メルセデス・ベンツ新型Eクラス試乗記 Sクラス譲りの高級志向<レポート:佐藤久実/Kumi Sato>

マニアック評価vol462
Sクラス(2013年発売)やCクラス(2014年発売)など、最新世代のメルセデスを見れば、新型Eクラスがモデルチェンジによって大幅にアップグレードされることは想像に難くなかった。そして、その期待値を見事なまでに具現化したクルマである。

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新型E200。2.0Lガソリンターボモデルの試乗レポートはレーシングドライバーでもある佐藤久実さん

■官能的にもなったインテリア

とはいえ、エクステリアはキープコンセプトといった印象。ホイールベースが65mm長くなりひと回り大きくなったボディサイズから、車格が増した印象が強い。むしろ、印象を新たにしたのはインテリア。Eクラスは、SクラスとCクラスの間のポジショニングだが、そのクオリティは、「Sクラス譲り」という表現が当てはまるほど、高級志向だ。

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試乗グレードはE200 アバンギャルド スポーツ

本革やウッドをあしらった「上質さ」は、従来からあった。しかし、今回「デザイン」への強いこだわりが感じられる。何しろ、試乗会の際にはドイツ本国からエンジニアのみならずデザイナーも来日し、プレゼンテーションを行なうほどの力の入れようだ。

もちろん、視認性に優れる12.3インチの大きなディスプレイやステアリングに装備されたタッチコントロール機能をはじめ、ドライバーが運転に集中し、快適、効率的にドライブできるような機能性も高められている。

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ウエイブするインパネ下部が印象的なインテリア

従来、メルセデスのインテリアは、上質で機能的だが官能的ではなく、「質実剛健」という表現を多用してきた。が、もはや、当てはまらないと思った。高価なマテリアルを使っているだけでなく、余韻に浸れるようなラグジュアリーな雰囲気が格段に増している。

■後味がスッキリする基本性能の高さ

一般道、高速道路、そしてワインディングといろいろな道を走ったが、そのファーストインプレッションは、誤解を恐れず言うならば、「普段運転しているクルマに乗っている」かのような違和感のなさであった。新鮮味や新しさがないという意味ではない。ここが凄い!!と特筆するような強烈なインパクトこそないのだが、ステアフィールからペダル操作、加減速から姿勢変化まで、気になる点も何もない。

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サルーンとしての基本性能の高さで乗り味がスッキリしている

スポーツカーは、積極的、能動的に走らせるのに対し、サルーンカーは、受動的なドライビングが多い。つまり、運転していて違和感なく、降りた時に後味スッキリというのは、サルーンカーにとって最大限の褒め言葉なのだ。

もちろん、この「自然体」の乗り味は、数多くの技術に裏打ちされている。たとえば、ボディは、アルミの使用率を従来の5%から16%に、超高力鋼板を3%から6%とし、70Kgの軽量化が図られた。搭載される直列4気筒2.0Lエンジンは第3世代の直噴システムであるBlue Directテクノロジーを採用している。トルコンAT最多段を誇る9G-TRONICとの相性も抜群だ。

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65mmホイールベースが長くなり、ボディの大きさからも存在感もより高級に

しかも、試乗車は新型Eクラスの中でもベーシックな車格である「E200」で、電子制御サスペンションを有するAir Body Controlも装備されない。いかに骨格がしっかりしていて基本性能がキッチリ作り込まれているかがわかる。改めて、恐るべし、メルセデス!といった感だ。

■自動車線変更機能も追加

一方、メルセデスのコアバリューのひとつである安全運転支援システム「インテリジェントドライブ」も格段の進化を遂げている。

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衝突直前にノイズを出すことにより筋肉を収縮させ、衝突音から耳を保護する「PRE-SAFEサウンド」や、衝突の際、シートが中央よりに動く「PRE-SAFEインパルス」など、万一の事故の際に、限りなく乗員の負担を軽減するシステムは、「そこまで考えてるの!?」と感心を通り越し、驚きですらある。

レーダーセンサーやステレオマルチカメラにより、ほぼ360度を監視し、周囲のクルマや歩行者を検出、アクセル、ブレーキ、ステアリングを自動でアシストし、安全性と快適性を高めてくれるシステムは、ドライバーにとってホントに心強い。もちろん、使用環境によって万能ではないが、レーダーカバーは冬でも加熱され、雪でも使えるという。

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4つのエアアウトレットはSクラス譲りの豪華さを感じさせる

また、前車に自動追従する「ディスタンスパイロット・ディストロニック&ステアリングパイロット」も機能が強化され、高速走行中にウィンカーを2秒以上点滅させると安全が確認された場合、自動で車線変更するなど、「半自動運転」の領域も広がっている。

素晴らしい技術だし、確かにドライバーはより安全・快適に走れる。ただし、あくまでも「運転支援」であり、責任の所在はドライバーであるということを忘れてはならない。

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液晶メーターは右側のタコメーターとセンターにさまざまな情報を映し出すことができる。もちろん地図表示も可能だ

最近のメルセデスからは、「スポーティ志向」が強いように感じられる。新型Eクラスにおいても、基本性能の高さはもちろん確認できた。しかし、それ以上に、デザインから走りに至るまで、よりラグジュアリーさを増したという印象が強く、その意味においては、同セグメントのライバルを凌駕する存在といえるだろう。「メルセデスたる存在価値」が強く感じられるモデルである。

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メルセデス・ベンツE200グレードと価格

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COTY
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