これまで量販モデルとしていたクルマが、アップマーケットへとシフトする傾向があって、プジョーやボルボが言い始めている。プジョー308は2014年ヨーロッパカーオブザイヤーや日本カー・オブ・ザ・イヤーの10ベストカーを受賞していて、デザインや性能はもちろん、そのブランドシフトも評価されたのではないだろうか。
2014年の秋に正式にナンバー登録される前に、袖ヶ浦フォレストレースウエイで試乗する機会があり、「1.2LターボのATでサーキット試乗?」という疑心を持ちながら、試乗したことを思い出す。そのときのレポート では「しなやかに動くサスペンションで、フランス車に対する期待どおりの粘りのある乗り心地だ」と言っている。
その後、箱根のワインディングを走るチャンスも得られ、そのレポートでは、ハッチバックとステーションワゴンの違いを感じたことをレポートしている。
今回試乗したのはSWで「ロングドライブしたらどうか?」ということでおよそ500kmを数日にわたって乗り、高速、ワインディング、日常使いというシチュエーションで試乗してみた。トピックとしてはフランス車に乗っている注目度、所有した満足感、そして実用的にはどうなの?といったところ。
エクステリアや、インテリアのデザインからくるフランス車のオーラはどうか?シトロエンに比べれば、それほど個性的ではないかもしれないが、クルマ好きな、たとえばガソリンスタンドの店員さんには、「これなんていうクルマですか?」とか聞かれた。「プジョーだよ」って言うと「へ~渋くていいっすね」とか言う。試乗車のボディカラーにも影響されるだろうが、とにかく目に留まるデザインなのは間違いない。
インテリアは所有者の満足度を高める重要な要素。だって、周りの人には見えないし、覗き込むものなら、「怪しい、何か盗むつもりか?」とこのご時勢では疑われてしまう。駐車している車内などそう簡単に覗き込めない世の中になってしまった。。。。
話を戻すと、インテリア。これがフランス車らしく、よくある直線でスパッとデザインした世界とはまるで反対で、パッと見はすっきりしていてシンプルだけど、ひとつひとつの形が素直な形をしていない。直線だけど多角形で決して四角や台形というわけでない。曲線も丸や楕円というシンプルな形ではなく、「デザインの国、おフランス」感がある。ディーラーでじっくり覗いてみていただきたい。くれぐれも駐車しているクルマは覗かないように。
で、走ってみると1.2Lターボと6速AT。パドルシフト付きで意外とスポーティ。タコメーターは逆回転のお遊びまである。もちろん、スポーツモードもあって、エンジン音が変わる演出もあるので、楽しくなる。ハンドルは超小径でフラットボトムの楕円、というひねりを加えたデザインで、「なんで、そこまでやるの」と歓心。
130ps/230Nmとスペック的にはたいしたことないが、低速トルクがちゃんとあるのでエンジンをブン回さなくてもストレスなく走る。スポーツモードを持っているくらいだから、ワインディングだって楽しいのは想像できるでしょう。パワーよりもこのクルマはやっぱりサスペンションがお気に入り。「フランス車に乗ってるぞ」感があって、それでいて、シトロエンほどロールを積極的に使うアシでもない。明らかにドイツ車とは違うので、アンチジャーマン派にはたまらないでしょう。
高速の連続運転は、「さすが欧州車、まっすぐはしるねぇ」とつぶやく。「まっすぐ走るのは当たり前だろ」というツッコミありそうだが、このクルマまっすぐ走ります。直進の座りとわれわれは言うが、これがはっきりドライバーに伝わると、運転手の負担は軽くなり、疲れないわけですよ。なので、長距離はグッド。ちなみに、フランス国内はなぜか奇数の速度制限で高速は地方にいくと130km/hが多く、ほかに110km/h、90km/h制限というのが実情。
燃費では、いろんな乗り方をしたわりには14.6km/Lだった。カタログでは16.1km/Lだが、走り方を気にせず、ワインディングを走っての燃費なので、納得ではないだろうか。
実用的なのか?という点ではSWモデルであるし、リヤシートも倒れるから十分ユーティリティは高く、あとは個人個人の使い勝手や要求度合いにマッチするか?という印象。唯一、使い勝手に難があるのがタッチパネルのナビ。ナビ自体は問題ないが、空調もこのタッチパネルで行なう。その工数が多いので信号で止まらないと・・・って思う。前方の視界を切る回数が多くて、これが気になった。<レポート:髙橋 明/Aikra Takahashi>