【ルノー】遊び心満点の1台。走りも元気で楽しいルノー・ウインド 動画:桂伸一

マニアック評価vol69

2011年7月、1.6L自然吸気エンジン搭載のタルガトップモデル、ルノーウインドが日本でもデビューを果たした。ウインドのルーツは2004年のパリ・サロンで、同名のコンセプトモデルが2+1というユニークなパッケージでデビューしている。そして2010年3月のジュネーブショーで現在の2シーター・クーペタルガが発表され、5月からフランスで発売されたモデルである。

ルノー ウインドの画像

エクステリア担当のデザイナーは鈴木康裕氏

このウインドは同社のトゥインゴをベースに、ボディパネルなどエクステリアをすべてオリジナルで開発。まさにデザインに注力した力作である。そのデザイナーはメガーヌ・トロフィでも実績がある、日本人の鈴木康裕氏だ。開発の中心となっているのはルノーのスポーツモデル、レーシングマシンの開発を行うルノースポールで、エンジンやサスペンションをはじめ、シートやハンドリングまで手が入れられている。

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わずか12秒で開閉できる電動回転格納式ハードトップ(サプライヤーはドイツが本拠のベバスト社)を持ち、信号待ちで十分オープンエアを楽しむことができるウインドは、“OPEN&PLAY”が開発コンセプト。OPENには屋根を開けるという機能以外にも、自由になるという精神的意味も含んでいるという。そしてPLAYは楽しむことを意味し、オープンエアを満喫しながら、気持ちまで自由になり、心ゆくまで楽しむことをコンセプトにしている。ちなみに、ルーフの収納アクションはフェラーリのマラネロをベースにした「575Mスーパーアメリカ」のオープンルーフとほぼ同じ動きで180度超も回転して格納される。

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↑ルーフを開ける場合は左から右への順となる。きわめて明快なメカニズムだ

このクルマの見どころでもある電動ルーフの操作は簡単だ。クルマを停止させ、サイドブレーキを引いてから、ルームミラー近くにあるハンドルを回転させロックを外す。そしてシフトレバー前方にあるスイッチを押せば格納動作が始まる。トランクに収納されたルーフはトランク容量に影響を与えない設計になっている点は実用的で、見逃せないポイントだ。ルーフの開閉に関わらずトランク容量270Lは確保されている。

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↑ルーフはリアハッチ部に収められ、それを開けると下にトランクが出現

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左ハンドル&5速マニュアルのみの設定

個性的なデザインを持つウインドは1.6LのNAエンジンに5速MTの組み合わせ。そして左ハンドルだけの仕様となっている。2シーターのロードスターモデルで左ハンドル、マニュアルシフトというだけでオーナーとなるにはハードルが高くなるが、ニッチなマーケットにおいて、特別感がより一層強調され、注目度は高まる。実際、発売時に設定された限定30台の特別仕様車「ルノー ウインド コレクション」は、1カ月もしないで完売となっている。

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↑本国では1.2Lのターボ仕様(100ps)もあるが、ATの設定はない

ディメンションは全長3835×全幅1690×全高1380mmで、最近の輸入車としてはきわめて珍しい5ナンバーサイズだ。エンジンは前述のように1.6LのNAで134ps/6750rpm、160Nm/4400rpmというスペックで、トゥインゴ・ゴルディーニ、ルノースポール(RS)と同じユニットである。ただ、ギヤ比も影響するが100km/hで3100rpmなので、エンジン音はそれなりに室内に入ってくる。標準装着されるタイヤは195/45R16サイズ、10・15モード燃費は13.4km/Lである。

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ドラポジやペダルレイアウトは絶妙だ!

このスペックからも想像できるように、市街地やワインディングで走るとその持ち味は発揮されるだろう。5速のマニュアルシフトの操作感は軽く、ペダル位置もオフセットしていない。ペダル間の距離や高さも、さすがルノースポール社が携わっただけあって、扱いやすい位置にあり、ヒール&トゥもやりやすいペダル配置になっている。興味深いのは、オープンモデルとしながらもエンジン音がドライバーに心地よく聞こえることだ。これはルーフを開けていても、また閉じていても、音質は変化するものの、どちらもスポーツドライブを盛り上げてくれるサウンドが楽しめる。

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そしてハンドリングも気持ちがいい。少しのステアリング操作でもキチンとクルマは反応をし、ジワリと動く。決してクイックな動きではなく、ジワッと、だ。ジワリとステアリングを切ると、クルマもジワリと外側のタイヤに荷重がかかり、徐々にロールが始まる。と同時にヨーモーメント(旋回)も感じ始めるので、安心感が高い。スタイルからは、コーナリングがクイックで、キョロキョロしそうな雰囲気を勝手にイメージしてしまうが、実際は落ち着いた動きをするので、安心してワインディングを楽しむことができる。

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剛性感でもタルガトップのアドバンテージを発揮

このハンドリング特性は、ルーフを開けた状態でも大きな変化は感じない。一般的にオープンボディのクルマはルーフを閉じた状態と開けた状態ではボディ剛性に変化が起こり、ハンドリングに影響されることが多いが、ウインドはリヤにバルクヘッドがあるタルガトップであるためなのか、その変化はほとんど感じられないのも高く評価できる。

反面、この素直なハンドリンがあるだけに、より高い速度域でコーナーを攻めたくなる衝動に駆られるが、そうなるとエンジンパワーとブレーキにより高いパフォーマンスを要求したくなる。つまり、それだけハンドリングが素直でドライバーの意思どおりにクルマが反応していることの裏返しということでもある。

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↑試乗車はオプションの17インチを装着

乗り心地は、低速域でのみゴツゴツを感じるが、アタリはマイルドなので不快な印象はない。スポーティモデルだけに引き締まった印象の乗り味で、この乗り心地からもスポーツドライブしたくなる気持ちが盛り上がる。サスペンションはフロントがストラットでアルミ製ロアアームが使用されている。リヤはH型ツイストビームでダンパーの取り付け位置を立てて装着してあり、乗り心地をよくするための工夫ということだ。シートはホールド性も高く、長時間のドライブも問題ない。が、ホールド性を高めるために、座面の左右やシートバックの左右の張り出しが大きく、ドアを大きく開けないとやや乗降はしづらい。

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ナビの余地がないインテリアにも好感!?

インテリアの質感は高い。無理矢理Bセグメントのカテゴリーと考えてもセグメントトップクラスの質感と言えるだろう。3連のアナログ表示されるメーターもまたスポーツマインドが感じられ好印象だ。気になったのは、ナビの取り付け位置だ。インパネまわりも凝ったデザインがされているため、「どこに配置するのか?」という疑問があった。ナビはオプション設定で空調のコントロールパネルの上部に装着可能だが、いかにも苦しいレイアウトとなってしまう。この手のクルマ、思い切って「ナビも不要」という選択が潔いのかもしれない。

■ルノー ウインド主要諸元

●ディメンション:全長×全幅×全高=3835×1690×1380mm/ホイールベース=2265mm/車両重量=1190kg ●エンジン:直4DOHC/排気量=1598cc/98kW(134ps)/6750rpm/160Nm/4400rpm ●10・15モード燃費:13.4km/L ●タイヤサイズ(前/後)=195/45R16 ●ブレーキ(前/後):Vディスク/ディスク ●サスペンション(前/後):ストラット/ツイストビーム ●乗車定員=2名 ●車両本体価格:255.0万円(消費税込み)

 

文:編集部 髙橋 明

動画試乗解説:桂 伸一氏(モータージャーナリスト)

 

ルノー・ジャポン公式ウェブ

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