メルセデス・ベンツGLC試乗記 しっとりとした乗り味だが、重厚感が薄く、ザラつくエンジン

マニアック評価vol424
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2016年のメルセデス・ベンツはSUVイヤーだという。年明け早速新型のCクラスベースのSUV「GLC」が発表され、今回はその試乗をしてきたのでレポートしたい。<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>

■ポジショニング

GLAとGLEの間にポジションするGLCは先代のGLKの後継モデルで、ネーミングを分かりやすくするためCクラスベースのSUVということでGLCと名称が変化している。現在の国内ラインアップはGLC250の4MATIC(4WD)だけで、グレードとしては標準車が628万円、Sportsが678万円、Sportsの本革仕様が745万円、そして250台限定のEdition1が796万円となっている。

近年ラインアップを充実しているメルセデス・ベンツのGLシリーズ。最新モデルがこのGLCだ
近年ラインアップを充実しているメルセデス・ベンツのGLシリーズ。最新モデルがこのGLCだ

このように現状は250グレード、つまり2.0Lガソリンターボエンジンに9速AT、そして4MATICのいわばワングレードで、装備違いが3モデルあるというラインアップだ。ボディサイズは全長4660mm(4715mm)×全幅1890mm(1810mm)×全高1645mm(1430mm)、ホイールベース2875mm(2840mm)。()はCクラスセダン250Sportsのボディサイズ。

最低地上高は180mmを確保。本格派ではないが、4WDシステムと併せて多少の悪路は走破できる
最低地上高は180mmを確保。本格派ではないが、4WDシステムと併せて多少の悪路は走破できる

そして、名称の変更はメルセデス全域にわたるもので、コアモデルのA、B、C、E、Sの各クラスに対してSUVがGLで始まり、4ドアクーペがCLで始まる。そしてロードスターモデルはSLが付くというように今後統一されるということだ。

このサイズのSUVとなるとメインマーケットが北米であることが想像でき、アラバマ工場での生産をイメージするが、GLCはドイツ・ブレーメン工場での生産となる。

人気を集めているGLAよりも全長で230mm、全幅で85mm、全高で140mm、ホイールベースで175mm大きなGLC
人気を集めているGLAよりも全長で230mm、全幅で85mm、全高で140mm、ホイールベースで175mm大きなGLC

GLCはCクラスとプラットフォームを共通とするが、SUV仕様とするための変更は当然行なわれている。ボディ構造では高強度スチールが59%、ホットスタンプ材が11%、超高張力鋼が17%、アルミ材が13%という比率で、軽量化と高剛性化をしている。

また4MATIC搭載モデルもあるため、ミッショントンネルの大きさもCクラスとは別物になっている。この4WDシステムはオンデマンド式が多い昨今、FR駆動ベースのSUVを名乗っているだけにセンターデフを持つフルタイム式で、フロント33:リヤ67の駆動配分で常時4WD走行となる。

ヘッドライトは走行状況に応じて5つのモードを自動選択するLEDインテリジェントライトシステムを標準装備
ヘッドライトは走行状況に応じて5つのモードを自動選択するLEDインテリジェントライトシステムを標準装備
標準装着タイヤはピレリのオールシーズン「スコーピオン・ヴェルデ」
標準装着タイヤはSUVらしくピレリのオールシーズン「スコーピオン・ヴェルデ」を履く

搭載するエンジンは2.0L直噴のガソリンターボで、211ps/350Nmというスペック、JC08モード燃費は13.4km/Lだ。このエンジンは日産スカイラインにも供給されている最新のダウンサイジングコンセプトのエンジンとなっている。メルセデスでは「Blue DIRECT」の名称を使っている。

搭載エンジンは2.0L直列4気筒ターボでアイドリングストップ機能付き
搭載エンジンは2.0L直列4気筒ターボでアイドリングストップ機能付き

このエンジンに9G-TRONICという9速ATを搭載している。7G-TRONICと比較しトルコンのアルミ化などでの軽量化(約1kg)や使用オイルの粘度を下げることで撹拌抵抗を減らすなどの改良があり、燃費向上を意識している。もちろん、変速ショックなどは感じないし、何速で走行しているのか?さっぱり見当もつかない滑らかさがある。

◆インプレッション

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ドアを開けシートに座って各部を眺めてみると、アルミ削り出しのような鈍く光るデコレーション、レザーシートやステアリングの感触など高級感がある。ピアノブラックも迫力があり高級車であることが一目瞭然だ。またSUVということでシート位置がセダンより高く、乗り込みがしやすい。女性だけでなく男性でも「楽」に感じると思う。

