【プジョー】新型プジョー208試乗記 208に1.2L+5MTが追加 セグメントの常識を超える完成度 1.6LターボGTにも試乗

マニアック評価vol154
2012年11月に国内導入が行われた新型プジョー208だが、期待されている1.2L自然吸気+5MTモデルが12月に追加され、そして11月の時点で試乗できていなかった1.6Lターボ+6MTにも試乗してきた。

プジョー 208アリュール フロント画像

もともと新型208は2012年4月から欧州で販売が開始され、11月までの8ヶ月間で16.5万台の受注を集めており、グローバルで好調な滑りだしをしている。そして2012年の秋からはチリ、中東、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、トルコ、韓国、そして日本で発売され、来年は南米とロシアで販売が開始されるので、爆発的な販売台数を記録するのでは?という興味が沸くニューモデルだ。

すでに、当サイトでも新型208の紹介はしており、詳細はコチラをご覧いただきたい。

そして今回試乗してきたのが追加モデルの1.2L自然吸気+5MTのモデルと先行発売していた1.6Lターボ+6MTだ。ボディタイプは3ドアハッチバックタイプのみの設定で、グレード追加ということになるが、搭載されるパワーユニットがシエロ、プレミアムとは異なるので、新型208は現在のところ、4グレード3モデルといっていいだろう。

すでにインプレションをお届けしているのは、中心となるプレミアムとシエロで1.6L自然吸気(EP6C型)+4ATというパワーユニットを搭載している。エンジンはPSAグループとBMWが共同開発したエンジンにPSA製の4AT(AL4型)という組み合わせだ。

プジョー 208アリュール リア画像プジョー 208アリュール リア画像

そして今回投入された1.2Lの自然吸気エンジン(EB2型)に5MTの組み合わせはアリュールというグレードで提供される。新型208のベースグレードに位置し、価格も200万円を切る199万円という戦略的価格が付けられている。ライバルのフォルクスワーゲン・ポロのベースグレードTSI・コンフォートラインは、同じ1.2Lにターボ付きで218万円だ。ちなみに、208の新型エンジンはPSAグループが開発した3気筒のガソリンエンジンで、フランス・ポアシー工場で生産されている。またマニュアル・トランスミッションもPSA製となっている。

プジョー 208アリュール 運転席
ベースグレードとはいえレザー巻きのステアリングやドア内張り、ダッシュボードまわりにクロームを配し、高級感がある
プジョー 208アリュール シフト
ベースグレードのアリュールは5MT。サイドブレーキはなじみのある場所で使い慣れた方法で

 

このアリュール、標準グレードながらBセグメントの常識を超える上質感を持つと言われるだけあって、インテリア、エクステリアともに、グレード以上のクオリティを持っている。インテリアではダッシュボードまわりで上級グレードとの差はクローム仕上げがされているか、いないかという違いがある。しかし見比べたとしても安っぽさや廉価版という印象がなく、納得できる仕上げだ。一般的に上級グレードと見比べてしまうと、どうしてもその違いを明確に感じ、安物感を持ってしまうが、このアリュールはきっと多くのひとが、「これはいい」と感じるのではないだろうか。

プジョー 208アリュール フロントシート
シートはGTと同様レザーとファブリックのコンビが標準となる

ダッシュボードやドアトリムまわりの基本は樹脂を使用してはいるが、シボ加工はもちろん、複雑な曲面をもつデザイン性の高さが保持されている。さらにピアノブラックのパネルも効果的に使われている影響もあるだろう。そして350mmφの特徴的な小型ハンドルがレザー仕様というのも効いている。さらに、シートもレザーとファブリックのコンビシートになっているので、なおさら、ベースグレードであることは意識させられない。

プジョー 208アリュール フロント

エクステリアでもプジョーのアイデンティティであるフローティンググリルはクローム処理され、際立つフェイスマスクになっている。そしてドアミラーやウインドウモールなどにも効果的にクロームが使用されているのだ。通常ベースグレードになるとコーナリングランプやフォグランプは標準装備されないが、このアリュールには装備される。さらにLEDのポジションランプ付のハロゲンヘッドランプも搭載されるのだから、ルックスからは上級グレードとの違いを見つけにくい。ちなみに16インチアルミホイールはGTを除き195/55R16という同一サイズで標準装備される。

さらに、安全装備でもプジョー208が持つ安全装備は、グレード間での違いがほとんど存在しないのもうれしい。フロント、Fサイド、カーテンエアバッグやESC(車両安定装置)、EBD(ブレーキ制動力分配機能)、ブレーキアシスト、クルーズコントロールなどが標準装備されている。

走行性能では、まず、3気筒のネガとしていわれるのが、エンジンの振動とエキゾーストサウンドだ。このアリュールのエンジンにはエンジン振動を抑えるバランサーシャフトを逆位相で回転させ、3気筒と思わせるような振動や騒音はない。アイドリング時にわずかに車体は振動しているが、それでもクラスレベルを超えた小さい振動だと思う。

プジョー 208アリュール エンジン
3気筒1.2L自然吸気エンジンを搭載。デュアルバルクヘッドのような形状をしている

新規開発された1.2L自然吸気エンジンはPSAグループのBセグメント用基幹エンジンとなるもので、60Kw(82ps)/5750rpm、118Nm/2750rpmというスペックを持つ。新世代エンジンは燃費とCO2削減も目標に開発され、JC08モードで19.0km/Lを達成している。内部構造において大幅なフリクションを低減、またアルミ製シリンダーヘッドには無段階可変バルブタイミングVVTをエキゾースト側に採用し、高効率化されている。

