2014年1月14日、アウディ・ジャパンは、同社としては初の設定となるCセグメントのプレミアムコンパクトセダン、新型「A3セダン/S3セダン」を同日から発売すると発表した。これにより従来からの5ドアハッチバックのA3スポーツバックと4ドアセダンのラインアップが完成した。なおS3セダンのみは導入は5月が予定されてる。
A3セダンはA3スポーツバックと同様にVWグループのMQB(モジュラー・トランスバース・マトリクス:ボディ構造、コンポーネンツ全体のモジュール化アーキテクチュア)のもとで開発され、さらにアウディの軽量化技術、アルミ素材を採用するなど軽量化が追求され、車両重量は1.4 TFSIエンジン搭載車で1330kg、1.8 TFSIエンジン搭載車で1470kgとしている。その一方でプレミアム・コンパクトというにふさわしいディテールにこだわった質感の高い作り込みが行なわれている。
ボディサイズは全長4465mm、全幅1795mm、全高1405mm、ホイールベース2635mmで、Cセグメント・セダンのジャストサイズで、日本の都市部での使い勝手、適合性も高く、さらに日本製の上級セダンとも競合できる価格設定を行ない、アウディとして新たなボリュームゾーンを切り開こうという思惑だ。
A3セダンのボディ骨格は、フロント部分からパッセンジャーセル、Aピラー、Bピラー、ルーフアーチ、センタートンネル、サイドシルおよびフロアフレーム部、トータルで26%に及ぶ部分に超高強度で軽量な熱間成形(ホットプレス)材が採用されている。フロアパネル自体はテーラーロールドブランク材、つまり圧延・差厚鋼板を使用。5種類の厚さが使い分けされている。また、ボンネット、フロント・サブフレーム、フロントバンパー後方の衝撃吸収ゾーン、リヤシェルフなどはアルミニウム製だ。
ボディの骨格、パネルの接合には5467ヶ所のスポット溶接、MIG/MAG 溶接、レーザー溶接、プロジェクション溶接、接着が駆使され、例えば構造用接着剤は54m、シーム接着剤が20mに達する。また今ではヨーロッパ車のコンパクトクラスでも標準となりつつあるが、もともとはアウディが最初に採用した技術のひとつ、サイドパネルとルーフレールはレーザー蝋付け溶接と表面研磨処理によりすき間なしの平滑面仕上げとなっている。
室内の静粛性を高めるためにノイズを遮断するフロントウインドウ合わせガラスや、ドアとウインドーの風切音を低減する2重防音シールを備える。A3セダンの空力対策も徹底され、アンダーフロアを樹脂パネルで完全にカバーするなどによりCd値は0.29となっている。
エクステリア・デザインは抑制的でシンプルかつエレガントにまとめられ、ボディサイドのエッジの効いた2本のラインによる光と影がボディを引き締める役割を果たす。またインテリアもシンプルさと人間工学的な機能を追求。左右のドアトリムからダッシュボードまで一体に繋がる水平基調でラップラウンドした曲面はエレガントで、このダッシュボードとセンターコンソールはスイッチ類の数を少なくし機能性を追及している。その一方、アウディの独壇場ともいえる高精度で緻密なインテリアトリムの上質な作りはこのセグメントにあっても守られている。
トランク容量は425Lで、分割式のリヤシートバックを倒すと880Lまで容量を増やすことができる。インフォテイメントシステムは、標準装備のMMIベーシックは8スピーカー、5.8インチカラーディスプレイ(リトラクタブル)、S3に標準、その他のグレードにオプション設定のMMIナビゲーションは7インチカラーディスプレイ、64GBのSSD、A3スポーツバックと同様に走行中のインターネット接続を可能とする「Audi connect」(SIM)もオプション設定されている。
