2015年1月のデトロイトモーターショーでデビューしたので写真では見たことはあったけど、実際、目の前に現れたメルセデス・ベンツGLEクーペは、息の飲むほど革新的な新ジャンルのSUVだった。<文:ピーターライオン/Peter Lyon>
Aピラーからテールライトに流れて落ちるフォルムはまさにクーぺスタイル。今までの通常のセグメントというか、ジャンルの壁を打ち破って、今までにないSUVのスタイリングに挑戦することって素敵じゃないか?
メルセデス・ベンツが高級SUVジャンルに、今ちょっとした革命を起こしていると言える。それはライアップに新しく加わったGLEクーペだ。これは従来のMクラスのモデルチェンジ版となったGLEと並行して開発されたモデルである。
海外でそのGLEクーペに初めて乗る機会を得たが、場所はドイツ・ミュンヘン近郊の一般道やアウトバーン。そこで試乗してみた感想は、GLEはBMW X6の強力なライバルになるだろうということだった。リヤエンドの斬新なシルエットが話題になっている。スポーツクーペとSUVを足して2で割ったような外観は、軽快な走りを予感させる。
その革新的なシルエット以外に、GLEクーぺの最大の特徴は、9速オートマチック変速機とフルタイム4輪駆動システムが組み合わされたところだ。9段ATはもちろん、燃費のためでもあるけど、同時に細かい変速制御により、エンジンが最も力を出すトルクバンドをしっかり使わせてくれるメリットも大きい。
パワートレーンはいくつか用意されているが、すべて兄弟車となるGLEと同じというわけではない。5種類の仕様があるけど、僕が乗れたのは3種類。6気筒・3.0Lディーゼルターボの「350d」は258psと、V6型の3.0Lガソリンターボの「450AMG」328ps仕様。いずれもAWDモデルで、トランスミッションは9速AT。そして迫力の5.5L ・V8型のAMGの「GLE63 S 4MATIC」。こちらは追って登場する。
350dのエンジンは強靭で、低速トルクは当然太いけど、高回転域でも意外と反応がいい。1600rpmで620Nmと、がっちりと太いトルクを発揮する。標準仕様の9速ATはとても滑らかで、旧Mクラスの7速ATユニットよりずっとシフトスケジュールが速いしスムーズだ 。<次ページへ>
クラストップの走りと乗り心地を可能にするのは、3つの秘密兵器。1つはエアスプリングと新式のアダプティブ・ダンピング・システム「ADSプラス」。それに加え、コーナリング時にしっかりとしたペースを保つことができるのは、トルク・ベクタリング機能で強化された4WDシステムだ。
それにコンフォートやスポーツ等からの4つのモードが選べるドライビングモードも優秀だ。60km/h以上だと、手応えのあるステアリングフィールはすばらしい。ただ、低速での軽さには慣れが必要かも知れない。
GLEクーぺは当然、高級SUVだから、車重は2250kgと相当に重いし、SUV並みの車高で当然だが全高が高い。でも、この3つの技術のおかげで、重量を感じさせないし、スポーツセダン並みの走りができる。
カーブを曲がる時、ハンドルを切れば車体は素直に言うことを聞いて、ドライバーに自信を与える。左の高速コーナーに入っても右フロントが沈まないでフラットな姿勢をキープ。前輪はスティール・スプリング、後輪にはオプションのエアスプリングという組み合わせで、不思議なほどロールが抑えられながら、凸凹の路面の衝撃も吸収し、BMWの走りと並ぶほどだと感じた。
室内は、高級感のある上質な雰囲気を備えたキャビンで、メルセデスらしい伝統的な空間だ。センターコンソールもメルセデス各車のスイッチ類を採用していて、格別な新しさはないけど、なんら問題はない。というのも、ドライビング・ポジションもいいし、室内レイアウトは、期待どおりの働きをしてくれるからだ。欲を言えば、マルチメディア・システムのロータリー・コントローラーのセッティングも、BMW X6のiDriveと同程度の使いやすさが欲しいところか。
このGLEクーペは、全く新しくて斬新な外観を提供するだけでなく、ライバルを上回るほどの走り、乗り心地、そして技術力で登場してきたと感じた。