったという。それは、ハードブレーキングが少なく、ソフトなブレーキングで姿勢を変えるレベルのブレーキングが多いためだそうで、スリット入りのほうがコントロールしやすかったということだ。それは、また弱アンダーで走るというより、オーバーステアを積極的に使う走りのほうがタイムは出るとうことでもあった。
実際、同乗させてもらい体験した範囲でもデグナーの最初の右コーナーをオーバースピードと思える速度で進入するのだが、アンダーとならないように進入まえに姿勢をオーバーステア気味にしていた。そしてデグナー奥ではLSDの開発にはベストなコーナーだというように、トラクションが思うようにかからず、ロスしている体感はあった。
このように、鈴鹿サーキットを走行することで、ニュルとは違うデータを集めることができ、それが今後のR.S.モデルの開発に生かされるのだという。