2022年10月に新型のSLが発売され、年末にAMG SL43を試乗しお伝えしている。今回、本命?のAMG SL63 4MATIC+に乗ることができたのでお伝えしよう。
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この7代目となるSLのハイライトは、開発がAMGに完全移管され、サブブランドのメルセデスAMGへと移行したことだ。ご存じのようにAMGは市販車の高性能スポーツモデルとしてメルセデスの多くのモデルにラインアップしているが、サブブランドのメルセデスAMGはレースとのつながりを保持し、AMG GTといった市販高性能スポーツカーやAMG GT GT3のような市販レーシングカーもある。
一方でメルセデスのSLと言えば、スーパーライトであり、スポーツ&ラグジュアリーなオープンモデルとして刷り込まれている。が、そのSLをAMGが開発すると、こうなるのか!というのが今回試乗した印象だった。
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好戦的な走りのSL
メルセデスAMG SL43に乗った時は2.0Lターボで、スポーティにそしてラグジュアリーに動かす、そのハイテクぶりに驚き、ICEをダウンサイズしながらも魅力を落とさないことに感心したものだ。ドライブモードによってゆったりと走行はできるものの、やはりレーシーな印象が前に出てきており、AMGへの移管とはこういうことなのかというわずかな疑問はあった。が、2022年末の時点ではこの4気筒モデルしか導入されず、63、55とあるモデルはなかったため、ポジショニングの違いを明確には訴求しにくかったというのが正直なところだ。
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がしかし、今回メルセデスAMG SL63が導入されV型8気筒エンジンを搭載し、AMGとはこれだ!という感慨を受けたのだ。その一方で、AMG GT Cは存在するわけで、SLがAMG生産となることによってそのポジショニングがどうなるのか。再び疑問は出てくる。だがあくまでもSLにはラグジュアリー要素がプラスされたモデルで、ピュアスポーツではないという位置付けなのだろう・・・。
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そうした思考がグルグルと頭の中を巡りながら、国内の一般道、高速道を走ってみると、好戦的なスポーツカーという印象を受ける。SLには初搭載となる4MATICの制御も、サスペンションもリヤ操舵も、よく曲がるように制御され、ゴージャスなコーナリングとは一線を画す世界感を見ることができるのだ。
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ハイテク満載
メカニズムを覗くと、4MATIC+は、パフォーマンス志向の連続トルク可変分配式四輪駆動システムで、連続的に無段階で前後トルクを変化させている。そしてリヤ・アクスルステアリングが標準装備され、最大操舵角は2.5度で旋回性や俊敏性、高速安定性を高めているのだ。このリヤ操舵はSLには初搭載技術であり、近年のトレンド技術のひとつだ。
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そしてサスペンションにも新技術が搭載されている。AMGアクテイブライド・コントロール・サスペンションだ。これはアクティブ制御の可変スタビライザーと、伸び側、縮み側が独立制御できる連続可変アダプティブ電子制御油圧ダンパーが組み合わされている。もちろんドライブモードにより設定は変化し、快適性、運動性能、フラットライドとなるが、実際の走行で感じるのはロールを感じることなく旋回が始まり、グイグイ曲がる旋回性を作り、どんな場所でもフラットライドな走りができることを体験する。
パワートレインを見ると、エンジンはAMGが自社開発したM177型が搭載されている。4.0LのV8型直噴ツインターボで、430kW(585ps)/5500-6500rpm、800Nm/2500-5000rpmというビッグパワー。そして低負荷時には2番、3番、5番、8番の4気筒を休止するAMGシリンダーマネージメントも搭載している。
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このエンジンに2基のツインスクロール・ターボをVバンクの内側に置く、ホットインサイドVレイアウトとしている。そしてAMGスピードシフトMCT9速を搭載している。MCTはトルクコンバーターの代わりに湿式多板クラッチを使いダイレクト感のある素早いシフトができるわけだ。
吐き出されるエンジンサウンドは、腹の底に響き渡り、その音圧を受け止めながらアクセルを踏み込めば、2倍速で景色が流れ出す。0-100km/h加速は3.6秒、最高速度315km/hの世界を垣間見ることができる。ラグジュアリーな緩さを認めないこれらのハイテク・ソリューションと制御アプリケーションは、AMG SL63をレーシングカーへと近づけ、SLを超えたSLは原点回帰をした究極のロードカーと言えるのではないだろうか。
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試乗車価格(税込)
車両本体価格:2890万円
オプション: Burmester®ハイエンド3Dサラウンドサウンドシステム(60万円)、ナッパレザー クリスタルホワイト/ブラック(22万5000円)