メルセデス・ベンツのミニバン「Vクラス」が大幅改良を行なったので試乗してみた。
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Vクラスは2015年にデビューしているので、9年目となるロングライフなモデルだ。今回は内外装を刷新し、エア・サスペンションの装備、最新のMBUXやADASにアップデートして2024年10月から販売が開始されている。
車型の基本は標準ボディとロング、そしてエクストラロングの3ボディタイプがあり、試乗したのはロングボディと、高級仕様の「エクシクルーシブ ロング プラチナスイート」の2モデル。全長は4895mm〜5380mm、全幅1930mm、全高1880mmとボディサイズの大きさは申し分なく、高級感と存在感を強く感じるミニバンだ。
今回の改良でパワートレイン系は変更なく、ディーゼルの一択。OM654型の2.0Lディーゼルターボで120kW(163ps)/380Nmの出力で、9速ATを搭載している。これはどのモデルにも共通となっている。
ハイライトは、乗り心地を改善したエアサスペンションの装備と、内外装の変更がポイントで、まず内外装の変更では、ハイエンドモデルの「エクスクルーシブ ロング プラチナスイート」にはボンネットにスリーポインテッドスターが装着さる。
これは標準車には装備されないので、所有欲をそそる装備かもしれない。そしてフロントのラジエターグリルのデザインが大きく変更され、縦方向に面積を大きく取ったデザインになった。またグリルデザインにも違いを持たせ、さらにグリルフレームが光るタイプもハイエンドモデルには装備されており差別化がはっきりされている。ちなみに4タイプのアルミホイールが用意されているが、いずれも新デザインに変更されている。
インテリアでは2列目をセパレートシートにした7人乗車が試乗車で、特にプラチナスイートはエクスクルーシブなシートを装備し、長距離の快適移動を目指した装備になっている。スライドドアを開け、目に入る2列目シートの豪華さには、さずがメルセデスと頷く
シートのボリュームがたっぷりとあり、シート内側にタブレットなどが収納できるスペースを設けるなど、飛行機のエグゼクティブクラスをイメージさせるシート構成になっている。電動のオットマンやリクライニングを使い横たわれるリラックスした空間を作り出し、またPC作業に困らないがっしりとしたテーブルなど、そうした剛性感やがっしり感から伝わるフィーリングで高級品であることがアピールされている。容易にアウトバーンを高速巡行するシーンが脳裏に浮かぶのだ。
しかし、この2列目のシートの操作系が渋く、とても女性では動かすことができないほど重かったのだ。これは個体の問題なのか?不明だが、試乗した2台とも同じように重かったのは残念。
とくに3列目への乗り込みをするための跳ね上げは、難しく、結局スタッフに手伝ってもらってようやく乗り込めた。じつはスライドさせるだけでも3列目には乗り込めるのだが、そのスライドさせることすら重く、バカ力が必要だった。そんな苦労をして3列に座るとかなり広いことを体験する。180cmの自分でも余裕で座ることができる快適性があった。
運転席周りは最新のメルセデスに共通する仕様に変更されている。例えばエンジンスタートがボタン式に変更され、ディスプレイは横長の一枚パネルのモニターになり、トリム周りにも高級感があり、メルセデスらしいインテリアに満足度は高い。
ただセンターコンソールにあるタッチパッドは、利き手ではない左手で走行中に操作するのは無理で、停車時に使うイメージ。とはいえ、このタッチパッドを使わずともパネル操作はできるので、どういった使い方が適しているのか短時間では見つけられなかった。
MBUXではAIの精度がすこぶる上昇していると説明があったが、こればっかりは日常的に使うユーザーの判断のほうが正しい。ただ、言語認識は問題なく会話型で操作できていた。
さて、試乗しての印象をお伝えすると、乗り心地が素晴らしく改善できたかというと、その評価は厳しい。試乗エリアが一般道で、路面状況もとくに良いわけではなく、部分的には荒れた路面もある場所というのも影響したと思うが、大きな改善を体感するまでには至らない。
高速道路を走行していないため、断定するのは難しいがエアサスペンションを装備していれば、高速道路での入力はうまくいなす可能性が高いからだ。一般道で厳しいと判断しているのはハーシュネスで、突き上げがあり、硬いショックを感じる。また、静粛性でもそれほど魅力的には感じられず、アルファードには及ばない。
ドイツ車で長距離移動を想定したミニバンと考えればアウトバーンを快適に過ごすことになり、試乗環境の違いが大きかった印象だ。
ミニバンのおもてなしや気の配り方、使い勝手の細かさなどは、日本車の方が得意だというのは感じつつも、高級感や豪華さの作り方はさすがメルセデスのミニバンだと感じる部分もある。とくに「重さ」から伝わる上質感や高級感といったものの違いはある。それは質量だけでなく操作系からも感じ取れる部分であり、結果的に全体の印象ではやはりプレミアムモデルに乗っていたことを味わうことができたことになる。
Vクラスの人気グレードはV220d ロングの「エクスクルーシブ・プラチナスイート」でハイエンドモデルが人気ということだ。