プジョー3008 Hybrid4 世界初のディーゼルハイブリッド まもなくデリバリー

 

2010年8月末にプジョーは世界初となる、ディーゼルエンジンとモーターを組み合わせた3008ハイブリッド4を発表した。

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↑プジョー3008ハイブリッド4

3008ハイブリッド4は、2008年のパリサロンで発表したコンセプトカー、プロローグ・ハイブリッド4が原型で、その1年後の2009年のフランクフルトモーターショーで3008に搭載し量産前提モデルとしてベールを脱いでいる。

今回発表された3008ハイブリッド4は完全な市販バージョンで、フランス国内の工場で生産に入り、来春にはヨーロッパ市場にデリバリーされる計画だ。

3008ハイブリッド4の開発コンセプトは、優れた環境適合性と高効率性、ドライビングプレジャーの両立である。またプジョーは、この3008ハイブリッド4はクロスオーバーカーでありセダン、コンパクトMPVそしてクーペたる資質を持っている。搭載されるエンジンは、ユーロ5適合の最新4気筒ターボディーゼル、2.0LのHDiFAPエンジンで、163psを発生する。

モーターはリヤアクスルに搭載され最高出力は37ps。エンジンとモーターの総合出力は200psとなるのでかなり強力なパワープラントといえる。ディーゼルエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドカーシステムは世界初の存在で、当然ながらヨーロッパの道路環境ではガソリンエンジンを採用したハイブリッドカーより燃費は有利である。

環境性能とドライビングプレジャー

ハイブリッド4のハイブリッドシステムとしてはパラレル方式で、前後輪を異なるパワーユニットで駆動する4WDシステムとなるが、ZEV=ゼロエミッション、すなわちエンジンを停止したモーター走行も選択できる。燃費は欧州ミックスモードで3.8L/100km、CO2排出量は99g/kmという数値だ。この燃費は同等エンジンのクルマに比べ35%低減できているという。モーターの補助を加えた加速ブースト状態で総合出力200psとなり、最大トルクは500Nm(フロントはエンジンによる300Nm、リヤはモーターによる200Nmの合計)となり、したがって3008ハイブリッド4はCO2/最大出力レシオで新たな記録を打ち立てたといえる。

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↑3008ハイブリッド4 システム

3008ハイブリッド4はこうした燃費効果、つまり環境適合性だけでなく、次の要素により新次元のドライビングプレジャーを備えているとしている。つまり優れたドライバビリティと高性能の両立。「ZEV」、「4WD」、「スポーツ」、「オート」という4モードを選択でき、ZEVモードでの排気ガスなしの静粛性、4WDによる圧倒的な安心感と環境に優しいという満足感は、ドライビングプレジャーと位置づけているのだ。

もともとロードホールディングに定評のある3008だが、ハイブリッド4はリヤモーターとマルチアームサスペンションにより、優れたロードホールディング、安定性、トラクションを高いレベルでバランスさせている。そしてドライバーは、ドライビングプレジャーを演出する4つのドライブモードをセンターコンソールのノブで任意に選択できる。それをひとつづつ見てみると、

オート:エンジン出力、モーター出力、トランスミッションをECUが自動制御することで燃費とドライビング性能を両立させる。

ZEV:モーターのみでの走行。もちろんバッテリーに電力が十分存在しているときに使用できる。

4WD:前輪はエンジン、後輪はモーターによって駆動される4WDモード。

スポーツ:トランスミションはより高いエンジン回転数でクイックに変速され、エンジン、モーターの出力も最高レベルに維持される。

以上の4つのモードが選択でき、日本車にありがちなECOモードはなく、強いていえばオートがそれに相当する。

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↑センターコンソールに設置されたドライブセレクトとシフトレバー

ディーゼルエンジンとモーターユニット

 

トランスミッションは電子制御6速シーケンシャルMT(2ペダル)を採用している。このトランスミッションはMCP、あるいは6AMTと呼ばれるが正式型式名はBMP6で、PSA(プジョー・シトロエン・グループ)で開発したものだ。バランシュエンヌ工場で年間80万基生産される今後の戦略的な主力トランスミッションであり、すでに一部の車種に搭載されている。VWグループのDSGと同じ位置付けと考えてよいだろう。なお変速はシフトレバーでもステアリングパドルでも行うことができる。

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↑BMP6のギヤ比

このユニットはアイドルストップ機構とも抜群のマッチングを示す。ハイブリッドシステムは、郊外走行、ロングドライブに最適なディーゼルエンジンと低速走行やストップ&ゴー、エネルギー回収ができるモーターを組み合わせたパラレル・ハイブリッドとしている。このため、急加速時にはモーターをオーバーテイクブースターとして使用することもできる。

レイアウト的には、リヤアクスルにモーター、インバーター、コンバーターなどを集中配置していることも大きな特徴だ。もちろんリヤアクスルの駆動はバイワイヤーで行われ、キャビンスペースに対する影響は何もない。このレイアウトは、エンジンルームの設計変更が不要であり、重量配分的にも有利である。またリヤモジュールはコンパクトかつシンプルで、コスト的にも有利である。このモジュールを他車に搭載することも容易なことがわかる。

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↑リヤアクスルに搭載されるモーター類モジュールと出力

ディーゼルエンジンは、ユーロ5適合の1997ccで、120Kw/3750rpm、300Nm/1580rpmを発生。タービンブレード角が可変し全回転域で最適な過給ができるVGターボ、コモンレール式燃料蓄圧、8孔、200Mpaの高圧ソレノイド・インジェクター、DPF(ディーゼル・粉塵フィルター)と酸化触媒を装備している。8Kwの高電圧スターターをエンジンとトランスミッションの間に装備し、スタート&ストップに対応している。また、60km/h以下ではセーリング(無動力巡航)も行うようになっている。

リヤのモーターは常用27ps/100Nm、最高37ps/200Nmを発生する永久磁石同期型モーターだ。このモーターは減速エネルギー回生を行う役割も持っている。PTMU(パワートレーン・マネージメント・ユニット)には電力を制御するインバーター、コンバーターが含まれる。電圧制御は150V〜270Vの範囲。コンバーターは200Vを12Vに変圧する役目を果たしている。なおモーターやこれら電力制御はボッシュ製だ。サンヨー製のニッケル水素のメインバッテリーはリヤモジュールの前に配置され、12Vサブバッテリーはエンジンルームに設置されている。

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以上のようなスペックを持つプジョー3008ハイブリッド4の価格は未発表だが、4万ユーロ強と推測される。PSAプジョー・シトロエン・グループは、今後はハイブリッドカーの展開を加速し、さらにショートレンジの都市型モビリティ用としてEVを展開していくなど、ドイツメーカーに先んじてつぎつぎに新たな手を打ってきている。ハイブリッドカーに関してドイツメーカーは高価格車カテゴリーにしか実用化を行っていないが、PSAはそれとは異なる戦略を持っていることが分かる。

文:編集部 松本晴比古

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