【メルセデス AMG EQS 53 4MATIC+ 試乗記】電動化×AMGが織りなす新たな味わい

メルセデス・ベンツ初のラグジュアリーEV「EQS」シリーズの「AMG EQS53 4MATIC+」に試乗する機会があったのでお伝えしよう。

【メルセデス AMG EQS 53 4MATIC+】

EQSには現在2モデルがラインアップし、既に450+の試乗レポートは掲載しているが、今回AMG初の電動車となる「AMG EQS 53 4MATIC+」を詳しく見ていきたい。

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そもそもEQSはEV専用プラットフォームで展開するモデルで、EV車になってもSクラスとしての矜持は安全性と快適性、アジリティ、高いデザイン性といったポイントで最高の要求値を満たすことが求められている。さらに脱炭素社会にむけて、ライフサイクル全体にわたる環境影響についてもメルセデスは包括的な分析を行ない、さまざまな取り組みをこのEQSに盛り込んで登場させている。

ボディカラーはハイテックシルバー

環境やサスティナビリティという視点では、EQSのバッテリーはヘーデルフィンゲン工場で生産されるが、2022年以降、カーボンニュートラルを実現する工場だ。もともとトランスミッションの工場だったが、バッテリー生産へとシフトし始めている。そしてEQSのメイン工場はジンデルフィンゲンの工場内にある「ファクトリー56」で生産され、将来的にゼロカーボン工場になるが、現時点ではエネルギー総需要量は他の工場より25%も少なく生産できているという。

一方、再生可能原料やリサイクルといった材料視点では、プッシュボタン、プラスチックナット、ケーブルファスナーなど総重量82.4kg(186点)については、より資源消費の少ない材料を部分的に使用して生産している。具体的には、スターターバッテリーとバンパーパネルから作った二次原材料がホイールアーチライニングに採用。フロアカーペットではタフトベロアにリサイクル原料由来の糸を使用している。この糸は再生ナイロンで、魚網やナイロン製造機、カーペットから出てくる繊維くずなど、埋め立てられるはずの廃棄物から回収したナイロンということだ。

このようなサスティブルな原料、環境負荷を踏まえてデザインされたEQSはエンジン車とは全く異なるエクステリアデザインになっている。面構成、継ぎ目の少なさ、そしてメルセデスのデザイン言語「Sensual Purity(官能的純粋)」でデザインされている。

スポーティで低く構え、弓のようなライン、サッシュレスドアとクーペのようなシルエットで、従来のSクラスとは全く違ったエクステリアになっている。ボディサイズは全長5225mm、全幅1925mm、全高1520mmでホイールベースは3210mmとフルサイズだが、最小回転半径は5.3m(AMG EQS 53)とコンパクトカーレベルの小回りが効き、使い勝手に戸惑うことはない。

インテリアで目を惹くのは、MBUXハイパースクリーンだ。EQSの象徴的なデザインで、高精細コックピットディスプレイ、有機ELメディアディスプレイ、そして有機ELフロントディスプレイで構成された3つのディスプレイは一枚のガラスで覆われ、ワイドスクリーンで構成されている。

インパクト十分なインテリア、エクステリアなのだが、これまでのICEのSクラスと操作系は同様としているため、使い勝手で迷わない。さらにEVならではのアレンジされた機能や操作はあるものの、メルセデスブランドのフラッグシップであることが容易に理解される構成には感心する。

AMG EQS 53の気になるパワートレインは、eATS(電動パワートレイン)を前後に備えている。最高出力658ps(484kW)でレーススタート使用時は最大761ps(560kW)の大パワーで、EQS450+が333ps(245kW)なので、AMGモデルとしての差別化は明確だ。

航続距離は601kmで450+と同じ107.8kWhのバッテリーを搭載している。このeATSは平たく言えば前後に駆動モーターを搭載し、前後モーターの出力を常時可変させている4MATIC(AWD)ということになる。ちなみにバッテリーは10年もしくは25万キロの性能保証をしている。

回生エネルギーはアクセルを戻した時、そしてパドルシフトを使った時に回生するが、減速度は3段階に調整でき、「D+」、「D」、「D-」がある。このほかに「D Auto」があり、最大3m/S2の減速度を発生する。またAutoモードでは減速の強弱を自動で調整しつつ、先行車を検知すると車間距離を自動調整し停車まで追従する。

そして興味深いトピックのひとつにリヤ操舵がある。メルセデスはリヤ・アクスルステアリングと呼ぶが、450+は最大4.5度、オプションで10度まで操舵され、AMGは最大9度動く。これまでリヤ操舵は運転時の違和感でしかなかった機能だったが、ついに完成の領域に入ったと言える。つまり、リヤ操舵が絶妙に機能しているため、ドライバーとしては「よく曲がる」とか「安定感が増す」「コーナリング剛性が高まる」といったフィーリングを得ることができるのだ。

