2015年5月27日、メルセデス・ベンツ日本は、AMGの新ブランド戦略のもと、W205型「メルセデスAMG C 63」を発表し、同日から受注・発売を開始した。発売が開始されるのはまずC63Sセダンの初期限定モデルのエディション1で、C63Sエディション1のステーションワゴンは6月中旬から、そしてC63、C63Sは10月からの発売となっている。
メルセデス・ベンツにおけるAMGの位置付けは、これまでのメルセデス・ベンツ傘下のAMGから新たにメルセデスAMGに変更され、メルセデス・マイバッハとともにサブブランドを形成する。そのため、車名もこれまでのメルセデス・ベンツC63 AMGから、今回新登場のW205型からメルセデスAMG C63に変更されている。
車名は変更されても、もちろんこのニューモデルは、メルセデス・ベンツとAMGがこれまで築き上げてきたストーリーを受け継ぐモデルと位置付けられ、AMGの名称を付けたモデルの中では世界的に最も量販されるモデルである。
新型メルセデスAMG C63の特長は、新開発AMG 4.0L・V8直噴ツインターボエンジンを搭載したことだろう。これまではM156型系の6.3L・V8を搭載してきたが、ついにダウンサイジングを行なったわけだ。このエンジンは先に発表されたAMG GT用と共通のファミリー、M177/178系となる。
AMG GT用のM178はピュアGT用としてドライサンプ化されて462ps/600Nm。GT S用は510ps/650Nmの出力を発生するが、C63用のM177型はウエットサンプ式で476ps/650Nm、C63Sは510ps/700Nmとより出力を高めている。ちなみに。C63Sの0-100km/h加速タイムは4.0秒だ。
エンジンの構造は、砂型鋳造されたクローズドデッキ/スチールライナーレスのアルミニウムクランクケースに鍛造アルミ製ピストンを組み合わせた軽量、高強度なエンジンだ。シリンダー壁面にはスチールカーボン材を溶射コーティングするアーク溶射「ナノスライド」技術を採用し、摩擦低減とシリンダー壁面の耐久性向上を図っている。
2個のターボチャージャーはV型シリンダーバンクの内側に配置する「ホットインサイドV」レイアウトで、Vバンク外側に水冷インタークーラー一体型吸気マニホールドを配置。これによりエンジンのコンパクト・パッケージ化とターボへの排気距離を最小化することでレスポンスを向上させている。
なおC63Sはエンジンマウントに磁性流体を使用したダイナミックエンジンマウントを採用した。走行モードに合わせ最適な硬さとして、特にスポーツドライビングにおいて一体感のあるハンドリングを実現できる。
C63とC63Sは排気パイプ、マフラーに内蔵されるエグゾーストフラップによってエンジン音を切り替えるシステムを装備する。C63は排気管内に1個の連続可変エ キゾーストフラップを備えた「AMG スポーツエキゾーストシステム」を装備。トランスミッションモードに応じた2種類のエンジンサウンドを、AMGダイナミックセレクトスイッチにより切り替 えることができる。C63Sは3個の連続可変エキゾーストフラップを備えた「AMGパフォーマンスエキゾーストシステム」を装備し、トランスミッションモードに応じ、加速時やシフトダウンによる自動ブリッピング時にエモーショナルなサウンドを響かせる。
トランスミッションは、従来通りAMGスピードシフトMCTを採用している。通常のATのトルコンの代わりに多版式クラッチを備え、遊星ギヤ式変速と組み合わせ、素早い、ダイレクトな変速を行なうシステムだ。シフトダウン時の自動ブリッピング機能、レーススタート機能も備える。
さらに、高速走行時などにアクセルを閉じるとエンジンとトランスミッションを切り離して燃料消費を抑えるセーリング機能の採用によって燃費を優先する「C(Comfort)」、スポーティなドライビングが愉しめる「S(Sport)」、「S+(Sport Plus)」といった各種パラメーターを個別に設定できる「I(Individual)」の4モードを選ぶことができる。またC63Sは「RACE」モードも設定されている。リミテッドスリップデフは、C63は機械式、C63Sは可変制御できる電子制御式を装備する。
