プジョー308/308SW試乗記 アップマーケットへとシフトした上質で走りに自信のプジョー308

マニアック評価vol313

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富士山をバックに。プジョーの新型308ハッチバックと308SWを公道試乗した。写真は380ハッチバック

2014年3月のジュネーブモーターショーで欧州カーオブザイヤーを獲得した新型プジョー308は、2014年11月5日から発売が開始され、試乗の機会があり箱根のワインディングを走ってみた。

2014年9月末に、一足早く試乗のチャンスがあり試乗レポートをした。このタイミングではまだナンバー登録がされておらずクローズドのサーキットだけでの試乗だった。しかし、ストローク感のあるフランス車らしい、プジョーらしいサスペンションが印象的であり、1.2L+ターボという小排気量にもかかわらず、サーキットを元気に走る印象を報告している。

今回は、公道でありワインディングでの試乗。サーキットのように荷重が大きい場面ばかりでなく、日常遭遇する場面の多くをテストすることができる環境だった。それは路面コンディションの悪い場所での乗り心地やハンドリング、標高のあるワインディングでのエンジンパワー、そして何よりもアップマーケットへシフトしたニュープジョーは、プレミアムに相応しいモデルへとなったのか?などを見ることができた。

◆インプレッション
新型308はハッチバック(HB)とステーションワゴン(SW)の2モデルがあり、どちらもストローク感がありドイツ車とは明らかに異なる方向性のクルマであることを感じる。試乗車はHBが17インチを、SWが16インチを装着し、さらに両車はホイールベースが異なることから、2車でも多少フィールの違う印象になった。

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ステーションワゴンの308SW

サスペンションのストローク感のある乗り心地は共通しているが、HBはSWよりもスポーティに感じる。その理由は上記のホイールベースやタイヤサイズの違いによるものだろう。細かい凸凹の入力やロールの始まり方などで、そのフィールの違いを感じる。一時、プジョーはドイツ車風の操舵感を目指しているのだろうか?と思わせるような時もあったが、新型308では、その疑問を拭い去った。

エンジンは3気筒の1.2L+ターボでピュアテックと呼ばれているユニット。これに第3世代のアイシン6速ATを搭載している。ダウンサイジングエンジンは、130ps/230Nmというスペックをもち、Cセグメントサイズのボディだが、軽量な新型308を軽快にワインディングで走らせる。リニアなスロットルレスポンスとスピーディな変速が可能なパドルシフト使い、楽しみながら走れる。1.2Lという小排気量であることは微塵も感じさせないフィールだ。唯一、登り勾配の厳しい箱根の山中を駆け上るときに、モアパワー!と感じるかもしれないが、それは1.2Lだという先入観かもしれない。

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運転席に座ると目に飛び込んでくるのは、小径のステアリングだ。プジョー208で初導入したときに注目を浴びたアイテムで、スピードメーターなどをハンドルの上から覗き込むポジションでドライブする。小さすぎるという違和感もなく、フラットボトムで楕円という形状からのイナーシャも感じられず、スポーティ感をアップさせているアイテムだ。そして、新型308ではタコメーターの針が逆回転するメーターが新採用されている。デザインのユニークさのひとつだ。

新採用ではタッチパネル式のアイコックピットがある。ドライバー側にオフセットしたセンターコンソールも特徴的で、スイッチ類も簡略化され、すっきり、シンプルに仕上がっている。このあたりもドイツ車とベクトルを異にする部分だ。もちろん機能面で不足するようなことがないのは言うまでもない。空調コントロールやバックアイカメラ、ナビゲーションなどもタッチ式でショートカットキーを設定するなど、使い勝手という側面でも工夫がある。

また、ドライバースポーツパックが全車に標準装備された。アクセルレスポンスの向上、パワーステアリングのフィール、そしてインパネのバックライトがホワイトからレッドへと替わり、エンジン音もスピーカーからの演出効果が高くなるというものだ。

安全装備にも触れておくと、アクティブクルーズコントロールは40km/h以上、速度差30km/h以上で作動し、自動加速、エンジンブレーキによる減速を行なう。またディスタンスアラート、エマージェンシーブレーキサポートなどプジョー初の装備がある。他にもブラインドスポットモニターやパークアシスト機能、DENONと共同開発のHi-Fiオーディオなども装備している。

エクステリアの装備では、いわゆるデータイムライトがLED化され、全車標準装備となり、ヘッドライトを含むフルLEDも標準装備(プレミアムを除く)される。また、プジョー、シトロエンの得意技術であるパノラミックガラスルーフもプレミアムグレードを除き標準装備となり、明るい車内も新型308の特徴だ。

◆ポジショニング
2014年3月のジュネーブショーで、プジョー308はポジションをアップマーケットへシフトすることが発表され話題となった。これまで量販モデルとしての位置づけだったが、よりプレミアムモデルに近いポジションへとシフトするわけだ。おそらくフォルクスワーゲンのゴルフ7が直接のライバルであり、高級の日常化というフレーズでインパクトを与えたゴルフ7に対抗するためには、プジョー308もレベルアップが必要との判断からのシフトだろう。

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そして2014年10月末の時点で、フランス国内でも販売シェアは21%でセグメント1位。2013年9月のローンチから18万台の販売をし、2014年4月から発売のSWも5.3万台と好調のようだ。

全世界レベルでみれば、PSAグループはグローバルセールスで2014年1月~10月期で5%アップし、欧州では11%アップ、中国では40%アップと好調である。その中国では10月単月で46%アップという成長で、全体の成長率でも11%から46%へと伸び率がいい。全体で5%アップというその内訳は、具体的には134万8000台を記録しているという。

この新型308は125年の歴史があるプジョーの本拠地ともいえる東フランスのソショー工場で製造され、国内に導入される。

◆ハイライト
2001年プジョー307のデビューから数えて12年振りとなるプジョー308は、EMP2という新型プラットフォームを採用し刷新した。高張力鋼板の採用やさまざまな技術により307で使われていたPF2プラットフォームより、単体で約70kgの軽量をしている。またボディでも30kg軽量しているため合計で約100kgの軽量化に成功している。

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刷新されたプジョー308は前述のようにアップマーケットへの移行を目指し、クラスを超えた完成度の高いデザイン&クオリティ、テクノロジー、アイコクピットの3つのキーワードが最大の特徴となる。そしてそのドライブフィールに自信あり!というのが今回のプジョー308だ。

ディメンションは全体的に307よりコンパクトにまとめる方向で、ハッチバックは全長4260mm(-55mm)×全幅1805mm(-15mm)×全高1470mm(-45mm)、ホイールベース2620mm(+10mm)でトランク容量は+72Lの420Lというサイズだ。

一方のSWでは全長4585mm(+70mm)×全幅1805mm(-15mm)×全高1475mm、ホイールベース2730mm(+20mm)でカーゴスペースは+37Lで610Lの大容量を持っている。

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価格はHBが279万円~339万円、SWが299万円~339万円で、多くを標準装備とするプジョー308の価格はかなり戦略的といえる内容だろう。

新型プジョー308は、プラットフォームを一新し、先進技術を搭載、質感をアップし間違いなくアップマーケットの方向へシフトしたプロダクトである。ハンドリングをはじめとする走りの質もプジョーらしい、そしてフランス車に乗っているという満足感のあるモデルへとシフトしたと思う。

<レポート:髙橋アキラ/akira takahashi>

プジョー308/308SW主要諸元

プジョー308詳細解説

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