これはドライブモードなどと連携しており、リヤ・アクスルステアリングはブレーキやサスペンションとの車両ダイナミクスコントロールに統合制御されている。その上でドライブモードはコンフォート、スポーツ、スポーツ+、インディビデュアル、スリッパリーがあり、AMGではこれらのドライブモードで変更された制御を統合制御する「AMGダイナミックセレクト」でコントロールされる。

こうした制御技術も電動化されたために可能になった領域のものが多く、新しいAMGの走りを体験することができるのだ。

統合制御されるものの中で、サスペンション制御の存在も大きい。フロントが4リンク、リヤがマルチリンクレイアウトで、連続可変ダンピングシステムADS+とエアサスペンションが組み合わされている。セルフレベリング機能はもちろん、速度に応じて車高を変更したりするが、もっとも魅力的に感じるのはドライブモードとAMGダイナミックセレクトと連動して減衰の連続可変ダンパーによるダイナミック性能に魅力を感じることだ。

ドライブモードでパワートレイン、ステアリング、サスペンションなどの制御を変更し、その上でAMGダイナミックセレクトで全輪制御、EPSの介入制御、ステアリング制御を行ない、ロールやヨーモーメントの制御を行ない、さらにリヤ・アクスルステアリングも手伝い、思い通りのライントレースで駆け抜けることができるのだ。もっと言えば、さらにハイスピードで駆け抜けることが可能になる魅力を味わうというわけだ。

そして、どのEV車でも課題になるのが静粛性だ。エンジンがなくなり、走行ノイズが目立つようになるため、静粛性や振動といったNVH対策は重要なポイントになる。EQSでも静粛性については最も厳しい設計要件が課せられたということで、ボディシェルの構造部材の一部に特殊な防音発泡材を使っている。また前後のeATSを、その発泡材で覆って密封するなど数多くの対策をしている。またモーターのローター内磁石の配置や巻線の形状などからもNVHを考慮したレイアウトになっているという。

この他にもバッテリーとフロアの間に発泡材を敷き詰めることや、テールゲートには吸音部を設けることで、バルクヘッドを持たないボディで発生する傾向にある周波数共振を低減している。

こうした対策の効果は高く、走行音は静かで高級車として高いレベルのNVHを維持している。その静粛性を活かすアイディアのひとつとして、サウンドエクスペリエンスがある。

※サウンドエクスペリエンスの「Performance」をセレクトした車内で収録したサウンドが流れる

EQSではICEからEVへのパラダイムシフトを「耳に聞こえる」ものとしている。複数のドライビングサウンドの中から、好みのサウンドメニューを選択すると、ドライビングスタイルや選択中のドライブモードに連動して変化する。このドライビングサウンドはアクセルペダルの踏み込み量や車速、回生ブレーキ量など十数種類のパラメーターに反応して変化するように作り込まれている。

これらのサウンドは高度な音響設計アルゴリズムにより、「Burmester 3D(ブルメスター)サラウンドシステム」のアンプ内部でリアルタイムに計算され、スピーカーで再生されているのだ。

もうひとつメルセデス・ベンツ日本がアピールしていたアイテムをご紹介しよう。それは新開発のHEPAフィルターで全車標準装備とするエアフィルターだ。サイズはA2用紙程度のサイズで、約600gの活性炭を使用したことと、室内フィルターとあわせることで、不快な匂いを低減するというもの。

その分離処理能力はマイクロファイバー層によりPM2.5〜0.3クラスの微粒子を含め粒子状物質を最大99.65%除去できるというものだ。またウイルスへの対策も効果的で、室内フィルターと合わせて、ウイルスの捕集性能は86%以上、バクテリアの捕集性能は90%以上など、オーストリアの研究試験機関(OFI)の試験をパスしている。

近年のCOVID-19(コロナウイルス)など気になるウイルスや、EQSの中心的なマーケット、中国ではこうしたフィルター効果に期待がかかるというわけだ。

またEQSの日本向けの特別仕様としてV2H、V2L給電機能がある。EQSから車外へ電力を供給できる双方向充電が可能で、たとえば太陽光発電システムで発電した電気の貯蔵バッテリーとしても利用できる。ただし、インバータなど別途必要な機器、工事が必要になってくる。

価格

メルセデス AMG EQS53 4MATIC+:¥23,720,000(税込)

諸元


The Mortor Weekly

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