【メルセデス・ベンツ】Eクラスカブリオレ試乗記 エクスクルーシブな満足感を楽しむ レポート:髙橋 明

マニアック評価vol218

Eクラス・カブリオレで、プレミアムパーソナルカーという贅沢を味わってみる

国産車ではこのポジショニングに位置するモデルがなかなか存在しないプレミアムパーソナルカー。そのエクスクルーシブなモデル、メルセデス・ベンツのEクラスカブリオレAMGスポーツパッケージに試乗してみた。乗ってみた結論から言えば、このモデルには自分だけの価値あるモデルという、そんな魅力があふれていたのだ。

メルセデス・ベンツブランドでEクラスといえば、フルサイズのプレミアムクラスというポジションにあり、エントリーモデルのE250でも595万円する高級車だ。そのオープンモデルであるE250カブリオレは699万円で市場投入された。

国内でのオープンモデルには固定的なファンが存在するものの、ユーティリティや燃費に強いこだわりがある日本のマーケットでは、多くの支持を得にくいモデルでもある。また、気候的にも不向きだという人もいる。しかし、なぜメルセデス・ベンツはそこにEクラス・カブリオレを投入してきたのか? 使い勝手や燃費競争には縁がなさそうに思えるのだが、試乗してみてれば、実はある程度のユーティリティも、そして環境技術も配慮され、そして何より贅沢な価値観を所有できるという満足度の高いモデルだったのだ。

また一部の富裕層は、このクルマがそうした性格を持ったモデルであることを十分知っているだろうということを、今回の試乗で気づかされたモデルでもあった。

■贅沢で気持ちのいいクルマ
海外の富裕層は、CクラスのオープンモデルやBMW3シリーズのカブリオレなどは、娘の結婚や息子の卒業、就職祝いなど節目となる機会にプレゼントするクルマ。なんていう映画の世界のような話も聞く。また、奥様が日常使う足として乗るというイメージもあるが、Eクラスともなれば、やはり主役は一家の主になる。ウィークデーは大型のセダン、あるいはショーファードリブンで仕事に従事するも、休日はスポーツカーでドライブを楽しむ。そんなリッチな世界の話だ。

そんな世界のことはさておき、Eクラスカブリオレに乗る、というのはどんな気持ちになるのだろうか。それをこのインプレッションでは一番に気にしてみた。

インテリアの質感は申し分なし。適度に盛り込まれたシルバークロームのパーツもほどよい主張具合

率直に言ってしまえば、やっぱり贅沢な気分を非常に味わえる、という感想だ。率直というかそのまんまな感想で申し訳ないが、そもそも大きいボディに2ドアというのは限りなく贅沢なレイアウトではないだろうか。運転席と助手席を使うのがメインで、エマージェンシーでリヤシートを使う。でもゆったりしたリヤシートを備えるクーペボディなど数少ない。大きなボディに2人乗車は、ラグジュアリーで贅沢なことなのだ。

さてこのEクラス・カブリオレはE250とE350がラインアップし、2.0Lターボと3.5LのV型6気筒エンジン搭載の2モデルがある。価格はそれぞれ699万円と923万円だ。試乗したのはE250のほうでダウンサイジングコンセプトの直噴2.0Lターボを搭載。このパワーユニットは先ごろ発表されたCLAにも搭載されているエンジンと同じ274型で、211ps/350Nmというスペック。50%減税でJC08モードも15.5km/Lと環境性能にも優れている。一方、E350カブリオレはリーンバン運転をするメルセデス・ベンツの最先端を行く直噴自然吸気エンジンだ。しかも3.5Lの排気量ながら50%減税、12.8km/Lという高性能ぶりなのだ。もちろん、アイドリングストップも装備し、停車するたびにエンジンは停止するという環境エンジンでもある。

メルセデス・ベンツらしく押しの強いフロントマスク。バックミラーでの存在感は抜群だろう

エクステリアデザインは見てのとおり、押しの強い顔をしており、グリルセンターの“ベンツマーク”も大きく目立つ。しかしボディサイズはEクラスセダンよりやや小ぶりなのだ。セダンとの比較で全長は4880mm>4705mm、全幅1855mm>1785mm、全高1470mm>1395mm、ホイールベース2875mm>2760mmと全体でひとまわり小さく、ホイールベースはCクラスと同じだ。

■リヤシートも広く、実用性の高さも魅力的
このEクラスカブリオレを試乗してみると、意外にもというか、やはりと言うか、実用性も高く、セカンドカーでなくメインモデルとしても検討できるものだというのを実感したのだ。なにもセカンドカーと決め付けてしまわなくてもいい。

それは2+2の乗員で後席のスペースが十分広いということ。先に書いたようにリヤシートはある意味補助的なポジションのシートが多い中、ちゃんとスペースを確保したシートが装備されているのだ。そして2ドアだと乗り込む際に腰をかがめ、乗り降りがしにくいということがあるが、オープンであれば、腰をかがめる必要などなく、簡単に後席への乗り降りができる。