サスペンションには、フロントが4リンク式、リヤがマルチリンク式の「AMGライドコントロール・スポーツサスペンション」を採用。4輪それぞれの減衰特性をボタンひとつで調整できる電子制御ダンピングシステムを採用し、AMG ダイナミックセレクト・スイッチか専用ボタンにより「Comfort」、「Sport」、「Sport Plus」の3モードから減衰特性を選択できる。
なおダイナミックセレクトの切り替えにより、トランスミッションのシフトプログラムに加え、エキゾーストシステムを含むエンジン出力特性、サスペンション、ステアリング特性、3ステージESP、ECOスタートストップ機能が連動して変化する。C63Sはさらに「RACE」モードも備えている。
パワーステアは14.1のクイックレシオに設定した電動式を採用する。リニアかつクイックなハンドリング特性としている。パラメーター式電動パワーステアリングの採用により、駐車時や市街地など低速走行時には操舵力を低減、高速走行時では安定性を向上させるようアシスト量が変化し、さらに車速以外にAMG ダイナミックセレクトのドライブモードによってもパワーアシスト量が変化する。
ESPは、安全性を確保する標準モードの「ESP ON」、システム介入前に一定のドリフトアングルを許容する「ESPR SPORT Handling」、サーキットでの高度にダイナミックなドライビングのためにESPがオフになる「ESPR OFF」の3つのモードを持つ3ステージESPを採用した。
ブレーキはC63は前後ともに360mmドリルドベンチレーテッドディスクを装備している。C 63Sはより高いパフォーマンスの向上に対応し、フロントには大径活軽量なコンポジット製の390mmディスクを装備している。
C63のボディシェルは軽量高剛性のアルミ、スチールを組み合わせたハイブリッドボディを採用する。ドアやボンネット、ルーフなど外板パネルの大半はアルミを採用することで、徹底した軽量化を実現した。
ボディは、ノーマルのCクラスよりトレッドを拡大し、左右それぞれ15mm張り出したフェンダー、60mm延長したフロントオーバーハングとしている。ボンネットにはV8エンジンを象徴するパワードームが力強い膨らんでいる。また、フロントバンパーはエンジンの冷却のため開口部を大きく拡大し、ラジエーターは中央にメインが、バンパー左右にサブラジエターを配置し、通常はメインと左側サブラジエターを使用し、高負荷時には3個のラジエターが働くようになっている。
リヤはエキゾースト出口をディフューザーと一体化させることで、ボディ下部の空気の流れを整えエアロダイナミクスを向上した。またセダンにはトランクリッドスポイラーリップを、ステーションワゴンにはルーフスポイラーが専用装備されている。
■特別仕様車「C63S エディション1」
新型C63の発売を記念し、専用のエクステリア、インテリアを備えた特別仕様車「C63S エディション」が発売される。台数はセダン350台/ステーションワゴン50台の限定モデルで、セダンは5月27日から、ステーションワゴンは6月中旬頃発売の予定だ。
エクステリアは、マットブラックペイントされた19インチAMGクロススポーク・アルミホイール(鍛造)、ハイグロスブラック仕上げの専用パーツをフロント/リヤバンパー、サイドスカート、 ドアミラー、トランクリッドスポイラーリップなどに採用。さらに、ホイールのフランジ部、フロントグリル、ドアミラーにも特別仕様車限定のレッドのアクセントが加えられている。
インテリアは特別仕様車専用のホールド性に優れたバケットタイプのAMGパフォーマンスシート、グリップ性の高いレザーDINAMICA素材が巻かれたAMGパフォーマンス・ステアリングを採用。センターコンソールにはレッドの挿し色が入ったカーボン素材のインテリアトリムが採用され、シート、ステアリング、ダッシュボード、ドアセンターパネルなどにレッドのステッチが施されている。