メルセデスの大型モデル試乗インプレッション 動画付き

マニアック評価vol34
近年の世界的な動きは、環境を意識したクルマ造りが大きなウエイトをしめつつある。高級な大型モデルやスポーツモデルはどのように対応しているのだろうか。メルセデスベンツのCLクラス、Sクラス、AMGモデル、SLSなどの高級大型グレードの試乗をしてきた。

Sクラスにはハイブリッドシステムが搭載されたモデルがあり、S400がそれにあたる。システムはコンパクトなリチウムイオン電池と1モーター7速ATと組み合わせたV型6気筒3.5Lエンジンを搭載している。そして、アイドルストップ機能も装備しているが、モーターとエンジンとの間にクラッチを持たないので、EV走行をすることはできない。

技術を感じさせないことが技術だ、という言葉があるように、このモデルでの試乗ではハイブリッドであることを意識させられることはなく、普通のガソリンエンジン車と変わりない。唯一、エコを感じるのが停止をしたときにエンジンが停止するアイドルストップ機能を体感したときだ。

S400ハイブリッド V6_3.5Lエンジン

信号が変わり、ブレーキペダルから足を離した瞬間にエンジンが始動し、クリープもする。ややアクセルを深く踏み込むと、V6エンジンをサポートするようにモーターのアシストが入る。299ps、385Nmのパワーは申し分なく力強い加速をし、ハイブリッドシステムを持たない他のV型6気筒エンジンよりは確実に力強い。

走行中もインジケーターを見なければ、ハイブリッドを意識できる機会はない。だから、モーターがエンジンをサポートしているという実感はないが、燃費はよくなっている。当然、減速時にモーターは発電器として働き、バッテリーへ充電する機能を持っている。

次に、最高級ラグジュアリークーペの頂点を極めるCL550である。環境への対策はダウンサイジングである。従来のM273型の5.5LV型8気筒エンジンが4.7Lへダウンし、直噴ツインターボ化されM278型となった。そのエンジンの詳細はメルセデス・ベンツがCLクラスをビッグマイナーチェンジして新発売に書かれているので参考にして欲しい。

CL500 M278型エンジン

近年の技術革新はすばらしく、排気量をさげながらもパワーやトルクがダウンするどころか、逆にアップすることのほうが多く、このCLクラスに搭載されるエンジンも例外ではない。そしてメルセデスが環境対策を施したことを意味するブルーエフィシェンシーの名称も付けられているように、大幅な改良をしていることがわかる。

また、CLクラスのAMGモデルもM156型の6.2Lからダウンサイジングされ5.5Lへとなり、同じくNAからツインターボへとなっている。さらにアイドルストップも搭載することで、エボリューションモデルでも環境への配慮がしっかり行われていることが伺える。

CL63AMG V8_5.5Lエンジン

CL550とCL63AMGでは上記のように搭載されるエンジンが違うのだが、ハンドリングにもその違いがキチンとある。Sクラスと同じプラットフォームをもつCLクラスはSクラスよりスポーティなハンドリングをもち、ドライバーズカーであることがよくわかるのだが、エボリューションモデルであるAMGは、さらにスポーティなハンドリングへと仕上げられている。その違いは、小舵角時にも感じられ、AMGモデルはより正確にクルマの向きが変わるのだ。サスペンションも気持ちよく締め上げられており、高速域でのコーナリングでも安心感をずっと感じていられる。

そしてガルウイングのSLS。他の63AMGと同じようにV型8気筒エンジンであるが、M156型のAMGエンジンをベースにチューニングをしたM159型エンジンを搭載している。これはドライサンプ化し、トランスアクスルのレイアウトを持ち、カーボン製ドライブシャフトを持っている。ミッションはゲトラグ社製のツインクラッチで7速AMGスピードシフトMCTと呼ばれ420kw、650Nmという大パワー&トルクを受け止めている。

SLS M159型エンジン

SLSは、もはやソリッドなハンドリングという表現になるのだろうか、実に正確にハンドル操作に反応をするモデルで、さすがにスーパーカーである。

メルセデスの環境技術

こうしてメルセデスベンツの高級グレードを試乗してみると、しっかりと環境対策をしながらも、そのクルマが持つ役目を一切失うことなく、モデルの魅力を発揮していることにメーカーの実力を感じてしまう。効率を意味するエフィシェンシーは多くのモデルに潜在意識として存在していることがわかり、大排気量のエンジンでも高効率とすることで、省燃費など環境への配慮があることがわかる。

効率という側面からみると、100km走るのに必要なガソリンを節約する場合、従来より10%効率がよくなったとする。それが小型車と大型車では節約できた燃料の量には大きな違いがあり、大型車のほうが効率はよいことになる。さらに、ハイブリッドなど高価なシステムは車両価格にも反映してしまうため、大型の高級車であれば、そのコストも吸収しやすいという事実もある。

もっとも、大型の高級車そのものの存在を否定してしまえば、それまでだが、自動車文化の発展している欧州では、いろいろなクルマの存在価値は認められている。一方、小型車のエフィシェンシーはコンベンショナルなエンジンをもう一度見直し、フリクション削減や燃焼効率を改善する努力をすることで、高効率化をする方向にある。

だから、もともと燃費のいい小型車の燃費をさらによくするために、新しく高価なシステムを投入するという方法はとられていないというのがこれまでの流れだ。

反対に、日常的に多くの走るクルマは圧倒的に小型車の台数が多く、高級な大型車は少ない。だから、環境面では小型車から先に、先端技術を投入し排気されるガスや化石燃料の消費を抑えるほうが優先されるという考えもある。

どちらが正しいのかはわからないが、深底には自動車文化の違いが存在していることは間違いない。そして、大型車も小型車もすべて改善される必要がでてきていることも間違いない。さらに、ディーゼル、あるいはディーゼル+ハイブリッドという存在も早く日本の風土に根付いて欲しいものである。

文:編集部 髙橋 明

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