2013年4月23日、プジョースポールは、6月30日に開催される2013パイクスピーク・ヒルクライムのアンリミテッドクラスに、セバスチャン・ローブがステアリングを握る「208 T16 パイクスピーク」の驚くべきマシン諸元を発表した。
4WD、ミッドシップに搭載されるのは3.2L・V6型ツインターボエンジンで、その出力は875ps、車両重量は875kg!パワーウエイト・レシオは1.0ks/psだ。
多くのモータースポーツカテゴリーでは、エンジンのスペックやボディ形状、車高などに多くの規則が適用され、制限が加えられる。しかしパイクスピーク用のマシンは、エンジニアが心の奥底で密かに抱いている野望を思い切り実現させてくれる世界で唯一のマシンといえる。
というのは、パイクスピークのアンリミテッドクラスは何ら制限が加えられることはないのだ。「パイクスピークならイマジネーションを最大限に生かしたマシンを設計できます」。プジョー208 T16パイクスピークのプロジェクトに関わるプジョースポールのエンジニア、ジャン・クリストフ・パリアはそう語る。
パイクスピークは、標高4000mを越える地点まで駆け上がる。これに技術的に対応するためエンジンが標高によって受ける影響をを最小限にする必要がある。ルノースポーツのプロジェクト責任者、ブルーノ・ファミンは、「自然吸気エンジンの場合、標高が100m高くなるごとにパワーは1%ダウンします。パイクスピークは標高2865m地点からスタートし4301mの地点にまで達するため、この点は無視することはできない要素です。つまりスタート時点で標準的なエンジンのパワーはすでに30%ダウンしているのです」
プジョーは耐久レース用に設計されたV6型ツインターボ・エンジンをベースに開発を行い、F1を凌ぐパワーを引き出している。さらに車両重量は徹底的な軽量化により875kgという軽さを実現し、馬力荷重は1.0kg/psを達成している。
ボディ構造はチューブラーフレームで、俊敏なハンドリングを追及するため重量配分は最大限に配慮されている。マシンはル・マン24時間を制覇したプジョー908の技術や遺伝子が詰め込まれている。というのもパイクスピークのコースは2012年から全面舗装化されているので、耐久レースでの技術が有用になるのだ。トランスミッションやブレーキ、エアインテーク、第1世代の908HDi FAPで採用された翼幅2mのリヤウイングがそのまま採用されている。
もちろん空力性能も入念に設計されている。走行スピードは50km/hから240km/hの幅があるが、100km/hでは空力性能は大きな鍵になる。したがって208 T16 パイクスピークの巨大なフロント・スプリッターとリヤウイングの効果は絶大だとされている。また4輪に装着されるミシュランタイヤも、パイクスピークのコースで大きなグリップ力を発揮することはいうまでもない。