フラットボトムのステアリングホイールが特徴的で質感の高いインパネ
フラットボトムのステアリングホイールが特徴的で質感の高いインパネ
ステアリングホイールには音声認識機能やハンズフリー電話のスイッチを装備
ステアリングホイールには音声認識機能やハンズフリー電話のスイッチを装備
左右の速度計と回転計の間にカラー液晶モニターを配置する視認性の高いメーター
左右の速度計と回転計の間にカラー液晶モニターを配置する視認性の高いメーター
ライト系スイッチの上にはレーンキープや360°カメラなど安全系装備のスイッチが並ぶ
ライト系スイッチの上にはレーンキープや360°カメラなど安全系装備のスイッチが並ぶ
8.4インチワイドディスプレイにはナビや地デジTVなどを表示可能
8.4インチワイドディスプレイにはナビや地デジTVなどを表示可能
PCのマウスのようなコントローラー表面はタッチパッドになっていて指先で操作できる
PCのマウスのようなコントローラー表面はタッチパッドになっていて指先で操作できる

走りだしてみると滑らかで、しっとりとした乗り味を感じる。フルタイムAWDでありながらドライブシャフトやプロペラシャフトの回転抵抗やタイヤの転がり抵抗などのフリクションを感じることがなく、実に滑らかに走る。

しかし、どこかで重厚感が薄れていることに気づく。それは軽量化が進むと実際の質量が軽くなるわけで、人間はどこかでその質量を感じて重厚感という高級車ならではの満足感へつなげているのだと思う。

新型のSクラスセダンあたりからその傾向があり、かつてのメルセデス・ベンツらしい重厚感が薄れているのは事実だ。軽いながらもどっしりとした感じをどう造りだすのかが現在の課題なのかもしれない。

とは言え、超高張力鋼板や熱間成型の超高張力鋼、アルミ材を使うことなどで剛性というポイントでは従来よりもアップし、スタビリティは高まっている。オフロードや凸凹の路面を走行してもボディのしっかり感は伝わり安心感は高い。

ドア閉め感もしっかりあるし、こうした悪路での剛性感も感じる。それでも高級車だけが持つ重厚感を感じないのはなぜなのだろうか?疑問が残った。

通常のコンフォートモードでのステアフィールはリニア感があり、少しの操舵で少し回頭する動きは気持ちよく、またステアする方向は軽めのセッティングで、切り戻しはやや重くする配慮もあるので、ハンドルが軽すぎる印象も薄い。

サスペンションもロールが自然で気持ちいい。乗り心地も良く235/55R-19という大きいタイヤサイズでありながらエアボリュームがあるので、さらにプラスに働いているのだろう。メルセデスの最近のトレンドとしてアジリティコントロール・サスペンションがある。走行状況に応じて減衰力を調整するもので、セレクティブ・ダンピングシステムと呼んでいる。

ドライビングモードにはECO、Comfort、Sport、Spotr+の4段階があり、それにIndividualの個別設定がプラスされる。制御されるものはステアリング、エンジン、トランスミッション、アイドリングストップ機能のオン/オフなどが変更される。

エンジンのフィールはイマイチで、ざらつきを感じさせるエンジンなのだ。この原因は直噴化しているための噴射ノイズと呼ばれるもので、高圧で噴射するがために発生するノイズだ。これが耳から聞こえてくるのではなく、アクセルペダルを通じて右足の裏側で感じてしまうのだ。

このあたりに関しメルセデス・ベンツ日本の商品企画担当者に聞いてみると「周波数なんですよね。ちょうどアクセルで感じてしまう周波数帯のノイズになっているからなんです」と認識している様子。そうなれば、当然本社サイドも対策をするだろうから、年次改良などで解決してくる可能性が高いと思う。

シートはベーシックなGLC250がファブリック、スポーツがレザーコンビと本革仕様の2種
シートはベーシックなGLC250がファブリック、スポーツがレザーコンビと本革仕様の2種
GLC250スポーツはメモリー機能付きパワーシートを標準装備
GLC250スポーツはメモリー機能付きパワーシートを標準装備
サンルーフは車速に合わせてチルト角度を調節したり、降雨時はオープンからチルトに自動変更する
サンルーフは車速に合わせてチルト角度を調節したり、降雨時はオープンからチルトに自動変更する
リヤシートは4:2:4分割可倒式。テールゲートはキックセンサーで自動開閉できる
リヤシートは4:2:4分割可倒式。テールゲートはキックセンサーで自動開閉できる
後席はラゲッジルームのサイドにあるレバーでワンタッチで折り畳むことが可能
後席はラゲッジルームのサイドにあるレバーでワンタッチで折り畳むことが可能

リヤの収納は9インチのゴルフバッグが3本搭載できるデモンストレーションがあり、十分に広く先代のGLKよりも通常で100L容量が増えているという。また、3分割のリヤシートはワンタッチでフラットな環境が作れるのもうれしい。

バンパー下へ足を蹴り込むしぐさをするとリヤゲートが開くイージーアクセスも装備され、ユーティリティはよいだろう。

もちろんディストリニックプラスも装備でき、半自動運転の領域もカバーしている。メルセデスらしい安全領域の確保は万全だ。

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