もちろん、キャンバスのルーフは電動式で40km/hまでなら自動で開閉する。その速度も速く信号待ちなら余裕で開閉できる。乗降の際、ルーフの開閉を同時に行なえば、2ドアの乗降性デメリットは解消する。もっとも後席を使う頻度は人それぞれだが、そう多くないと答える人が多いと思う。

オープンモデルのデメリットにトランク容量があるが、このEカブリオレは342L/252Lで2人乗りの旅行であれば十分なサイズ。ゴルフクラブなら2セットはいけそうな大きさだ。特に閉じた状態の容量342Lがあれば、4人家族のドライブ旅行でも問題ないだろう。目的地に着き、荷物を置いてオープンエアのドライブを楽しむという光景が目に浮かぶ。

オープンモデルということを考えれば、ラゲッジルームは十分な広さだろう
ラゲッジの広さの比較用にマイバッグを投入。あまりエクゼクティブなブツでなくてクルマに申し訳ない…

さて、走行中にルーフを閉じているときは、非常に静粛性が高くオープンモデルであることを感じさせないほど静かである。もちろん、100km/hの高速でも静かで、プレミアムブランドらしい静粛性がある。

コンソールにあるルーフ開閉スイッチでオープントップにすると、一気に開放的な気分が味わえ、気分も明るくなる。このクルマで唯一、気になったのがこのルーフ開閉スイッチの蓋の開く方向だ(下写真参照)。細かいことだが、左ハンドル用をそのまま使用しているので、手前から開かず、奥から手前に開く。わがままな気持ちを満足させてくれるモデルだけに、ここだけ何故「流用」感を消せなかったのか。せっかくのエクスクルーシブな雰囲気なのに残念で、かつてのシフトゲートを思い出してしまった。

 

■キャンバストップオープンで風流を味わう

オープンルーフにして、両サイドのウインドウを上げて走れば高速道路でも快適に走れる。風は頭上を流れ、心地よく髪を撫でる程度だ。また、窓を下げても風の巻き込みは少なく、助手席との会話もできる。また、シートヒーターやネックまわりの空調もあるので、意外にオープントップで走れる時期は長いのかもしれない。


試乗の日はあいにくの雨混じりの空模様だった。そのため、時折降る雨にあわせてルーフをクローズするが、小雨や通常の雨量であれば、ルーフにあたる雨音はあまり聞こえない。また、大雨になって気づいたが、これは先輩のジャーナリストが言っていたことだが、雨のあたる音がキャンバストップだと番傘を差している雰囲気で心地よいのだと。確かに鉄板ルーフだとトタンとまでは言わないが金属的な音がする。高級車であれば防音材が打ち消しているものの、それでも鉄にあたるあの音ではある。それがキャンバストップでは、まさに傘をさしているような音のため、非常に情緒的で、風流に感じたのだ。その先輩が「カブリオレはキャンバスに限る」と断言していたのはこういうところに理由があったんだなあ、と今更ながら実感した。

インテリアはメルセデス・ベンツらしいプレミアム感たっぷりの内装になっている。手に触れる部分に硬質なものが少なく、手触りのいいレザーやエンボス加工された樹脂、シルバーの艶消しメタルなども質感、触感が高い。

シートもAMGスポーツパッケージなので、スポーティなレザーシートが付く。エアを使ったアジャスト機能で細かく設定でき、サイドのホールド性はもちろん、太もも裏のシート高を調整できたり、腰から背中中央にかけて2ヶ所もエア調整ができるなど、ドライビングポジションもホールド性もそしてラグジュアリーなポジションでもジャストフィットできるとてもレベルの高いシートだと感心した。

ハンドリングや乗り心地は言うまでもなく、メルセデスらしい正確さと高い安心感があり、高級車に相応しい乗り心地と程よいスポーティさが混在している。18インチのタイヤも見事に履きこなし、ルックスも申し分ない。すべてがスマートで乗りこなすにはそれなりでなければ、クルマに負けてしまいそうになるモデルでもあった。

4人乗車が可能で、乗り降りも2ドアのデメリットが少ない。ルーフをオープンにすれば開放的になり、閉めればクローズドモデルと遜色ない。雨の日は情緒感たっぷりに雨降りを楽しめ、まさに好き勝手に、思い通りに時を過ごせる魅力を持っていると感じた。個人的に「いいなぁ、これ」と思わせる1台だった。

■メルセデス・ベンツEクラス・カブリオレ主要諸元(カッコ内E350)
全長×全幅×全高:4705mm×1785mm×1395mm
ホイールベース:2760mm
トレッド前:1540mm
トレッド後:1535mm
最低地上高:135mm
車両重量:1790(1820)kg
乗車定員:4名
最小回転半径:5.1m

エンジン:直4直噴DOHCターボ
総排気量:1991cc
最高出力:211ps/5500rpm
最大トルク:350Nm/1200-4000rpm
燃費:15.5km/L

エンジン:V型6気筒DOHC
総排気量:3497cc
最高出力:272ps/6,000rpm
最大トルク:350Nm/2,400-5,000rpm
燃費:9.1km/L

■メルセデス・ベンツEクラス・カブリオレ価格表


メルセデス・ベンツ公式サイト

COTY
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