プジョー 208アリュール メーター画像
5速100km/hで3000rpmだが、静粛性が高くエンジン音が大きいとは感じない室内

5速100km/hでエンジンの回転は3000rpm付近を示すが、車内の静粛性が高いためエンジンノイズは大きく感じない。エンジンのトルク感やパワー感といったものは1.2Lのクラスレベルだろうが、マニュアルミッションと組み合わされるため、思い通りに加速させ、減速できるので操る楽しさがしっかり味わえる。そして、ターボ車にある過給による加速感の変化もなく、また、怖くなるほどのパワーはないので、女性でも安心してアクセルを踏み込むことができるだろう。

プジョー 208アリュール ペダル
右ハンドルでもアクセルペダルの位置は悪くない

マニュアルの操作感はごく自然で軽い。シフトポジションも分かりやすく迷わない。そしてクラッチペダルも軽いので操作に対するストレスは皆無だ。サスペンションに関してはモデルごとにセッティングを変えているようだ。当然パワーユニットの違いで車両重量がことなるため、多少のセッティングは違うはず。しかしそれ以上に乗り味をチューニングしていると思う。ちなみにアリュールとシエロでは110kg違い、GTとでは130kgもアリュールは軽量になっている。

乗り心地だが、16インチで55偏平のタイヤとは思えないほどしなやかに感じる。高速でのピッチングも少なく、フラットライドな走りがある。そして欧州車ならではの直進安定性の高さがしっかりあり、コンパクトカーでありながらどっしりとした安定感は安心感になる。

ただ、ステアリングが小径であるため機敏な反応にも感じる。この小径ステアリングは今回のフルモデルチェンジの大きなアイコンのひとつで、なんと楕円なのだ。しかもハンドル回しをしても妙なイナーシャがない。楕円なのに回転慣性を感じさせないのだ。これは本社エンジニアによれば「EPSのファインチューニングのたまもの」ということらしい。そしてギヤ比のセッティングでいくらでもクイックにまた、スローにもすることは可能で、数多くのテストでベストと判断されたスペックになっているはずだ。それでもクイックに感じるのは腕の動く距離と回頭性がコレまでと違うと感じているからだ。このフィールは個人差があるので、試乗してみることをお勧めする。

プジョー 208GT フロント

プジョー 208GT リア01プジョー 208GT サイド

さて、走りを魅力的にしたGTについてレポートしよう。

プジョー 208GT エンジン
1.6L直噴ターボエンジンを搭載。RCZや508にも搭載される信頼性の高いエンジン

エンジンは1.6L直噴ターボ(EP6CDT型)エンジンはこれまでRCZや508、そしてシトロエンにも数多く搭載してきた信頼性の高いPSAとBMW共同開発のエンジン(コードネーム:プリンス)で、ツインスクロールタービンを採用している。2.0LNAなみのフィールで115kw(156ps)/6000rpm、240Nm/1400-3500rpmというスペック。低回転から最大トルクを発揮する最新のユニットへとチューニングされていることがわかる。

プジョー 208GT メーター
GTは6速100km/h時に2000rpm付近を示す

アクセルを踏み込むと鋭い加速をし、軽量・コンパクトボディの208はアッという間の加速をする。瞬間的なパンチ力やトルク感は申し分ない。それでいてエンジン音は静かだからクールだ。さらにシフトフィールが上質な6MTを操れば、手の平まで気持ちよくなる。156psを伝えるクラッチは軽い。しかも半クラッチのポジションが分かりやすく、だれでも扱いやすいクラッチペダルだ。

プジョー 208GT ホイール
GTは205/45R17を装着

タイヤは17インチを履く。205/45R17だがしなやかなフィールはプジョーらしく、しかもサイドウオールがしっかりしているフィールも伝わるので、コーナーへも積極的にアプローチできる。今回の試乗はワインディングロードではないので、はっきりとしたフィールはつかめないが、ポテンシャルの高さはしっかり伝わってきている。まるで「もっとコーナーを楽しもうよ」と語りかけられているようだった。

プジョー 208GT ペダル
GTはアルミペダルとなり、半クラッチが分かりやすく、踏力も軽い

こうして1.2LのNAと1.6Lターボと乗ってみてポイントだと感じるのは、マニュアル・トランスミッションだったと思う。1.2Lに爆発的パワーはない、どちらかといえば非力な部類だがMTであるためドライバーの意思どおりに加減速ができ、振りまわせる楽しさがある。そして1.6Lターボはパワフルで、MTを使いこなすことでスポーツドライブの領域に飛び込め、楽しさが倍増していくことだ。国内ではATやCVT、DCTといった2ペダル主流の時代にA、B、Cという3ペダルは異質になってしまったが、操る楽しさの基本がここにもあるのは間違いない。

プジョー 208GT 運転席
GTのインテリア。ダッシュ周りの造形がデザインされこだわりを感じる
プジョー 208GT パノラミックガラスルーフ
シエロとGTにはパノラミックガラスルーフが標準装備される
プジョー 208GT リアシート
  

 

さらに言えば、これまでBセグメントの圧倒的存在としてフォルクスワーゲンのポロがある。この208はガチンコ対決に相応しいレベルで、比較する局面ではポロを超える部分も存在する。素っ気ないインテリアや無骨なデザインに、性能がしっかりしたドイツ勢に対し、賓の良さやおしゃれ感が高いフランス勢というイメージがある。つまり、工業製品のスペックによる部分ではやはりポロに軍配があがり、操作フィールではどちらも特徴的でそこにはエンジニアのフィロソフィーが存在する互角な戦いがある。そしてデザインやブランドイメージではフランスのおしゃれ・賓といったもので208が上回るということだろう。ユーザーがBセグメントに求めるものによって、評価が分かれるよいライバル関係だと思う。

プジョー208価格表

プジョー208主要諸元表

プジョー208装備

 

プジョー 208 公式サイト

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