メルセデスベンツの電動車EQシリーズにガソリン車のGLBをベースにしたBEVモデル「EQB」が2022年7月に発売され、試乗してきた。
ボディサイズは全長4685mm、全幅1835mm、全高1705mm、ホイールベース2830mmで、Dセグメントサイズの3列シートを持つSUVだ。ラインアップには「350 4MATIC」とFWDの「250」があり、350 4MATICに試乗してきた。
350 4MATICはフロントに190ps/385Nmの出力があるモーターを搭載し、出力合計は215kW(292ps)/520Nmと強力だ。0-100km/h加速も6.2秒と瞬足で、通常はリヤモーターで駆動し、高負荷時にフロントモーターも駆動する前後可変駆動システムになっている。
走行シーンに合わせ回生モードを楽しむ
走行フィールは言うまでもなく滑らかで静かに動き出し、アクセルを踏み込めば背中を蹴飛ばされたような加速をする。リヤモーター、フロントモーターは永久磁石同期型モーター(PM型)と磁石を使用しない非同期型(誘導型)で、前後で違うタイプのモーターを搭載している。その違いを体感することはないが、技術的アプローチとしては興味深い。
回生ブレーキはパドルレバーで変更ができる。左側のパドルレバーは「D-」でやや強めの回生になり、右のパドルレバーを引くと「D+」になり、コースティングになる。左右同時に引くと「Auto」となり、これは前走車との車間距離など道路状況に合わせて自動で最適な回生ブレーキをかけるモードになる。
実際の走行ではこのAutoモードが便利で、ほぼブレーキペダルを踏むことなく運転でき、また前車との車間距離も自動で調整するので、交通量の多い場面では運転疲労軽減につながると感じた。一方D-はかなり強めの減速をするので、交通の流れに沿って走行する時に使用するというより、ワインディングなどスポーティな走行を楽しむ場合に有効なモードだと感じた。
もちろんD+のコースティングは抵抗なくタイヤが転がっていくので、より滑らかに走行するがエネルギー回生をしないので、バッテリーへの影響は出る。下り坂や高速道路などでさまざまな回生モードを駆使する遊び方もできるので、興味のある人は試してみるといいだろう。
バッテリーはリチウムイオンバッテリーで66.5kWhの容量を持ち、WLTCモードで468kmの航続距離を持っている。また250は520kmというロングディスタンスになっている。急速充電は100kWまでアップデートされており、CHAdeMO規格の最高レベルにも対応している。
試乗では都内を出発し千葉県富津付近まで走行し150km程度の走行距離だったが、残量も60%程度は残っており、十分な航続距離があることを体感した。
EQシリーズのデザインテーマをEQBで表現
エクステリアデザインはEQシリーズ共通のプログレッシブ・ラグジュアリーがテーマになっており、前後のオーバーハングが短いBEVならではのプロポーションで、ロングホイールベースが強調されて見えるデザインだ。
インテリアもEQシリーズ共通のデザインテーマで、アルミルックのチューブ形状のデザインがドア、コンソール、助手席側ダッシュボードなどに採用されている。エアアウトレットのデザインもジェット機のエンジンを想起させるデザインでアグレッシブな印象だ。
3列目のシートはやはりエマージェンシー・シートな存在で165cmまでに対応、としているのだ。小柄な大人なら座れるものの、窮屈な体勢になってしまう。乗車定員は7名。シートバックを倒すとそれなりの荷室容量になり、2列目も倒せばフルフラットなカーゴスペースとして利用できる使い勝手もあった。
ただトノカバーを使用している場合、3列目の格納時に取り外す手間があり、頻繁に3列目を使ったりする場合は煩わしさが残ると思う。
試乗車の価格は870万円で、AMG ラインパッケージとメタリックペイントがプラスされて935万2000円。
先頃EQE、EQSも発表されたので、メルセデスのEQシリーズはフルラインアップになった。国内でBEVをガソリン車の代替として使うには、急速充電ポイントが増えたとは言え、まだ物足りなさはあるだろう。だが、ガソリン車の代替ではなく別な乗り物という意識で捉えると、これまでにない新しい価値を提供する乗り物という実感は得られるので、アーリアダプターにはおすすめのモデルだ。