A3セダンのパワートレインには3種のTFSI(ターボ直噴)エンジンが搭載される。排気量は1.4Lが2種類と1.8Lで、出力は1.4 TFSIが122ps、1.4 TFSI with COD(気筒休止)が140ps、1.8 TFSIが180psという出力を発生する。いずれもスタートストップシステムを備え、1.4 TFSI with COD ではJC08モード燃費20.0km/Lを達成。1.4 TFSIで19.5km/L。なお1.4Lエンジンはオールアルミ製で重量は107kg、1.8Lエンジンは3mm厚という薄肉ねずみ鋳鉄ブロックを採用し140kgに抑えられている。また1.8 TFSIは直噴+ポート噴射というデュアル噴射方式と可変バルブリフト機構を採用している。デュアル噴射システムは低負荷時にはポート噴射がメインで、始動時と高負荷時には高圧直噴システムが作動する。
S3セダンは、ハイパフォーマンス・エンジンと位置付けられる2.0 TFSIエンジンを搭載。1.8 TFSIエンジンと同様にデュアル噴射、可変バルブリフト機構を備える。この2.0 TFSIは圧縮比9.8で280ps/380Nmを発生。6速Sトロニック・トランスミッション、クワトロシステムを採用して、0-100km/h加速は5.3秒。最高速はリミッターにより250km/h。JC08燃費は14.4km/Lとなる。
全モデルにSトロニックトランスミッション(DCT)を採用。FFモデルの1.4Lエンジン搭載車は7速が、クワトロシステムの1.8Lエンジン搭載車、S3は6速の組み合わせ。さらに燃費向上に効果を発揮するコースティングモード付きアウディ・ドライブセレクトも、上級グレードに標準装備される。1.8 TFSIエンジン車、S3はハルデックス社製のクワトロ(4WD)システムを備え、電子制御クラッチはリヤデフの直前に配置されている。またこのクラッチを制御する油圧は電動高圧ポンプ式でアキュムレーターは装備していない。
サスペンションはフロントがストラット式、リヤが4リンク式。フロントのサブフレームは総アルミ製で軽量・高剛性に仕上げられている。電動パワーステアはピニオンアシスト式で、ステアリングギヤ比は15.3、最小回転半径は5.1mとCセグメントの中でも優れた小回り性を実現している。
なお1.4 TFSI CoD と1.8 TFSIエンジン車は標準モデルより15mm車高が低いスポーツサスペンションが装備されている。またFF車には電子制御LSDが標準装備される。S3は25mmダウンの専用サスペンションとなる。
1.4 TFSI CoD、 1.8 TFSI、S3にはアウディ・ドライブセレクトが標準装備される。5モードのアクセルレスポンス、パワーステア、変速制御を任意に選択できる。さらにS3には磁性流体ダンパー、マグネチックライドがオプション設定され、これもドライブセレクトで統合制御される。
なお、ドライバー支援システムは、「パーキングシステム(超音波式)」がS3セダンに標準、その他にはオプション、30km/h以下で衝突回避自動ブレーキが作動するブレーキガードを含むレーダー式アダプティブクルーズコントロールは全車にオプション設定(8万円)されている。
A3セダンシリーズのトップモデルがS3セダンだ。S3専用サスペンションにより車高は25mm低められ、18インチアルミホイールや大型ブレーキを採用し、A3セダンよりスポーティなデザインと充実装備、そして強力なパフォーマンスを訴求している。
エクステリアは、Sモデル専用の水平方向に2本線のバー、インサートはマットプラチナグレーというアルミニウムルックグリルを装備している。またバンパー左右のエアインレット内のクローム仕上げのウイング形状部やドアミラーハウジングもアルミルックになっているが意図的にアグレッシブさを抑えたデザインといえる。リヤスポイラーリップとリヤバンパーのデザインも専用デザイン。プラチナグレーのディフューザーに、4本の楕円形状エキゾース・テールパイプを採用している。
インテリアは全体がブラックで統一され、スポーティ&エレガントな魅力はS3ならでは。ペダルとフットレストはブラッシュトアルミ製、メーターはダークグレーの盤に白針がデザインされている。さらにタコメーターにはブースト圧ディスプレイが装備される。デコラティブパネルは3Dデザインのブラックカラー。操作スイッチ類の多くはアルミ調仕上げとなっている。オンボードモニターは、ドライバーがイグニッションをオンにするとスクリーンに「S」ロゴが浮き上がるウエルカム演出が行なわれるようになっている。