2015年2月25日、メルセデス・ベンツ日本はメルセデス・ベンツの新しいサブブランド「メルセデス・マイバッハ」を導入し、その第一弾としてメルセデス・マイバッハSクラスを発表した。受注も同日から開始されている。
このマイバッハSクラスの紹介の前に、マイバッハの歴史を振り返っておこう。マイバッハは、ゴットリープ・ダイムラーと共同してエンジン開発を行なっていたヴィルヘルム・マイバッハが独立し、1909年に創業した超高級車メーカーの名称である。その象徴的な存在としては、マイバッハ・ツェッペリンが知られている。マイバッハはツェッペリン飛行船用のV12型エンジンを開発した経緯からツェッペリンの名称を用いたのだ。
第一次世界大戦後は大排気量の自動車、鉄道用のエンジン、戦車のエンジンを開発、製造を行ない、第二次世界大戦後の1960年にマイバッハはダイムラー・ベンツ社の傘下に加入。このときに大型エンジン開発・製造部門はMTUと改称されている。
マイバッハの車名が復活したのは2002年のことで、ダイムラー・クライスラー社がハイエンドのプレステージカーのブランド名として使用した。復活したマイバッハは、57、62(それぞれ車両全長を示す)というモデルを発表した。このマイバッハは4800万円~1億4350万円の価格で世界最高級のリムジンであることを訴求したが、ロールス・ロイス、ベントレーに対抗するには及ばず、このプレステージカーのプロジェクトは2012年に終了し、製造も打ち切られた。
しかし2014年のロサンゼルス・モーターショーにて、メルセデスのサブブランドとしてメルセデス・マイバッハが改めて復活することが発表された。同じ年には、広州モーターショーでワールドプレミアが行なわれている。やはりメルセデス・ベンツとしては、BMWのが持つロールスロイス、フォルクスワーゲン・グループが持つベントレーというプレステージカーに対抗するブランドを欠くことは許されなかったのだ。
今回復活したマイバッハは、Sクラスのシャシーやボディを使用し、「メルセデス・ベンツ マイバッハ Sクラス」という名称となった。メルセデス・ベンツにおけるサブブランドと再定義されている。言い換えると究極のエクスクルーシブ性を追求したSクラス・モデルということになる。
このため新型マイバッハ Sクラスは、Sクラスの威厳あるフロントマスクやクーペを思わせるボディフォルムはそのままに、 Sクラスのロングモデルよりさらに20cm長いホイールベースとしている。リヤのドア幅が66mm狭められ、Cピラーに三角窓が移設された6ライト・リムジンとなり、ドア開口部より後方にリヤシートが位置し、外からの視線を遮りながら究極の居住性を確保している。
Cピラーには、丸みのある三角形の中に2つのMをあしらった「Maybach Manufaktur」(マイバッハ・マヌファクトゥーア)のエンブレムが装着され、専用の20インチ鍛造アルミホイールを装着している。
マイバッハSクラスのコンセプトは「五感で感じる極上の快適性」と「未来へつながる知能」をアピールするショーファーカー(運転手付き)リムジンとされている。この五感で感じるとは、以下のような装備で表現されている。
例えば左右のフロントシート背面の10インチ大画面モニターとワイヤレスヘッドホンによるリヤ・エンターテインメントシステム、ホットストーン式マッサージ機能、ドイツのハイエンドオーディオ専門メーカーのブルメスター社と共同開発したサウンドシステム、専用の香料などなど。そしてサーモスタット制御のクーリングボックスで冷やした飲み物は、ドイツの歴史ある高級銀食器メーカー「ロベ &バーキング」社がマイバッハ専用に製作したシャンパングラスで楽しむことができる。
そして「未来へつながる知能」は、Sクラスで実現されているステレオカメラ、複数のレーダー、赤外線カメラ、超音波センサーなどを組み合わせたドライバー支援システム。そしてステレオカメラを使用したフルアクティブ・サスペンションを意味する。
マイバッハSクラスのインテリアは、最高の素材をクラフトマンシップによる手作りで仕上げたウッドトリムや、本革で仕上げられている。リヤシートは左右ともに座面の下からせり上がるレッグレストを備え、スイッチ操作でバックレストが43.5度までリクライニング可能なエグゼクティブシートを採用している。
またヘッドクリアランスは、ルーフラインの形状変更によってSクラスよりも拡大されている。なお、後席からも助手席を自動で前方にスライドしながら倒せ、ヘッドレストの折り畳みも可能なショーファーポジション機能も備えている。左右リヤシート用の格納式テーブルは、片手で簡単に出し入れが可能で、筆記作業がしやすいよう表面にはレザーが張られている。
リヤシートのフルリクライニングポジションや、最高の静粛性が得られるようにエアロダイナミクスの向上による風切り音の低減、遮音材、特殊なシーリング技術などが投入され、マイバッハSクラスの後席は、量産車として世界最高の静粛性を実現しているという。
また後席の安全性もトップレベルだ。万一の前面衝突の際には、座面に内蔵されたクッションエアバッグが展開することで、リクライニング状態でシートベルトの下から身体が滑り出すサブマリン現象を防止。また、シートベルト幅を約3倍に膨張させることで、後席乗員の肩部や胸郭にかかる衝撃を軽減し、負傷リスクを低減するSRSベルトバッグも装備している。
リヤドアを開けると後席左右のシートベルトバックルの受け側が約5cmリフトアップし、先端部を光らせて着用しやすくするアクティブベルトバックルも装備しており、シートベルトバックルを挿入すると自動で引き込むことで腰部や胸部のベルトの弛みを少なくして正しい装着位置に調整し、乗員の拘束性能を高める。
マイバッハSクラスのラインアップは、最大出力530ps、最大トルク830Nmを発生する6.0L・V型12気筒ツインターボエンジンに7速AT(7G-TRONIC)を組み合わせたマイバッハS 600と、 最大出力455ps、最大トルク700Nmを発生する4.7L・V型8気筒ツインターボエンジンに9速AT(9G-TRONIC)を組み合わせたマイバッハS550を設定している。